2014年 Jリーグ2階の目線 横浜1-1東京(味の素)


試合終了。今シーズンの試合は全て終わった。選手への感謝の意思表示よりも前に、コーチと監督へのコールが起きる。そう、今シーズンは終わってみれば、選手が主役ではなかった。監督・コーチがずっと主役だった。選手たちは、監督との約束事を守り、規律正しく闘った。

この試合も、ゴールを奪われないサッカーは機能。防ぎようの無いシュートでの1失点こそあったが、堅守を見せつけた。そもそも、今年の戦術ならば、ピッチの中央でボールを奪われて危険なカウンターを喰らう可能性は低い。なぜなら、樋口監督の、サイドに人数をかけてボールをポゼッションし主導権を握るサッカーは、裏を返せば安全策のサッカーで、中央でボールを奪われてピンチを招きことが少ないサッカーだったからだ。中央から攻めないので失点も少なかったのだ。

樋口サッカーの集大成。サイドでのボールポゼッション、粘り強い守備、僅かに5本と少ないシュート。だが、エキサイティングだった。真っ向勝負をしてくるガスの選手との闘いに火花を散らす肉弾戦。中村大先生投入までは、個々の選手が縦への仕掛けを強く意識。パス回しが停滞しない。

「う〜ん、そのクロスは無理だって。」
「いや、奈良輪、続けろ。やれることを続けるしかないって。」
「でも、あのぽよーんとしたクロスじゃ点は入らないぜ。」
「10本入れ続ければ、何か起きますって。」
「6本目くらいに違った質のクロスを入れたら、それがゴールになったりするんだって!」

そして、奈良輪は縦にドリブル。走り続けた。クロスを入れ続けた。その数5本目。初めてグラウンダーのクロス。飛び込んでくる2人の選手が目に入る。そして、伊藤翔の足でコースの変わったボールがゴールに吸い込まれていく。どっと沸き立つ満員のアウエースタンド。気がつけば倒れていた。一列後ろの席の外国人マリノスサポーターが手を差し伸べ起こしてもらう。これぞ興奮のトリコロール。少ないチャンスを劇的に決める真骨頂。

「いやー来たね。奈良輪のクロス。」
「6本目よりも1本早くグラウンダーが来た。」
「ほら、繰り返さないと。」

樋口監督の起用に応える、奈良輪、2試合連続のアシスト。そして、伊藤翔は自己最多の8ゴール。開幕当初は、高校時代の印象からドリブルが特徴のサイドアタッカーと思われていた伊藤翔。まずは、開幕戦でパワフルなミドルシュートを披露し意外な一面を見せた。そして、シーズンが進むにつれて本当の姿をサポーターに理解させていたった。伊藤翔はポジショニングで勝負するストライカーだった。過去のJリーグの選手で例えれば、読売の武田に近いタイプ。この試合のゴールも、そんな伊藤翔の特徴が、見事に発揮されたシュートだった。伊藤翔にとっても、これまでのキャリアの集大成だっただろう。

中村大先生が登場すると、攻撃はスローテンポに。そこへ味のある鋭いパスが混ざり、変化に富んだ時間帯となる。来シーズンの新監督次第では、中村大先生の起用法は、今年までとは変わるかもしれない。昨年同様に、今年も中村大先生は、リーグ戦をフルに闘うことは出来なかった。そんなことも一瞬、脳裏をよぎったが、そんな余裕が無くなる。なぜなら、栗原が退場したからだ。
「あっ2枚目だ!」
これだけは余計だった。栗原自身も自覚していたのか、主審がカードを取り出す前に、もうすでにベンチに向かって歩き出す体勢。このプレーだけは今年の集大成とは違った。今シーズンは、この試合まで1試合平均の警告は1。J1全体の1試合平均の警告は1.3なので、かなり少ない。無理なファールの印象が無いシーズンだったのだ。

とはいえ、劣勢になるどころか、逆にガスを押し込む時間帯もあるほどに、栗原不在は大きなハンディにならなかった。むしろ、終わってみれば勝ちを逃した印象すらある引き分け。主審のホイッスルが鳴ると、昨シーズンよりも、かなり早く、今シーズンは終わった。

引き締まった激しい試合だった。勝てば3連勝だったが、一歩及ばなかった。そして、開幕は3連勝だった。あの、まったく勝てなかったシーズン中盤が、実に勿体ない。停滞のシーズンだった。だが、良い兆しもある。中村大先生不在のときの試合運びは、昨年よりも格段に良い。人気選手不在の試合は寂しいモノがあるが、リーグタイトルを狙うためには、少しだけ階段を上ったのではないだろうか。新潟戦に続いて、アグレッシブなイキキとした選手の躍動する姿がスタンドの興奮を高めていった。

スタンドの私たちも、少しだけ変わった。昨シーズンの天皇杯優勝、リーグ最終節の苦い経験、そして、今シーズンの海外での闘いが、新たな仲間との絆を深めていった。また、黄金期を知る仲間たちの次の世代の子供たちが成長した。中には試合後に、大人以上に采配への注文を付けるまで成長をした子供も。来年、このクラブは大きく変身するはずだ。私たちもクラブとともに変化するだろう。でも、変わらないこともある。それは、みんなこのクラブが好きで、いつでもどこでもクラブの存在を軸に繋がっているということ。1992年から、ずっと一緒に応援してきた一人の仲間が、今シーズンの途中から姿を見せなくなった。でも、スタジアムに通う仲間たちは、ずっと彼がスタジアムに戻ってくること待っている。誰もがずっと毎週末にスタジアムに来られる訳ではない。長い間、来られなくなることもある。でも、きっと、スタジアムには、いつでも戻って来られる。そこに、トリコロールの旗がはためいている限り。

We Are Marinos !

 
< みんなの採点 >

榎本 哲也 6
好守はもちろん、攻撃の起点としての意識も高かった。

栗原 勇蔵 5.5
退場は妖怪のせいだ。

小林 祐三 6
グイグイとボールを意欲的に前へ進めた。

中澤 佑二 6.5
失点シーンで倒れたことだけは残念。

奈良輪 雄太 6
真面目に繰り返し連日の殊勲のアシスト。

兵藤 慎剛 6
ドリブルも交えて攻撃の起点、推進役に。

齋藤 学 5.5
コンディションが戻らず。

佐藤 優平 5.5
落着いてプレー。正確性が向上。

藤本 淳吾 5
開幕当初の自由奔放なスタイルには戻らなかった。

富澤 清太郎 5.5
栗原退場の穴を感じさせない安定のプレー。

伊藤 翔  6.5
見事なゴールで今シーズンを〆た。

中町 公祐 5.5
ポーカーフェイスで守備を固めた。

中村 俊輔 5.5
キレ、運動量ともに不足。それでも唸らせるパスを随所に。

藤田 祥史 5.5
今シーズンはポストプレーに進歩が見られた。

樋口 靖洋 5.5
安定の予定通り采配。栗原の退場にも慌てず。

This entry was posted in 2階の目線2014. Bookmark the permalink. Follow any comments here with the RSS feed for this post. Both comments and trackbacks are currently closed.

Comments are closed.