両クラブサポーターの意識から見える等々力問題 マリーシア感情的サポ論


横浜×川崎の等々力陸上競技場開催試合でトラブルが連続している。2013年J1リーグ最終節に続いて2014年5月18日J1第14節でも緩衝帯付近でトラブルが生じた。その事実関係や経緯説明は別の記事に譲るとして、ここでは、あまりトラブルが多くないはずの横浜サポータ、川崎サポーターの間で、なぜ、このようなトラブルを生じてしまうのか、サポーターの意識の一端から考察する。

2014年5月21日からインターネット上でアンケート調査を実施した。有効回答数は、横浜サポーター300、川崎サポーター100。全てシングルアンサー。

Jリーグでは横浜と川崎の対戦を「神奈川ダービー」と称して盛り上げている。その盛り上げが原因となっている面はあるだろうか。そもそも神奈川ダービーとはプロモーションのために人為的に創作されたダービーである。何も因縁のない川崎、横浜FC、湘南の3クラブが集客促進のためのギミックとして同じ神奈川県内に本拠地を置くクラブが合同で実施したJ2におけるプロモーションが発祥である。現在では川崎がJ1の有力クラブとなりメディアの協力もあって、J1においても神奈川ダービーという言葉を聞く事が多くなった。

 

横浜サポーター「負けてほしくない対戦クラブ」

横浜F・マリノスが負けてほしくないクラブ

川崎サポーター「負けてほしくない対戦クラブ」

川崎フロンターレが負けてほしくないクラブ

2年連続でトラブルが発生している事もあり、横浜・川崎はお互いに負けてほしくないクラブの一番手に挙げられている。両クラブサポーターがこのような関係になったのは2010年の小宮山の移籍(横浜→川崎)が発端。正確には移籍した小宮山にブーイングをする横浜サポーターに川崎サポーターが反発する事から対立関係が始まった。それまでは、特に因縁もなく、普通の試合の一つだった。この移籍さえなかったら・・・移籍したのが小宮山でなければ・・・両クラブのサポーターの関係は、今とは異なっていたかもしれない。

 

横浜サポーター「ライバルクラブ」

横浜F・マリノスのライバルクラブ

川崎サポーター「ライバルクラブ」

川崎フロンターレのライバルクラブ

横浜のライバルは東京V。日本リーグから常にリーグタイトルとカップ戦タイトルを争い日本サッカー発展のために雌雄を決してきた。Jリーグ開幕戦は横浜×東京V(当時はV川崎)で行なわれている。もう20年以上も前の事だがライバル意識は引き継がれてている。川崎のライバルは東京。最近では対戦を「多摩川クラシコ」と銘打っている。東京ガス時代からJFLで対戦しJリーグ昇格を争ってきた。「川崎  コターレ事件」「東横線ジャック」「西が丘『誰かに合わせてくるぞ』事件」など、様々な逸話を残しているが、両サポーターによるトラブルは少ない。注目すべきは川崎サポーターの25%(全体の4人に1人)がライバルは横浜と回答していること。逆に横浜サポーターは10.7%がライバルは川崎と回答。両者には大きなギャップがある。

「負けてほしくないクラブ」と「ライバルクラブ」のギャップにも注目。両クラブサポーターともに全体で見れば「ライバルではなく負けてほしくないクラブ」だと回答している結果となっている。「ライバル」は「相手を認めている関係」だが「負けてほしくないクラブ」は「相手を見下している関係」と解釈して良いだろう。

 

横浜サポーター「神奈川ダービーという言葉を使うか」

横神奈川ダービーという言葉を使いますか

75%が使わない(=川崎戦はダービーではない)と回答している。ここからも、横浜サポーターが抱いている川崎戦のイメージの一端がうかがえる。あくまで、川崎は横浜よりも格下で対等な関係ではないという扱いだ。

川崎サポーター「神奈川ダービーという言葉を使うか」

川神奈川ダービー

53%が使うと答えている。

 

横浜サポーター「日産スタジアムに来場する川崎フロンターレサポーターの人数の印象」

日産スタジアムに来場する川崎フロンターレサポーターの人数の印

注目すべきは44.7%が「印象にない」と回答している事。ネット上に溢れるクレームだけを見ると、横浜サポーターから川崎サポーターへ強硬な対立軸を持ち込まれているような印象を受ける川崎サポーターが多いようにも見受けられるが、実際には横浜サポーターの多くは川崎サポーターに対する意識が薄い。

川崎サポーター「等々力陸上競技場に来場する横浜F・マリノスサポーターの人数の印象」

等々力陸上競技場に来場する横浜F・マリノスサポーターの人数の印象

横浜サポーターとは逆に川崎サポーターにとって横浜サポーターは「等々力に大量に押し掛け、自分たちの好きな選手にブーイングを浴びせてくる集団」という印象を抱いている。

 

ここまで、両クラブサポーターのアンケート調査の結果を比較してきた。筆者の過去の観戦経験と併せて考察を行なうと、下記のように考えられる。

(1)多くの横浜・川崎サポーターは相互に良さを認め合うライバルではなく、相手を見下した位置にクラブ(サポーターではなくクラブそのもの)を見ている。

(2) 横浜サポーターの多くは川崎サポーターに対して、あまり意識をしていない。一方の川崎サポーターは、横浜サポーターを「ホームスタジアムの等々力に押し掛けブーイングを浴びせてくる集団」という意識を抱いている。そのため、等々力での横浜戦は他のクラブとの対戦とは異なり(その程度は人それぞれだが)特別な試合となっている。

2014年5月18日J1第14節にトラブルの発端となった松田直樹の幕は「横浜サポーターの横断幕掲出エリア」だが「緩衝帯よりも外の川崎サポーター観戦エリア」に掲出されていた。川崎サポーターからは「大切な幕を川崎サポーター観戦エリアに掲出する理由が理解できない」という声があった。その川崎サポーターの声が上がる背景の意識(インサイト)を理解せず、横浜サポーターが川崎サポーターを逆に批判しても、意見が噛み合う事はない。川崎サポーターの立場で見れば緩衝帯よりも外の川崎サポーター観戦エリア」に幕が掲出される事で「横浜サポーターからの更なる脅威」を感じてしまったのではないだろうか。一方で、横浜サポーターは特別な意識なく警備員の許可を得て「横浜サポーターの横断幕掲出エリア」に幕を設置しており、そこに特別な意志はない。意志がない事を理解できない川崎サポーターが多く存在することを横浜サポーターが攻める事には無理がある。

2014年5月18日J1第14節のトラブルは、両クラブのサポーターにとって、とても不幸な出来事である。そして、両クラブのサポーターのインサイトを考察すると、両クラブのサポーターの行動が起きてしまった原因を、ある程度は理解する事が出来る。しかし、引くに引けない気持ちが起きてしまうのもサポーター気質である。となれば、このような分析をサポーターが行なうのではなく主催クラブの運営部署が行ない、しっかりとした運営計画を立案し、実行する事が必要なのではないか。

なお、「2014年5月18日に緩衝帯付近でトラブルがありました。最も責任が重いのは誰でしょう」という質問に対して、サポーターは下記のように回答している。

横浜サポーター「2014年5月18日に緩衝帯付近でトラブルがありました。最も責任が重いのは誰でしょう」

横責任

川崎サポーター「2014年5月18日に緩衝帯付近でトラブルがありました。最も責任が重いのは誰でしょう」

川責任

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