Jリーグ2階の目線2015 横浜3-1仙台


新幹線で仙台へ向かう。車窓から見える空は横浜よりも鮮やかな青。黄金色の稲穂が風になびく。ベガルタゴールド。あれはゴールドではない。きっと、この季節に東北地方の豊かな大地を染める稲の「黄金色」なのだ。遠征にはぴったりの季節がやってきた。

快勝だけではない。すばらしい気候と観戦しやすいスタジアム。それに、美味い魚、牛タン、ずんだ、酒。ベストゲームと言える試合は別の試合なのだろうが、今年の「ベスト遠征」とシーズン終了後に振り返って挙げられる試合だろう。落胆した仙台サポーターは試合を終えると足早に去っていった。勝利の余韻を楽しんだ後に、地下鉄に乗り込むのは勝者のトリコロールばかり。混雑もなく、駅はスタジアムから近く、申し分のない帰路だ。

いつもの仙台スタジアムとは違った展開だった。前に出てこない仙台。パスをつないで隙を伺い攻略を図る。ここ数試合よりも中村大先生が低い位置に。アデミウソンは強引な突破でゴールを狙う。だが、攻撃に幅がない。今ひとつキレのあるパスワークが光らない。

「アデミウソンが天野にパスを出さない。信用していないのか。」
「天野は、もっとチャレンジしないと。これじゃ、何もやっていないに等しい。」
「裏を狙っているのはわかるけれど。」
「切り返してクロスばかりだと、さすがにパスが来なくなる。」

そんな会話をしていたら、喜田と天野がテンポ良くパスをつなぎ、三門へ。放ったシュートがゴールに吸い込まれていく。
「いいじゃん、天野が前向きに仕掛けたら点になったよ!」
といっても、なかなか天野らしいプレーが見られない。前半終了間際に、アデミウソンが渾身のパワフルなドリブル突破を見せる。突然に出てきたスルーパス。走り込んでいれば1点もの。しかし、天野は動けなかった。
「見とれてるんじゃねーよ!」
「いやー、あれはわからなかったかぁ。」

先制点をゲットしてリードをしたものの、守備的な仙台に手こずる。前半にも中澤を振り切るシーンを見せていたハモンロペスが、中澤との一対一に勝ってクロスを入れると失点。後半は、天野が見違えるような積極性を見せ、追加点は確実と考えていた矢先の失点に、意気消沈する。しかし、機能し始めたトルコロールは主導権を仙台には渡さない。

そうはいってもシュートが多くなく、なかなか得点の気配がない。
「まだ、中村大先生がシュートを撃っていないんじゃない?」
「セットプレーを見ると、そうとう調子いいはずだけどな。」
「おっ!撃った!」
「すげぇ!!」
ゴール裏から見ても、明らかに不自然な弾道を描いた無回転シュート。正面であっても六反はキャッチできない。そこに走りこんでくる小林が見える。空中でダイレクトにシュート。しかも、軽く当ててコースを選んでボールをゴールのなかに転がし込む。
「きた!!!!!」
大興奮の素晴らしいゴール。歓声が天井にこだまする。

もう1点を追加できれば楽になる。ドリブルでゴール前を横方向にドリブルするアデミウソン。左足でのシュートコースを伺うが、コースが空かない。撃てずに逆サイドまでドリブルで横断しようかというところでファール。倒れる。
「よし!!!」
「ラッキー!」
「来た!見せ場だ!」
「みんな、アデミウソンのシュートに期待していなかったでしょ!」
「そりゃそうだよ。枠にいかないし。」
「あの体勢だと、腰が回りきらずにシュートが外に飛んでいくよ。」
「だから、このファールは最高の選択肢。」
「ベストですよ!」
「さぁ中村大先生、決めてくれ。」
そして、駆け引きから簡単に決めた。
「うぉーーーーーー!!!!!!」
「代表GKコンプリート!!」
「また、凄いものを見た。」
「まさに剣豪。中村大先生。」

ベガルタサポーターは中村大先生の恐ろしさを初めて知っただろう。彼らが恐怖を記憶しているトリコロールの選手は奥であり久保であった。J2降格の重たい記憶だ。今日は、君達と中村大先生との素敵な出会いを祝福しよう。フリーキックは10枚の壁を越えてゴールネットと心を揺らした。メインスタンドには、思わず美しさに拍手をしてしまうベガルタサポーターも見える。そして、その次のフリーキックでは、壁の無意味さを悟った仙台は壁の人数を減らした。終盤、仙台は少しばかりの反撃に出るが、応援に元気は戻ってこなかった。

終わってみれば、成熟し実りの秋を感じさせたのは黄金色の仙台ではなく、トリコロールだった。優勝は極めて厳しい勝ち点差だが、残り試合を全勝で終えるという予想は、けっして無謀ではない。でも、その前に仙台の夜だ。トリコロールのサポーターたちは、国分町へ、駅ビルの牛タン屋へ、塩竈のすし哲へ、笑顔いっぱいに散っていった。来シーズンは、牡蠣の美味い季節に頼む。欲が出た。

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