天皇杯2階の目線2017横浜1-2セレッソ

勝つためには90分間で決着をつける必要があった。勝負の分かれ目は、後半に伊藤翔が決定機にシュートをせず横パスをしたシーン。あのとき、セレッソ大阪の選手は、トリコロールが堅実なプレーを選択しチャレンジしてこないことに確信を持っただろう。一方で、トリコロールが1-0で勝利することは至難の技だった。だが、2点目を奪いに行くことができなかった。そこに限界を感じた。

延長戦の失点は実に飯倉らしい、飯倉の持ち味を存分に発揮したミスだった。あのミスさえなければ、あの場面で失点することはなかっただろう。ガラ空きのゴールであれば、小学生でも枠にさえボールを転がせば得点することはできる。とはいえ、あの場面で失点しなかったとしても、120分間を無失点で切り抜けることができたかというと、それは疑問だ。また、逆に得点できたかというと、それもわからない。ウーゴは走れず、ゴール前にボールを運ぶ意欲を示したのは、途中出場した前田と遠藤だけだった。それくらい選手の消耗が激しかった。

この負けが、重たい原因の一つは、強かったセレッソが万全ではなく7割程度のパフォーマンスに感じられるのにもかかわらず、トリコロールの選手たちが正面から撃ったシュートが僅かだったことにある。今シーズンの集大成にふさわしい結末だった。これが限界だったのだ。かつて、代表クラスの若い選手を揃え、1984年の元日に、名門ヤンマーを下して初タイトルを獲得したトリコロールは、その後10年間の天皇杯無敗。2年連続の三冠制覇。2年連続のアジア制覇、という黄金時代を築いた。残念ながら、新しいトリコロールは、その同じ階段を、今シーズンに登りきることはできなかった。来シーズンからの黄金時代再来の予感はない。志の道半ばで力尽きた。

天皇杯には「優勝しないと見えない元日の景色」があるといわれる。選手たちは、その景色を見ることができなかった。サポーターは、少し違った景色を見ることができた元日だったのではないだろうか。一年前は移籍をめぐる騒動に揺れていた。ビジネスを優位に進めたい多くの外部からは一方的な情報を数多く拡散された。サポーターの間でも意見の相違で軋轢はあった。対立も生まれた。春はギクシャクした季節。夏に方向性が定まり始め、秋は団結の季節。そして冬。ゴール裏のコアサポーターやコールリーダーがやりすぎないスタイルは、日産スタジアムに新しい風を吹き込みつつある。サポーターが個々に拍手や歓声で意図を示せる時間が増えていった。みなさんは、新春に一年間を振り返ってスタジアムで何を感じただろう。モンバエルツ監督の指揮した3年間に敬意を表す3種類のビッグジャージが揺れた。元日に各クラブが義務付けられたように行うコレオグラフィーはやらない。みんなでLフラッグをたくさん振ろう。誰かが決めたのではない、トリコロールのサポーターが、この一年間を歩み、学び、共有し、最後に選んだのが、この方法だったのだ。

マリーシアのメンバーは約40人が固まってゴール裏の上段で応援した。
「遠くからわざわざ元日に応援に来たなんてセレッソサポーターに言わせないぞ!」
優勝の後押しをするために、北海道、群馬県、栃木県、茨城県、新潟県、長野県、愛知県、兵庫県、島根県、長崎県、そしてベルギーからも仲間が駆けつけた。みんな同じ夢を見ている。これからも、同じ夢を見続ける。・・・だが、しばらくは、ぐっすりと夜に眠れる気がしない。それほどに悔しい。良い夢を見られるのはいつになるだろう。

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天皇杯2階の目線2017横浜2-1柏

ひ弱だった若者の記憶は、遠い昔のように思える。右サイドでパスを受けるワンタッチめ。外へではなく中への選択。ボールを前に押し出し、ディフェンダーとボールとの間に身体を入れる。ここからトップスピードでのドリブルをゴールに向かって仕掛ける。延長戦に入った激闘は、ここで「The ENDo Of Game」。この試合にトドメを刺す。鋭いグラウンダーのクロスを中央に待つストライカーに送る。最終盤に登場するゲームの殺し屋。その名は遠藤渓太という。

彼は帰ってきた。今期絶望と報道されていた。「また、助っ人の離脱か。」と誰もが思った。怪我での離脱、クリスマスの離脱、実は移籍交渉が進んでいた離脱、インスタ中毒での離脱・・・様々な離脱には慣れっこだった。だが、私たちは、こんな助っ人の扱いに戸惑った。こんな助っ人と接する経験がなかったからだ。彼は帰ってきたのだ。厳しいトレーニングを経て、身体を絞り込んで帰ってきた。そして、あの日の三ツ沢と同じように、電光石火でゴールネットを揺らした。ウーゴ・ヴィエラはプロフェッショナルなストライカーだ。

