因縁と寛容の両立を「踏み付け」ず、真の敵を見失うな。 マリーシア感情的サポ論

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4月3日の鹿島戦で金崎の顔を踏みつける悪質な反則を行った鳥栖のキム・ミンヒョクが4試合の出場停止処分に。また、鹿島のクラブハウスを訪問し、金崎、トニーニョ・セレーゾ監督に直接の謝罪を行った。

プロサッカーは、程よい因縁を活かしながら、日常とは異なるエキサイティングな90分間を提供するプロスポーツ興行だが、選手が怪我をするような反則は許されない。そして、必要以上の憎悪や人種、国籍などの差別も許されない。

そんな中で、いわゆるサポーターとは違う立場でサッカーを見ている茂田カツノリさん(企業のIT化推進コンサルタント)の意見にハッと気がつかされた。茂田カツノリさんは、今回の謝罪を良かったこととした上で、以下のように意見している。

「僕は韓国人や韓国系日本人の友達もちろんいる。みんなもいるでしょ。だからこの手の話題は書きにくい面はある。でもさ、日本と韓国は隣の国で国民性が違うのは間違いなく確か。超大雑把にいうと『中国という大国に接して自己主張を明確にしないと生き残れない韓国』と『島国である種守られる中で調和を重んじてきた日本』という傾向はあるよね。だから今回の踏み付けも『韓国選手らしいラフプレイじゃん』でいいと思うのだ。そして違いとか歴史的因縁とかを踏まえた先に、ホントの国際親善があるってものでしょ。」
(茂田カツノリさんの許可を得て引用)

韓国代表や韓国のクラブチームは荒っぽいプレーをする場合が多いイメージがある。80年代までは韓国代表の強いフィジカルコンタクトを前面に打ち出したサッカーに、日本代表はほとんど勝てなかった。では、韓国のサッカーは危険でサッカーの敵なのかというと、まったくそのようなことはない。韓国代表はワールドカップで日本代表よりも好成績を挙げてきている。KリーグクラブチームはJリーグクラブチームを破ってACLで上位に進出してる。同じルールの中で闘ってきているのだ。でも、日本のチームと対戦すると荒れた試合になることは目立つし、日本人とは違うマインドを持っていたり、日本人には理解しにくい行動をする選手もいる。ところが、それには韓国の歴史や国土の中にバックボーンがあるわけで、それを認めれば良いだけのことではないのか。

例えば、タイの選手は、ボールに間に合わなくても深いタックルをしてくるケースがある。これは、タイは雨量が多く、ピッチコンディションが悪いことが多々あるため、タックルを的確にボールに当てることができなくとも、スライディングをすれば、相手がボールコントロールをミスしてくれる確率が高いことが理由だといわれている。日本人選手が滅多に行わないスライディングが飛んでくる。でも、それも、タイのスタイルとして認めれば良いことだ(他には、中東各国の時間稼ぎなども)。

サポーターには、アジアのライバルたちに対して「負けてなるものか!」「なにくそ!」「俺たちのサッカーの方が上だ!」という強い意識を持ちながら、一方では相手のスタイルには寛容であり、それを認めるという姿勢が求められているし、認めることは、サポーターがサッカーを楽しむコツではないだろうか。なによりも、サッカーの国際試合の面白さや、異色の外国人選手のプレーの面白さの根源は、自国のサッカーとの差異やミスマッチにあるのだ。

そして、一方で、真の敵を見失ってはならない。

今回の反則はJリーグが規律委員会まで発表を差し控えていたこともあり、無用に話題が広がった。そのため、サッカーのファン、サポーターだけではなく、自らの持つ国籍差別意識を正当化するために韓国籍選手を貶める人までが、その話題に参入してきた。その多くは「国籍は関係ないだろ!」という声に耳を貸さなかった。なぜなら、その人はサッカーを語りたいのではなく国籍を語りたいからだ。つまり、Jリーグを悪用するJリーグの敵に場を提供してしまったのだ。私たちは、国籍差別意識を正当化するための行為に加担してはならない。加担すれば、何かしらの規制が生まれたり、自由の侵害が広がってくる。そうなれば、将来、今と同じようにJリーグを楽しむことができなくなるからだ。

キム・ミンヒョクは謝罪のために鹿島に出向いた。金崎は「握手だけじゃ伝わらないから肩を組んで笑って撮ろう」と笑顔で写真撮影を提案。「もう気にしないでいいから、今度対戦する時もお互い全力でプレーしよう」とキム・ミンヒョクに声を掛けた。トニーニョ・セレーゾ監督は「誰にでも失敗はある」と激励。これはJリーグを守るために必要なことだった。感謝したい。