中村俊輔の人種差別デマはなぜ広がったのか マリーシア感情的サポ論

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2016年4月30日、日産スタジアムで開催されたJ1・横浜と湘南の試合終了後にトラブルが起きた。ゴール裏の端のエリアのスタンドからの声が「たまたま耳に入ったから(中村俊輔談)」、中村俊輔がスタンドの前に進み、客席と言い争いを起こしたのだ。

この原因について、横浜F・マリノスは「人種差別発言を原因とはしていない」としている。しかし、ネット上では「カイケに対する人種差別発言があったらしい」という情報が一挙に広まった。例えば、下記のツイートのような、いくつかの「らしい」という憶測ツイートが、その発信源となっている。その多くは、スタジアムにいなかった人から発信されている。

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なぜ、このようなデマは拡散してしまうのだろうか。米国の心理学者G.W.オルポート(Gordon Willard Allport, 1897-1967)は「デマの心理学(1947年)」の中で「流言(デマ)の基本法則」という公式を示している。

R = I × A

R:流言(デマ)の流布量 Rumor
I:内容の重要性 Importance
A:内容の曖昧さ Ambiguity

流言(デマ)がどれくらいまで広く流布するかの流布量は、不特定な他者から受け取った伝達内容がその人にとってどれくらい重要であるか、その伝達内容に関する根拠や証拠の曖昧さがどれくらいかの掛け合わせによって規定されるという公式だ。

今回の騒動のデマには、まさに、この公式が当てはまる。特に注目すべきなのは「I:内容の重要性 Importance」だ。中村俊輔という、日本でも屈指の人気有名選手で、かつ、キャプテンシーにあふれた責任感の強いキャラクターが、この曖昧な情報の重要性を増しているのだ。

浦和で発生したジャパニーズオンリー事件以来、サポーターの間では人種差別問題に対する意識は高い。再発防止の機運は高く、事件の記憶は風化していない。そうでありながら、なぜ、このデマは広がったのだろうか。

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実は、意外なことに、今回の騒動で「スタジアムで差別発言があってほしいと思う人は多数おり、その心理は単純ではない」ということがよくわかった。

1 差別を好む人
その存在は以前から知られていた。このような人は、一定数量が世の中には存在する。そして2つに分けられる。「1-A 差別主義者」と「1-B 差別によって注目を集めたい人」だ。いわゆるネトウヨは、主に「1-B」が該当する。スタジアムにも、当然のこと、このような人は足を踏み入れている。

2 差別発言を使って誰かを陥れたい人
例えば、恨みを持つ人、対立関係にある人が、それに当たる。サポーターでいえば、他クラブのサポーターなど。対立するクラブの評判が落ちることを狙う。愉快犯である場合と、勝ち点剥奪などの処分を狙う場合とがある。

ここまでは単純だ。誰もが思い付くだろう。ところが、それ以外にも、実は潜在的に差別発言を欲している人がいることがわかったのだ。

3 差別に怒る自分の姿を示したい人
「いいね!」を欲しい、リツイートされたい、フォロワーを増やしたい・・・そんな、自分をアピールするためのネタを探しているときに、差別発言という自分アピールに格好の出来事に出会ってしまうと「差別発言があったとしたら、私はそれを許さない。」と書き込みしてしまう。

4 差別に好きな選手が立ち向かってくれたという希望を叶えたい人
「私が好きな選手は正義感が強く悪と闘ってくれる。」「私が好きな選手は、自分が批判されたから怒るような人ではない。」「私が好きな選手が怒るのには別の、もっと大きな理由があるはず。」と考える。そのときに差別発言という絶対悪に出会ってしまうと「差別発言のような『人として絶対に許せないこと』に立ち向かってくれたんだと思う」と書き込みしてしまう。

皆さんが感じる通り、3、4の人には悪意がない。差別主義とは対極の位置にいる人だ。しかし、今回の騒動では、3、4の人たちがデマを広げる大きな役割を担った。「もし差別発言があったとしたら許さない」という「仮定」は、次第に「差別発言があった」という「事実」に変移していった。

さて、どうすればデマを防ぐことはできるのだろうか。不確実な情報を拡散しない、情報の発信源が誰であるかを確認する、などが基本的なこととされている。それに加えて、下記を心得てみてはどうだろうか。

「重要と思われる書き込みを見ても30分間くらいは待ってみる。」

サポーターは同ジャンルを愛好する仲間の集まり。緩やかに連携を保っており、自然と役割分担が行われている。もし誤った情報が発信されたら、それを検証する役割や指摘する役割を担うサポーターが必ず出現する。自分にとって内容が重要で、それでいて、一抹の曖昧さがある場合は、少しだけ待ってみよう。それがデマ拡散を防止し、愛するクラブや選手を救うことにつながるのだ。

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<5月2日追記>

また、こちらのサイトを見ると30日には「差別発言があったらしい」という情報があるが「具体的な発言内容が不明だからなんとも言えない」という解釈となっていたが、5月1日には「人種差別が本当なら」という過程付きの書き込みが加わっていくのがわかる。Yahoo!リアルタイム検索では4月30日に36件だった「俊輔 差別」の書き込みが5月1日には101件に増加。

例えば、このような人物のツイートは、発言を聴き取れる位置ではない場所からの観戦でありながらも、多数のリツイートをされている。

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そしてアクセス数を稼ぐことで広告収入を上げられる「まとめサイト」や、出会い系などの会員募集アカウントが、アクセス数向上のために、「差別発言があった」ことが事実のように見せる編集をして、この話題に参画してくる。

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