怪我の功名とは、まさにこのことだった。中央に起点がなく攻撃がサイドへの逃げばかりになっていたトリコロールは、扇原が怪我で退くことで息を吹き返した。442のポジションに選手をバランスよく配置することで、中央の攻撃も守備も、人数不足を解消し、やることが整理された。2トップは縦にズレを生み出して配置し、後ろの2から攻撃陣を操った。そして、下平のクロスが蹴られた瞬間に、ゴールまでの軌道は見えた。嘘のような話だが、スタンドで、一斉に声が揃ったのだ、「きた!!!」と。そして、スローモーションのように飛ぶ姿が見え、ボールはゴールネットに突き刺さった。トリコロールを窮地から救った男は伊藤翔。

トリコロールは3つの色という意味だ。だが、こんな激戦には、もう一色、いや、色とは言えない色が必要となる。「光と影を結び時告ぐる高き山羊の陽に向かいし眼に我を納めよ」・・・影の存在が右サイドに突然現れ、ボールを奪い、柏の選手を苛立たせた。繊細な試合を影として操り、ニヤリと笑って眼を光らせるブラックトリコロール。チームを一つにまとめる頼りになる男が中町公祐。

気まぐれだと思われる。序盤に無駄な反則でカードをもらった。試合間隔が開きすぎたからか、ドリブルをミスすることも多く、攻撃面では力を発揮しなかった。「下げたほうが良いのでは?」そんな会話が続いた。しかし、終盤に謎の瞬発力を発揮し攻守に切り替えてピッチを駆けた。それなのに、大事な場面で倒れた。動けない。担架が入る。あと少し耐えれば、決勝戦に進出できるというのに・・・ベンチ前で着替える栗原。突然のことで、上手く脱げない。「急げ!」「早く脱げ!」プレーが再開されると一人少ない状態でセットプレーのピンチを迎えることになる。手間取る。やっと栗原の準備が整ったところで、倒れた男は担架に乗ることに同意する。そして、担架がピッチの外に出ると、何もなかったかのように担架から降りてすたすたとベンチに歩いて帰って行った。栗原は主審の飯田さんの許可を得てピッチに入り、ピンチを回避する。そう、あの謎の男こそがマルティノス。

不運なゴールだった。油断も幾分はあっただろう。だが「不運」で済ませればよかっただけのことだ。ところが、いつものように彼の心は乱れた。キックは狙ったところに飛ばない。前に出られなくなりクロスをお手軽に放り込まれる。弱気かと思ったら、今度は逆に入れ込みすぎてジョンスのボールを奪おうとしてしまう。欲を出してピンチを招く余計なボールタッチも。しかし、相手選手と交錯した、あのプレーでスイッチが入ったのだろうか。至近距離への反応、オーバーヘッドキックをビッグセーブ。終わってみれば、GKに助けられた試合となった。ギリギリのところで踏みとどまった荒れる守護神の名は飯倉大樹。

天皇杯全日本サッカー選手権。真の日本一を決める大会。「Emperor’s Cup All Japan Football Championship」その最多優勝という自己紹介は、海外においては「リーグ戦3回制覇」よりも高く評価されることもある。かつては「元日は日産とどこかが試合をする日だと思っていた」という人がいたという10年間無敗(敗退は全てPK戦)の記録もある。天皇杯は奪回しなければならないタイトルなのだ。かつては、決勝戦に進出さえすれば負ける気のしなかった決勝戦。今回の対戦相手は最強のカップ戦勝者セレッソ大阪。監督は、失点したくない試合で山村をワントップに起用するほどに厳しい勝負を仕掛けてくる。ここまで、強大な対戦相手にトリコロールが挑戦者として天皇杯決勝戦に臨むのは・・・そう、1984年の元日以来だ。奇しくも対戦相手は同じチーム。1984年の決勝戦の対戦相手は日本リーグの名門と謳われ、数々のタイトルを獲得してきたヤンマーだった。そう、ヤンマーは、今回の対戦相手となるセレッソの前身。あのとき、大学を卒業したばかりの若きトリコロール戦士たちが、監督兼任選手・釜本が率いるヤンマーを撃破した。あの勝利から始まったトリコロールのタイトル獲得歴は、数えて18個。2018年の始まりは、あのときと同じ、チャレンジャーとしてのスタートになる。元日に19個目のタイトルを獲ろう。

