2014年 Jリーグ2階の目線 横浜1-0広島(日産)


試合終了のホイッスルが鳴る。一斉にバックスタンドのサポーターが立ち上がる。ここでリーグ戦に勝利するのは5月以来。シーズン開幕前にはリーグ優勝を狙っていたはずだが、9月も中旬になって3勝目だ。苦しい試合だった。特に終盤は、途中出場して体力が有り余っていなければならないはずの藤田の足が止まり、守備が弱体化。縦パス入れられ放題。かろうじて最終ラインで守り切る展開。アディショナルタイムが長く感じた。試合内容に特筆すべきところは無い。でも、みんな笑顔だ。勝ちたかった。ただただ勝ちたかったのだ。

ふわりとした力ない山なりのボールを広島の林がキャッチする。普通ならば、落胆のため息や「ビシッと撃て!」と声の出るプレー。だが、今日は違う。
「シュートを撃った!」
「こんな早い時間にシュートだぞ!」
「しかも枠内シュートだ!」
「今月、初の枠内シュートだ!!」
「凄いぞ!」
異常な盛り上がり。サッカーなんて、楽しみ方の心持ち次第で、いくらでも見え方は変わる。とにかく、幸先の良いスタートだ。

シュートを放った。だが、簡単には事は運ばない。いつものように攻めが遅い。広島が時折に見せる長い距離を選手が一斉に走って、ダイレクトかツータッチ程度でテンポよく広い範囲にパスを繋いでいくのとは対照的。特にブレーキなのは中村大先生。前節に続いての絶不調。そして、学にキレは無く、ドリブルを全く出来ない。最初のフェイントを見切られてボールを奪われるシーンが目立つ。

「行け!行け!」
「追い抜いてこい!」

選手は、一生懸命にプレーしているが、広島のプレーとのコントラストが鮮やかすぎる。流れの中から得点を奪える気配がない。後半のアタマからは中村大先生を下げて佐藤優平を投入。しかもツートップの位置に。樋口監督としては、奈良輪の起用と同様に「走れる選手」でなんとかしようという意図だろう。ある意味では正しい選択だが、プレーの質が向上する訳ではない。だが、守備面では過去の広島との対戦と同様に、ポジションの噛み合わせが良く、広島の攻撃をなんとか押さえる。

ピッチ上の選手たちは、明らかに、監督の意図とは選手はシンクロしていない。藤田が投入されると、あの懐かしの「馬鹿プレス」。前からボールを追いかける。スタンドが沸く。ところが、意図的な前からの守備ではなかったためか最終ラインは連動せず、深いポジションのまま。「馬鹿プレス」がかわされて、前線と最終ラインの間の広く開いたスペースに広島が縦パスを送り込む。

「やばーい!!」
「なんとか止めてくれ!」

ここからオープンな展開に。登場から10分間ほどで藤田がスタミナの残量0に。早い。GKに向かって無駄な奪取を繰り返しすぎたせいだ。守備が機能しなくなり、ここから広島の攻勢が強くなる。

「3枚目は矢島か。誰と代えるんだ?」
「ボランチを1枚減らしたりしないだろうな?」
「翔くんでしょ。」
「あ、伊藤翔のようですね。」

という会話をしているときに五分五分のボールへ伊藤翔が突進。

「やった!」
「PKだ!!」
「良くやった!!」

強かったときには考えられない、PKを奪取しただけでお祭り騒ぎ。それで良いのだ。今はPKであろうと、何であろうと1点が欲しい。騒々しくキッカーの集中力を削ぐような雰囲気だが、もう、みんな黙っていられない。そしてゴール!絶叫。

「よーっし!!」
「良く決めた!!!」

やっと奪ったゴール。久々の勝利が見えてくる。しかし、直後に、そのムードに水を差す、まさかの采配が炸裂。

「なんで今、今、交代なんだよ!?」
「監督、ビビってんじゃねーよ!」
「ここで交代したら、広島が一息ついて気を取り直すだけじゃねーかよ。」
「このメンバーでワンプレーも守れないと思ってるのかよ。」
「樋口さん、弱気すぎる。」 
「こんな采配、見たこと無い。」

通常は、得点後にワンプレーかツープレーを経過してから選手交代を行なう。時計が進む中で早く反撃したい対戦相手の勢いに水を差す間合いを創り出すためだ。しかし、ゴール直後のキックオフの前に交代しても、なんら心理的な効果はない。樋口監督は、そのようなことよりも、守備的な選手を一刻も早くピッチに投入したかったのだろう。矢島だったはずの交代選手は富澤に代わっていた。

「入れるのが早すぎる。」
「しかも説明時間が短かったのか混乱しているぞ。」
「ポジションがよくわからないみたい。」
「急いで話し合って決めろ。」
「大丈夫か?」
「三門は、その話し合いに加わらなくていいのか?」

そんなドタバタ采配に罵声が飛ぶ。それは、どうしても勝ちたい気持ちを、このホームスタジアムが受け入れてくれるから。今日から、横断幕、ビッグフラッグ、やっといつものホームスタジアムが帰ってきた。そして、勝利も。

「よーし!今日はパーと行こうぜ!」

試合後はスタジアムから中華料理店へ。無失点で勝利し中華料理の円卓を囲んで乾杯する。これが横浜のオーソドックスなスタイルだ。次の試合が、また、すぐにやって来る。次も勝ちたい。この、仲間の笑顔を、また土曜日に見たい。もう、名古屋戦や鹿島戦のような沈痛な雰囲気のスタジアムは嫌だ。やはり楽しくなくちゃ。

<みんなの採点>

榎本 哲也 6
再三の決定機を防ぐ。アディショナルタイムの混乱を治める役割も。

栗原 勇蔵 5.5
中澤との連携が冴える。

中澤 佑二 6
辛抱強く広島を制圧。

下平 匠 5.5
攻撃の起点となるが中央に人がいなかった。

奈良輪 雄太 5.5
クロスを入れる他に手段が無く単調。

小椋 祥平 6.5
守備の強さ以上に攻撃の起点として重要。

兵藤 慎剛 6
スペースに走り込みパスを引き出す。あとはゴールに向かう姿勢だけ。

中村 俊輔 5
動けず哀しい姿。休ませるべき。

齋藤 学 5
キレなく。一対一で負け続ける。

三門 雄大 5.5
常にバランスを意識してプレー。

伊藤 翔 6
青山の妨害に惑わされずPKを見事に決める。

佐藤 優平 6
FW起用にも適応。見事なアシスト。

藤田 祥史 5.5
まさかのスタミナ切れ。少しはアタマを使え。

富澤 清太郎 5.5
出場時間短く評価無し。

樋口 靖洋 5.5
説明が短いとピッチ上が混乱する事が分った。

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