2014年 Jリーグ2階の目線 横浜2-0川崎(三ツ沢)

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天皇杯を敗退。たった3日後に同じスタジアムでの試合。心の傷を癒すには、目の前の強敵を叩くしかない。スタンドもピッチ上も同じことを考えていた。立ち上がりに攻勢をかける。その気迫に押されたのか、幸運なPKを得る。登里が、あのような軽率なプレーを頻発する選手とは思えない。しかし、無理な体勢でも止めなければと思ってしまったのだろう。ラフィーニャが蹴り込み先制。勢いづく。

ゴール裏の4ブロックとメインスタンドのアウエー側は川崎サポーターが陣取る。日産スタジアムでの過去の集客実績からすれば、それほど狭いエリアではない。その薄い青のエリアは失点を嘆くどころか、逆に、ますますヒートアップする。絶対に勝ちたいという最高の雰囲気、積極的な選手の仕掛け、激しくゲームが動く。座って観戦するサポーターも決定機には思わず立ち上がる。

「行け!もう一点を奪え!」

今日もラフィーニャの加速装置がチャンスを作り出す。途中から急速に加速し裏に抜け出すスピード感、そして、横に移動しながらパスを受けて前にボールを運ぶ抜群のセンス。さらには、パートナーとして中村大先生をスペースに走らせる図太さ。W杯中断前とは、明らかにチームのムードが一変している。

序盤の攻勢で試合の主導権を握るが、その時間は長くは続かない。マークを引き剥がして走り込む味方をフリーにする動き、敵の首を振らせて逆のスペースに動き出すプレーなど、川崎からは、前回の等々力での対戦よりも更に高いクオリティを感じる。

「止めろ!縦に行かせるな!」

悲鳴が上がる。目の前で森谷が高速のドリブル。下平がぶっちぎられる。

「森谷って、あんなドリブルを持っていたのか。」
「森谷と下平のマッチアップは下平に分が悪いのか。」

川崎の右サイド、バックスタンドの目の前にポジションをとるのは憎き弱虫である森谷と小宮山。時折ブーイングを浴びせるが、最初のドリブルでスタンドは森谷に脅威を感じる。これまで何度かの対戦をしてきたが、この脅威は初めてのことだ。逆サイドはレナト突破を何度も許し、小林のポジションが深い。押し込まれる。

状況が急展開するのは登里の退場からだった。この退場で川崎は心理的に大きなダメージを負う。ジェシ、大久保などが冷静さを失う。適切なジャッジに対しても家本さんへのクレームを連発。一方で小椋も冷静さを失うファール。大荒れ。ここで技を見せたのがラフィーニャだった。それほど痛くはないはずだが、敵のゴール前でゆっくりと寝ている。プレーが止まっている間に、他の選手が小椋を抑え、落ち着きを取り戻させる。ジェシと大久保は、荒れ続けている。

「さぁ5と8を狙え!」
「ラフィーニャは、ずっとジェシの近くでプレーしていていいぞ!」

脅威だった森谷と小宮山のコンビネーションは、この退場で解体となった。森谷は右のサイドバックに。小宮山は左のサイドバックに。ただ、小宮山は後半もバックスタンドからブーイングを浴びることになる。

上々の前半を終えて後半へ。後半になると、あることに気が付く。状況が変わったのは川崎の選手の心理面だけだったのだ。家本さんと闘っているような大久保はシュートを放てない。ジェシは不安定なキックを繰り返す。だが、一方で、川崎は引かない。中盤の底を中村憲剛だけに任せて攻撃の手を緩めない。

「まったく数的優位を感じないじゃないか。」
「これ、途中から試合を見た人がいたら、退場者が出ていることに気が付かないぞ。」

川崎が優勝争いをしていることを納得できる攻撃のクオリティ。左右にパスを振り回す。ただ、助かったのはシュートが少なかったこと。もちろん、危険な中央にはパスを入れさせない守備戦術の勝利でもある。入れ込み過ぎの大久保から、小椋が、中町がボールを奪い取る。大久保はペナルティエリア内では、ほとんど仕事をできない。さらには、自ら大げさに倒れたり、榎本がキックするところに脚を出したり。

三ツ沢はスタンドをエキサイトさせる。選手に声が届く距離。選手の視界に入る高さ。川崎のスローインの位置が前過ぎれば「もっと後ろだ!」「下がれ!この野郎!」と声が飛び交い、手を大きく振って審判にアピールする。その影響か、ジェシが副審に抗議をしている間にスローイングで裏を突いて大チャンスが生まれるシーンも。