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Jリーグ2階の目線2017 横浜1-0浦和

「それまで何にもしていないのに点だけは獲って途中交代でピッチを去るって最高だよ。ブラジル人ストライカーかよ。」
「日本人離れしているよなー。」

松原が過労死するかと思われるほど右サイドは機能していなかった。攻守に動き出しの遅い前田は、考えながらプレーさせてはいけない選手。ひらめきと思い切りで勝負するのが持ち味だからだ。山中がクロスを入れる気配を感じ、右サイドからバイラルエリアを横切り、ゴール正面に走りこんできたときに、山中から見事なグラウンダーのクロスが入った。そして西川が飛べない見事なコースとスピードで浦和のゴールネットを揺らした。

「きたー!!」
「前田だ!」
「なぜか前田だ!!」
「お前!なに急に仕事してんだよ!!」
「超ウケる!!」
「前田最高だわ。」

何もしていないときの前田ほど怖い。笑いの止まらないゴールとは、このことを言う。

緊迫の前半だった。浦和はホームゲームでの対戦時とは大違い。よく動き、細かく素早いパスがつながる。堀監督は、パスサッカーを維持しながら、シンプルで無駄のないスタイルに変えてきた。そして、チャンスと思ったディフェンスラインの裏へのパスは、的確なポジショニングで西川に封じられる。

「なんで、お前、そこにいるんだよ!!」
「西川が凄すぎる。」

だが、後半に前田がゴールを奪うと、浦和の足が止まる。普通であれば、ここで浦和サポーターの叱咤激励が飛ぶ流れ。だが、試合は淡々と進んだ。トリコロールのサポーターからは歓声が上がりコールのボリュームが増す。

「行け!もう一点だ!」
「うちの時間帯がきたぞ!!」

浦和はアジアチャンピオンの余韻に浸っている。そして中2日での試合。がむしゃらに反撃するまでの力も気力も残っていなかったのだろう。スタンドも同じだった。「中2日だと大変だよねー」というムードが漂う。そもそも、平川や梅崎の起用も、退団を前にした思い出作り起用に感じる。謎だったのは槙野。試合中でありながらベンチ前のモンバエルツ監督と握手。その直後に凡ミス。あの時間帯で、この試合は真剣勝負としての意味を失った。

しかし、トリコロールにとっては天皇杯に向けて貴重なプレシーズンマッチの意味がある。得点を欲しいときのツートップの起用。ウーゴと伊藤の組み合わせに加えて、伊藤とイッペイの組み合わせも試した。浦和が緩いとはいえ、ポジション争いの生き残りを賭けた最終節で、ギラギラしたものを感じる。ゴールライン際にまでボールを運んで角度がないところから伊藤が放ったシュート。そのシュートのコースに割り込んで、触ってコースを変えてゴールを泥棒しようとするウーゴ。闘いの相手は浦和だけではないのだ。

右サイドの松原は孤軍奮闘で耐え抜いた。思えば、開幕戦では松原の守備は酷評されていた。遠い昔のような思い出だ。一方で至れり尽くせりだったのは左サイド。お互いにサイドバックのあるべき姿とタイミングを知り尽くした下平と山中が、絶妙のコンビネーションで突破する。そして、もちろん守備も強い。一発勝負の準決勝戦と決勝戦に、この左サイドは心強い。扇原と中町の組み合わせも良い。ジョンスも危なげなく浦和の攻撃を防ぐ。

久々の1-0の勝利。崩壊していた守備が天皇杯準決勝戦を前に持ち直し、完封できたことで、良いイメージでリーグ戦を終えることができる。笑顔のトリコロール。そして浦和サポーターも笑顔だった。これがアジアチャンピオンの余裕なのか・・・。浦和美園駅に近づくにつれて、徐々に腹が立ってくる。浦和は本気ではなかった。負けて悔しがっている選手もサポーターも見つけられなかった。私たちは浦和を本気にすることができなかったのだ。1-0で完封勝利したのも関わらず、悔しい思いしかない。

来シーズンに、試合前から浦和を本気にさせるには、天皇杯を獲るしかない。

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Jリーグ2階の目線2017横浜1-4セレッソ

クリアボールが山なりに弧を描いてゴールの向こうに飛んでいく。トラックの手前に立っている2人のボールパーソンのうちの1人が、ピタリとトラップで足元にボールを止める。直後に蹴られたコーナーキックを杉本がヘディングし、こぼれ玉を押し込まれる。4失点目。

