天皇杯2階の目線2015 横浜3-1滋賀


1点奪えば勝てる。逆に1点奪われると負ける。緊迫の17分間が始まる。豪雨で中断した試合は35日間を経て73分から再開となった。その間、トリコロールはリーグ戦で負けなし、各選手の調子は上がり、仲川の髪は短くなり、スタジアムは三ツ沢から日産スタジアムへと変更された。試合開始前にピッチに入れないルール。滋賀の選手は、これまでにプレーしたことがない巨大スタジアムで、いきなりプレーをすることになった。ゴールキックから始まる。しかし、そのボールはタッチラインを割る。一気呵成に攻め込むつもりだったであろう滋賀の勢いが削がれる。明らかに浮き足立って、プレーの精度が低い滋賀の選手達。トリコロールが攻め込む。

これまでの天皇杯とは違う。こうした試合で最も避けなければならないのは気持ちが守勢に回ってボールを前に運べなくなることだ。何度もそれを目にしてきた。しかし、これまでの天皇杯とは違うのだ。喜田と三門がボールを前に素早く運ぶ。このプレーが重要だ。このポジションでボールを簡単に下げると付け込まれる。しかし、この2人が引き締め、そのような隙がない。

勢い余ったファールから劣勢に回る時間帯があったが、全体的には上々の試合運びで90分間を終える。延長戦の立ち上がりも悪くない。奈良輪のクロスからアデミウソンがヘディングで決めた。2階席が解放されず密集度の高いバックスタンド屋根下に歓声がこだまする。そして安堵の空気が流れる。これで優位に試合を運べる。滋賀の選手は戸惑っているばかりだ。試合展開に追いつけない。今度はアデミウソンの意外なコースに流し込んだスルーパスを、早いタイミングでシュートする伊藤翔。ゴールネットが揺れる。2点差!

「素晴らしい!!」
「ストライカーだ!!」
「見事!」
「かっこいい!!」

左サイドでスペースに走りこんで、GKの動きを見極めてゴールを盗み取る。まるでアンリのようだ。

「さぁ、これで余裕を持って残り時間をプレーできるぞ。」
「アデミウソンって、あと1点をとればハットトリックでしょ。」
「おっ、そうだ。」
「決めれば、史上最長のハットトリックになる。」
「決めてほしいな。」

チャンスはやってきた。あとは決めるだけだ。GKとの一対一。浮かせるのか、ドリブルでかわすのか、股を抜くのか・・・しかし、シュートは真正直の真正面。

「おいおいおい!」
「本当にブラジル人かよ!」
「なんで決められないんだよ。」
「決まらないにしてもコースか高さかどっちかにしろよ。どっちもダメなのかよ。」
「フェイントかと思ったら、そのまま撃つとは・・・。」

これほどまでにプレーが面白く驚きのインパクトをスタンドに与え、技術伝承の貢献も絶大なアデミウソンなのだが、どうしてもシュートが入らない。いや、ブラジル人とは思えない芸のなさ。苦笑いが起きる。この調子だと、来シーズンも横浜でプレーを見られるかもしれない。

「これまでのブラジル人のイメージを変えてくれるよな、アデミウソン。」

試合後の報道で、アデミウソンはプロ入り後初のヘディングによるゴールだったことが判明した。

「う〜ん、やっぱりアデミウソンはシュートが苦手なんじゃないか疑惑。」
「まぁ、あれが決まっていたら、来年は横浜にはいないからな。よかったんじゃないの。」
「ところで仲川って途中出場で途中交代になるよね。」
「あ、そうだ。」
「これって、記録だけ見ると、まるでダメだった選手に見える。」
「ダメ采配にも見える。」
「せっかくのプロデビュー戦なのに、なんという不幸な。」

試合後はみな笑顔。饒舌。たった500円で堪能した。引き締まった良い試合だった。史上最多優勝記録を伸ばすための好スタートとしよう。35日前のことは、もう忘れた。

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