「やっぱりジェシは味方だ。」

1点のリードをしている。川崎は1人少ない。その余裕が感じられない緊迫感の中、途中出場の兵藤がゴールにボールを押し込む。
「うぉーーーーーー!」
拳を突き上げる。話をしたことがない前列の人とも掌を合わせる。待望の追加点。

「これこそ兵藤のプレーだ!」
「何だかよくわからないところで、しっかり決めるのが兵藤だ!」
「無失点で終わらせろよ!」
「これで落ち着いてプレーできるだろう。」
「弱気のプレーばかりをしている中町を下げて喜田を入れることができるかもしれない。」
「出来れば中村大先生を下げたい。前回の日産スタジアムのときみたいに痛める前に下げたい。」

さあ、ここからは、どの様に試合をクローズさせるかだ。その指示は監督から選手に伝わるのか、それとも、選手だけで実行するのか。

ラフィーニャの交代で予想以上にピッチ上が混乱する。途中出場したのは藤田と喜田。なぜか、この2人が前線に並ぶ。まるでツートップのような位置関係のシーンも多い。前から川崎の最終ラインにプレッシャーをかける指示だったのかもしれない。そこまでは良い。ところがボールを奪うと喜田はゴール前に一直線。

「おいおいおい、どーなってるんだ?」
「まさか、1点獲って、試合を決めてこい、とか言われてきたんじゃないのか?」

そして、危険なカウンターを喰らう。自ら失点の危機を産み出し、体力を消耗する。

ベンチ前での出来事。兵藤が藤本にボールを預けようと左サイドにゆっくりとしたパス。しかし、藤本はパスコースよりも遥かに前に走り込む。藤本は前方のスペースにパスを欲しかったようだ。パスを回して時間を使おうとする兵藤とゴールに向かってアクションしたい藤本。噛み合っていない。

「うーん、混乱しているなー。」

細かく家本さんが積み重ねて出来上がった、6分間の長いアディショナルタイムの終了を告げるホイッスルが夜空に響く。川崎フロンターレが、まだ富士通サッカー部だった頃から歌い継がれている We Are Marinos は大歓声に変わる。川崎側からはブーイングが聞こえる。皆さんに語り継がれているように、トリコロールのサポーターは様々な栄光、屈辱、事件やタイトルを経験して、時の流れと共に変化してきた。川崎サポーターも同様だ。このカードがダービーマッチに値するかどうかは別にして、激しくサッカーの醍醐味を存分に盛り込んだ試合を行ってくれるカードであることは保証できる。川崎サポーターは忘れたいかもしれないが、2014年の2度の対戦は、私たちが今後も語り継いでいく2試合となった。まだ歴史の浅いこのカードを、どの様に育てていくかは、選手と私たちサポーター次第だ。出来れば年内に、もう1試合を闘い勝ちたい。その舞台はナビスコカップの決勝戦だ。

 

みんなの採点

1 榎本 哲也
5.5 連続完封。ピンチを招く判断の誤りに不安も。

4 栗原 勇蔵
6 強さを発揮。攻撃の繋ぎ役も果たす。

13 小林 祐三
6 耐えに耐えギリギリでレナトを押させる。

22 中澤 佑二
6 抜群の存在感。競り合いで強さを見せつける。

23 下平 匠
5.5 序盤は森谷に突破されるが攻撃で持ち味を発揮。

6 小椋 祥平
7 大久保は家本さんに苦情を言うしかなかった。

8 中町 公祐
6 守備で貢献大。攻撃は、揺るパス・浮き球・宇宙開発と弱気で散々。

10 中村 俊輔
6 またしてもラフィーニャに走らされる。

11 齋藤 学
5.5 そろそろ限界か。切れ全く無く沈黙。

25 藤本 淳吾
6 ゴールに向けての意欲を感じる走りだった。

18 ラフィーニャ
6.5 今、この男を止めるのは難しい。

7 兵藤 慎剛
7 あのシチュエーションでの決定力は全盛期の武田並み。

28 喜田 拓也
5.5 元気いっぱい。なぜかゴールに迫る。

19 藤田 祥史
5.5 守備に頑張る。

監督 樋口靖洋
5.5 起用した選手が活躍。しかし終盤の混乱は指示の不徹底から。