バックスタンド2階席では、観客が静かに席を立って、続々と階段を下り始める。波乱の2017年シーズンのホームゲームは、ここで終わった。

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天皇杯2階の目線2017横浜1-0磐田

試合終了間際のアディショナルタイム。コーナーでキープすると見せかけて、ドリブルで突破を図るバブンスキー。まさに、これぞマリーシアというプレーで揺さぶる。磐田の守備の要の高橋は怪我で立っているのが精一杯。慌てる磐田の選手たち。もう、磐田に反撃の力は残っていない。直後に試合終了のホイッスがなり。私たちは準決勝進出を決めた。

「しまった失点した。」
「また、アディショナルタイムかよ!」
誰もが思った。副審を見る。旗は上がっていない。またしても大切な時間での失点か。前半からリードを奪われるのか・・・そう思って絶望的な眼でピッチをもう一度見る。主審が副審と視線を合わせ、何か確認している様子。そこで一呼吸を置いて旗が上がってオフサイド判定。大歓声。副審の元に抗議に殺到する薄青いユニフォーム。反対側のゴール裏からはブーイングが聞こえてくる。
「文句があるなら、もっと強く言え!」
「もっと言え!」
「言うだけじゃ足りないぞ。手を出せ!」
ここから、磐田サポーターの敵は一人増えた。
「確認に時間を要していたのだろうけれど、随分とタメてから旗が上がったな。」
「エンターテイメント的には、タメが効いていて最高だ。」
無失点で前半を終える。

おそらく、大半において、磐田はトリコロールを上回った。
「あの10番けっこう上手いね。」
テクニシャンでキープ力がありそうだが、球離れは早く、パスがテンポ良く回る。特に、サイドでのダイナミックなワンツーによる崩しはトリコロールを慌てさせる。
「名波は、ひょっとすると名将かもしれない。」
リーグ戦での対戦時と比べると、格段にレベルアップしていた。

しかし、失点はない。喜田、扇原、栗原、ジョンスが中央を固める。前から厳しくプレッシャーをかける。シビアな展開の中で磐田の嘘つき王こと高橋が倒れる。これまで、何度も、痛くなくても顔を抑えて倒れ、対戦相手、サポーター、審判を欺いてきた男だ。終盤に入って、決め手を欠き、高橋は揺さぶりをかけてきたようだ。
「はいはい、わかったわかった。」
「どーせ嘘だろ、倒れているのは高橋だぞ。」
「顔を抑えているってことは、痛くないだろ、高橋!」
しかし、なんと、信じられないことが起きた。高橋の周りに集まっていた磐田の選手たちが一斉に、頭上にバツを出したのだ。
「えーーーー!?」
「バツなの?」
「マジで?」
「高橋なのにホントに痛かったの?」
「信じられない。」
「笑わせるのもいい加減にしろ。」
こんなことが起きるのだから、この試合、何が起きてもおかしくない。

試合を決めたのは、またもや遠藤だった。対戦相手には、ただの失点ではない屈辱に大きなダメージを与える。もう、シーズン開幕当初の、おとなしく、自信なさげに周囲に気を使って忖度プレーをしていた若手選手ではない。年代別代表選出が、遠藤を変えた。遠藤は豹変した。強くたくましく、ゴールに向かって貪欲に。可能性が高くなくても、シュートを狙い続けた。その結果、バブンスキーの大きなサイドチェンジをダイレクトで折り返すプレーを選択できた。
「腰砕けオウンゴール誘発王」の誕生。「俺にヒザマズケ」と言わんばかりのゴール後の景色。遠藤のクロスをゴールに押し込み、倒れ、トリコロールのサポーターの前で、そのまま土下座でサッカーに詫びを入れたのは高橋だった。

サッカーの神様は、自然の摂理で、トリコロールに勝利を導いた。

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Jリーグ2階の目線2017 横浜3-2鹿島

試合終了の笛が鳴り、大歓声とともにスタンドは総立ち。拳を突き上げ、抱き合い、涙を流す。激しい試合は終わった。私たちのリーグ戦は終わっていない。優勝の可能性は、僅かに残っているし、目標だったACL圏内の3位に浮上した。浮上したといえば天野。前節の90分間に渡る消極的なプレーは見られず、強気のチャレンジで1ゴール1アシスト。守備にも大きく貢献し、この大きな勝利を私たちに引き寄せた。前節の後の多くの批判で、本人も考えるところがあったであろう。上手さに怖さが加わったプレーぶりだった。

「頼む!味方に当ててくれ!」
天野のコーナーキックに対する希望は、最低限のところから始まった。しかし、私たちが得たのは、試合開始早々の、大きな大きな先制点。天野のいつものコーナーキックは、伊藤翔がゴールに撃ち込んた。さらに、直後に天野がボールを植田から奪取し、迷いなくシュート。しかも、コースは鹿島の選手がスライディングをしてくる狭いコース。強気のシュートは曽ヶ端の逆を突いて、見事に決まる。

「天野できる子!!」
「あまのーーーーー!」
「素晴らしい!」

スタンドのテンションが上がる。豪雨の中とは思えないほどの大声援。
「急ぐな。」
「ゆっくり回せ!」
反撃する鹿島のハイペースに付き合ってはならない。
「いつものようにチンタラやれ!」

主導権を握るとトリコロールは強い。バブンスキーが鹿島を翻弄する。そして、バブンスキーが左サイドにいると、天野がサイドに流れてこないのが良い。だが、気になるのはサイドの守備。鹿島の仕掛けは早い。特に、両サイドに長い距離で斜めに入れてくるグラウンダーの縦パス。これを入れられると中町が走らされる。
「これ、中町、最後までもつのか?」
「喜田と中町は、かなりキツイな。」
ところが、前半の途中で動きが落ちたのはバブンスキーだった。
「電池が・・・。」
「試合から離れていると、こればっかりはどうにもならないからな。」

リードしているが油断ならない。相手は鹿島だ。強度、スピード、とにかくレベルが違う。強い。このまま、トリコロールが主導権を握ったままで試合を終えられるわけがない。それだけに、前半を2点リードで折り返したかった。ところが、ここで隙を見せてしまう。天野が蹴られピッチで寝ている間に攻勢を許し失点。トリコロールの甘さが鹿島に付け入る隙を見せてしまう。
(天野は1ゴール1アシストの活躍等により「公式睡眠アドバイザー」である「まくらぼ」からの表彰を受けた。)

後半開始早々、緩い入り。パススピードは、鹿島と大きく違う。完全にペースを握られる。だが、このリードを守りぬかなければならない。スタンドの声援は、いつもよりも大きい。試合開始早々からのリード、トリコロールギャラクシーの興奮・・・。アツく選手を後押しする。だが、徐々に受けに回る。そうなれば鹿島は小さな采配のミスすら見逃さない。コーナーキックのタイミングでの選手交代。バブンスキーはゴール前が守備の受持ちエリアではなかった。だから、交代もありだと思った。しかし、バブンスキーに代わって扇原はピッチに入るとゴール前へ。ベンチからの伝令か、他の選手に指示を出す。マークの担当が、これまでと変わる。ちょっとしたズレが生まれる。そして、鹿島は扇原の前にコーナーキックを蹴り込んできた。さすがだ。痛恨の失点。

試合を決めたのは、月並みのセリフではあるが、選手の頑張りだった。何度でもダッシュを繰り返す山中が絶妙なスルーパスを送り込み、横からスペースに入ってきた遠藤がターンし、倒れこみながらシュート。その瞬間にスタンドは爆発したかのような騒ぎになり、雪崩を打って人が倒れた。怪我人が出なかったのが不思議なくらいの大騒乱。絶叫する。この時点で、今日は、何回、泣いたのだろう。

大変なのは、ここから。鹿島の猛攻が強まる。サイドのケアのために栗原を入れて最終ラインを5枚に。スペースを埋める。中盤と前線には人が少ない。伊藤翔、遠藤、中町、喜田らが走る。中でも、扇原のプレーは素晴らしく、たった一つのファールをもらっただけでもスタンドからは立ち上がっての拍手が起きる。ドリブルで前にボールを運び、後ろにパスをするふりを何度かした上でドリブルスピードを緩めてファールをもらって吹っ飛ぶ。
「さすがだ!」
「素晴らしい!」
「経験してきた修羅場が違う。」
突破されて後ろから追いかけっこになった中澤は、いつ掴んでファールで止めるのかと思っていたら、味方との連携で突破を食い止め、しかも、中澤がファールを食らって相手にカードが出るという神業も披露。飯倉のスーパービッグセーブも鮮烈な記憶。不慣れなポジションにミスすることなく冷静にプレーし続けた下平。潰し合いに負けなかったデゲネク。普通の選手であれば担架で運び出されていたに違いない金崎の体当たりにも耐えて、鼻血を出しながら立ち上がった栗原。「舐められたら失点する。けっして引かない。」という決意を感じた。

「返せ!」
「引くな!」
「行け!」
「上げろ!」
「倒れるな!」

熱を帯びた声が飛び、We Are Marinosを歌う。飯倉への声援はスタジアムを一つにする。そして、西村さんの笛。試合終了。大歓声とともにスタンドは総立ち。拳を突き上げ、抱き合い、涙を流す。激しい試合は終わった。

気がつけば、オリジナル10で降格を経験せずにJ1の舞台で戦い続けているのは鹿島とトリコロールだけ。鹿島戦でステージ優勝を決めたこともあった。しかし、鹿島戦は苦手中の苦手というより、すでに獲得タイトル数でも追い抜かれた。スタジアムに入るまでは「クラシック」というフレーズに、若干の違和感があった。「クラシック」などという関係を結ぶことするおこがましいと感じた。だが、試合前に上映された動画で、屈辱にまみれた鹿島スタジアムからの帰路の思い出と併せて苦々しい記憶の数々がよみがえり、サポーターは「負けてなるものか」という思いを強くした。その思いは、応援をパワーアップする燃料になった。激しい試合を制した。この素晴らしい試合のお膳立てをしてくれたクラブ、両クラブの関係者、選手、そして、見事なジャッジで円滑に試合を進めてくれた西村さんら審判団、さらには、これまでの両クラブの歴史を作ってきた諸先輩に感謝したい。

1992年9月23日、国立競技場。今から25年前の初めての鹿島との対決は4-3の激闘だった。このカード、来年からは胸を張って「クラシック」と言えそうな気がする。

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Jリーグ2階の目線2017 横浜1-1大宮

せめて、人並みの勇気があれば・・・。前半から乱発した、とりあえずクロス。間に合わないと自ら判断してパスを追わないシーン。競り合いを避けて、相手のミスを離れて待つ姿勢。そして、ペナルティエリア内でのシュート放棄。2度目のシュート放棄はGKとの1対1の勝負となる場面だった。彼は臆病だった。勝利よりも彼にとっての見栄えのよい振る舞いを優先した。

しかし、天野純、たったひとりが臆病風に吹かれたから勝ち点2を失ったわけではない。

そう、そして、もう一人。彼に、全盛期の切れ味と思い切りがあれば、試合の結果は、全く違ったものになっていたはずだ。あの日立台での輝くような強いインパクトを、この試合では感じなかった。村上さん。前半から、もっと遠慮なくカードを出してくれれば・・・判定は・・・みんな正しかったじゃないか・・・。

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Jリーグ2階の目線2017 横浜1-1柏

素晴らしい立ち上がりだ。前からボールを奪いに行く。守備の連動が美しく、次から次へのトリコロールの選手が柏の選手に近づいて圧力をかけていく。ボールが下がる。拍手と歓声。奪い取る。声援が高まる。試合開始直前に大コールを受けて深い礼を返した山中がサイドを駆け上がる。ボールがこぼれて学の前に。ここで外からカーブをかけたシュートの軌道はゴールマウスに向かっていく。

絶叫し、飛び跳ね、隣の仲間と抱き合い・・・浴衣の帯が一瞬で緩んだサポーターは足元がはだける悲劇を防止するために、一瞬の冷静を取り戻す。だが、興奮は冷めない。再びの絶叫。

試合が進むにつれて口々に感想が漏れる。
「やればできるんじゃん。」
「前節が悔やまれる。」
「ぜんぜん、守備の位置の高さが違う。」
「なぜ、これを前節にできなかったのか。」
「あれが、無敗、無失点のプレッシャーだったのか・・・。」

しかし、選手から余裕が感じられるかといえば、そうでもない。学はスローインの判定にクレームをつける。そこから流れが悪くなり押し込まれる。前半の、唯一の悪い時間帯だった。木村さんはアドバンテージの取り方が上手くない主審だ。
「止めないでくれよー!」
この試合3度目だ。
「きっと、木村さんは、前節のウチの試合を見たんだろうな。」
「ここで流しても、チャンスにならないでしょって。」
「どーせ、すぐに下げるんでしょって。」

上々の前半。やりたいことができてきた。大きなピンチも与えていない。これならば、前節のショックを払拭する良い結果を残してくれる、誰もがそう思った。だが、Jリーグは甘くはなかった。

ケイマンが縦パスを前で収める。柏の最終ラインを追う。前半にできていたプレーが、後半は影をひそめる。高い位置でプレッシャーをかけてくる柏に押し込まれる。後半は学が前を向いてボールを持ち、そして山中が外を追い越して、空いたペナルティーエリア内のスペースに天野が侵入するとチャンスが生まれる。だがそれだけだった。人数をかけて2点目を奪うという意図を感じられるシーンが記憶に残らない。

柏の2枚目の選手交代が裏目に出て、クリスティアーノがサイドへ、伊東がサイドバックに移ると、余裕を持って試合をコントロールする時間が生まれた。ここでモンバエルツ監督が打った選手交代はケイマンを下げて喜田の投入。天野をワントップに置くという、過去に見たことのないゼロトップ布陣だった。しかし、トップにいるはずの天野が、柏の縦パスについて下がって行ってしまい、ケイマンが行っていたような前からの守備を出来ずに柏の最終ラインからの自由な配給を許すなど、ピッチ上はギクシャクし、明らかに不慣れを伝えている。柏が息を吹き返す。

その6分後に、前からの守備を一人で受け持っていた喜田が、何を考えたのか焦ってか、ボールを奪い取ろうという守備をしてしまいFKから失点。
「シュートを撃たせない守備だけでよかったのに・・・。」

「ウーゴを入れろ!!」
試合再開となり、腕組みで悩むように立っていたモンバエルツ監督だが・・・。
「あっ、座った。」
動くことはなかった。

残念だが、最後のビッグチャンスに、学はシュートを撃つチャンスが2度あった。だが、撃つ決断をできなかった。日本代表GKの中村の見えない力に屈した。

勝てなかった。2点目を奪い取ろうとする強い意志を見せず、後半はシュート1本だったのだから、この引き分けは、妥当な結果であったと認めざるを得ない。「運が良ければ2点目を」が全ての試合で通用するわけではない。優勝を狙うならば負け試合。残留を目指すならば勝ち試合。ACL狙いならば引き分け試合。この試合が、3つのうちのどれに相当するのかは、サポーターの立場であれば答えは明確だろう。さあ、まだ残り試合は沢山ある。だが開く勝ち点差。ここからの選択は難しくなった。優勝を目指すサッカーを求めるのか、クラブや監督の発言にあるように優勝ではなくACLを目指すのか。布陣もサッカーのやり方も、目指すゴールで変わってくる。

この日の前半は素晴らしかった。特に、川崎戦に先発しなかった選手のパフォーマンスは素晴らしかった。今シーズンの素晴らしい歩みを止めるか、見事なコンビネーションを錆びつかせるか、それとも花を咲かせるか・・・それは、次節からの選手の心次第だ。監督は優勝を目指した采配をしてこないだろう。では、サポーターは・・・優勝を目指して応援するんじゃないかな。その方が楽しい。私は、そのつもりだ。

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Jリーグ2階の目線2017 横浜0-3川崎

サッカーは難しいスポーツだ。自分たちが100%のプレーをしても勝てる保証はない。なぜならば、対戦相手がいるからだ。100%×100%でがっぷり四つにプレーしてもスコアレスドローということはある。だから、サッカーで重要なのは、相手にミスをさせることだ。どのように相手に圧力をかければミスを引き起こすことができるか、そこで勝敗は決することが多い。

つまり突き詰めていけば、「ミスが多いから負けた」はあり得ない。相手のかける圧力に屈してミスをしてしまったのだ。0-3は屈辱的な敗戦だ。しかも「ミスが多いから負けた」のではなく、川崎の組織的な守備に手も足も出なかったから負けたのだ。守備に絶対の自信を持ちカウンター攻撃を得意とするクラブが、パスの選択肢を失い、川崎の守備に屈したのだ。扇原の持ち味は、中村と小林によって巧みに潰された。家長のファールによるダメージも大きかった。マルティノスはドリブルで持たされて3人に囲まれた。川崎はボールを奪い取って攻撃するための守備が出来ているのがスタンドからでもわかった。準備をし、それを実行した。

一方のトリコロールは引いた。サイドで振り回されることの繰り返し。しかし、サイドから放り込む気などさらさらない川崎だ。ゴールライン付近にまで持ち込まれても中央でクロスを跳ね返せば良いなんて単純な考え方は当てはめられない。では、どうするつもりだったのか。無失点で凌ぎたい気持ちだけはわかった。凌いで、跳ね返して、どのように得点するのか。勝つための意図や準備が見えなかった。デゲネクが開いて、扇原が中央で作る。それを淡々とやろうとしてやらせてもらえなかった。ただ、引く守備以外に工夫は見えず、勝負は、立ち上がりの14分で決した。

「矛と盾の対決」なんて嘘だったのだ。すべての面で川崎に圧倒された。それが悲しい現実だ。

等々力から駅までの重たい足取り。気を抜けば、迷い魔界へ送り込まれてしまう武蔵小杉の道に油断は禁物だ。慎重に、夜道を歩く。会話をしても、トリコロールの良いところがなかなか見つからない。

「ウチの方が2週間の試合間隔があって、コンディション作りは出来たはずなのに。」
「喜田が消極的すぎた。中町の投入が遅すぎたよ。」
「この2週間で、川崎のことを研究して準備出来たはずなのに。」
「予選帰りのデゲネクを、なんで使ったかなー。」
「川崎は、ACLの初戦で浦和に大勝していなかったら、今日は、来週のミッドウィークの試合を意識した選手起用になったはずなのに。」
「全く気にする必要がないベストメンバーだもんな。」
「中村を下げないし。」
「ガスにも楽勝したし、余裕で臨んできた。」
「つまり・・・。」
「今日の完敗は浦和が悪い。」
「そうだよ、浦和が悪いんだ。」
「ふざけんな浦和。」

サポーターは現実からの逃避が可能だ。だが、現実は残酷なものだ。選手は、すぐに、この試合で明白になった課題を解決していかなければならない。これまでの歩みに疑問を挟む余地はない。だが、まだ、実力不足だ。残り試合で、何を伸ばせるのか。選手の心が試される。必要なのは意地よりも工夫する心。言い換えれば心意気だ。なぜなら、まだ、意地だけで栄光を阻む壁を越えられるほど強くはないから。欲しいのは無失点でも連続無敗でもない。勝ち点3だ。

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<様々な目線から捉えた試合>

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Jリーグ2階の目線2017 横浜1-0東京

思い出してほしい。2017年2月のことを。対戦相手は中村俊輔と学についてコメントした。扇原もウーゴも山中もいなかった。松原は守備に課題と言われていた頃だ。びっくりするような勝利だった。だが、あの頃は、実力を半信半疑だった。でも、今は違う。確実に強くなっている。実力が増していくことを実感できる。例えば、中澤のドリブルからのパスの選択。シーズン開幕当初とは全くレベルが違う。これデゲネクから盗み取った新たな技術だろう。松原、山中の守備での一対一の強さ。天野の前進力。

観戦していて気がつく前節との違いは、選手のプレーに一喜一憂し声援と拍手を贈るスタンドの一体感だ。ここにはよそ行きの人は少ない。いや、少なくなった。相手のちょっとしたミスに歓声が起き、適切な守備に大きな拍手が起きる。誰もが当事者になりトリコロールの一員を意識している。素晴らしいスタジアムだ。前節ではアウエーゾーンでしかなかった観戦スタイルが、この巨大スタジアムでは当たり前になっている。

神戸でのスコアレスドローから続く長い無得点の時間に、やっと終わりを告げたのは扇原の飛び出しから。これぞCFGメソッド。ペナルティエリアの角の内側から縦に飛び出して裏に抜け出し、逆サイドへの山なりのクロス。そこに待っていたのはウーゴ。叩きつけたヘディングシュートがワンバウンドし、ゆっくりとゴールに向かって飛んでいく。終盤までのスコアレスの試合において、勝負を決定づけるシュートは、スピードがゆっくりであるほど良い。期待に心踊る時間を経て、ゴールネットが揺れるのを確認すると喜びを爆発させる。

このチームは生きている。大きく呼吸をしながら前進し成長している、サポーターと共に。ただの堅守ではない。あの80年代から90年代にかけての勝負強いトリコロールが帰ってきた。そして珍しく勝つための采配も。モンバエルツ監督は、早い時間にウーゴを投入。仕上げは抑えの切り札・栗原勇蔵。割れんばかりの大歓声に迎え入れられた栗原を加えた最終ラインには松原、中澤、デゲネク、栗原。これはこわい。
「ここにウタカ一人で挑んで、ガスは何をしようとしたんだ?」
中島のシュートに肝を冷やしたシーンはあるが、ペナルティエリアの中に良い形で侵入を許すことはなく、高いボールを入れさせることもなかった。

かつて「月刊(月間)ノーゴール」を達成したことがあった記憶も新しいが、今月は「月間無失点」。2位への浮上。次は川崎戦。柏戦も待っている。9月はホームゲームが少ない。シビれる秋がやってくる。1位は鹿島。追いつくことができるかはわからない。でも、ここまでの歩みは間違えではなかったのだから前進あるのみだ。試合後のスタンドには笑顔が溢れた。次節は皆で乗り込もう、あの等々力へ。昨年の屈辱を晴らすため、忌まわしい迷路から、この日と同じ笑顔で帰ろう。

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