Jリーグ2階の目線2016 横浜1-1大宮

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リーグ優勝にふさわしいクラブとは、どのようなクラブだろう。攻撃力、守備力、観客を魅了する力・・・様々な要素がある。そんな要素の中で、最も重要なのは「勝負所で力を発揮できる」ということではないだろうか。いわゆる「勝ち方を知っている」と言われるクラブだ。この大宮戦ではアディショナルタイムに同点に追いつくことができた。しかも、10人。一人少ない劣勢を跳ね返した。だが、本当に、力を発揮すべき勝負所はそこだったのか。実は、違うのではないか。そんな無念さがある。負け試合を引き分けにしたように見えるが、実は勝てる試合を取りこぼした試合だったのではないか。

前半から、うまくいっていないイライラが伝わってくる。ファビオの左サイドでのスライディングタックルや無駄なファール。大宮は、立ち上がりから強いプレッシャーをかけてきた。攻撃も川崎のように左右に振り回すパスワーク。一方的に押し込まれる時間が続く。主審がマイボールのスローインだと大きなジェスチャーで示しても「ファールなのではないか」とボールボーイが接触プレーのあった位置に立つ大宮の選手にボールを渡してしまう一幕まであった。

「おいおいおい。」
「ボールボーイがセルフジャッジかよ。」
「大人になる前からセルフジャッジでは先が思いやられるぞ。」

トリコロールの選手たちがフラストレーションをためているのはスタンドから見てもわかる。その雰囲気を察して、山本主審は神経質に感じるほど細かく笛を吹き、簡単には警告を出さずに注意で試合を落ち着かせようとする。例えば、ゴール前のポジション争いで腕を広げて大宮の選手の動きを塞ごうとするマルちゃんには、プレーを止めて2度の注意をした。ところが、そこまで注目をされて、しかも指導を受けていながら同じ反則をして笛を吹かれてしまうマルちゃん。そのプレーに象徴されるように、トリコロールの選手たちは、なかなか冷静にプレーをできない。

「あちゃー。」
「あれだけ見られているのだから、ちょっとは考えないと。」
「あれは吹かれるなー。」
「焦るな、もっと落ち着いてやろうよ。」

年間順位をひっくり返そうと、大宮の選手たちは、相当な意気込みでトリコロールに立ち向かってきた。しかし、真夏の8月。大宮の勢いは続かず脚が止まり始めたのは35分頃から。そこに、確かに勝機はあった。だが、攻勢をかけることは出来なかった。その勝機を感じる余裕がなかったのかもしれない。

前半に不用意な足の裏を見せるスライディングで警告を受けてしまった喜田。後半に入っても本来のプレーをできない。簡単に泉澤のフェイントに引っかかりコースを空けてしまい失点。直後に、再び泉澤にドリブルで振り切られる。そして、オフサイドのセルフジャッジでアピールをした直後にトラップミス。ボールを家長に奪われ後ろから掴んで退場に。アンダーアーマーのシャツはよく伸びる。

「あーやっちまった。」
「これは退場だ。」
「いやー、まいった。」
「馬鹿野郎!なんてことしてくれるんだ。」

そのまま家長を見送って失点するよりは退場になる方がマシではあるが、前半からの自らのイライラで本来のプレーをできないままにミスをして退場。あまりに痛い。

「喜田らしくない。」

ここから猛反撃が始まる。ずっと自制していた小林はリスクを背負ってドリブル突破を仕掛ける。沸き起こる大歓声。カウンターを仕掛けると、バックスタンドも総立ちになり絶叫する。

「まだ、時間はあるぞ!」
「大宮の脚は止まっているぞ!」
「大宮は動けないんだ!一人少なくても、ちょうど良いハンディだ!!」

コール、チャント、声援。後押しもあり同点のゴールを生み出す。しかし、そこまでだった。無念の引き分け。放ったシュート数は、いつもの通りに一桁。学、中町がゴールライン際で突破をしたシーンは、これまでにはなかなか見られなかったチャレンジの成果ではある。夏休みの試合として盛り上がりはあった。アディショナルタイムでの同点は劇的だった。だが、優勝を目指すには痛すぎる引き分けだった。上位との勝ち点には、また差が開いた。首位・浦和との勝ち点差は6。順位は5位に。

最後に、山本主審のレフリングについて触れておく。58分の胸で押さえ込んだプレーは、あれだけ、手でコントロールしたくないという意志がはっきりと見えると、手に当たっていたとしてもハンドリング(手でボールをコントロール)とは判定しにくい。ハンドと言い切れないのは明白で、逆にテレビ解説の金田さんはノーファールを明言していた。87分の浮き玉のハンド疑惑(胸か腕か)はテレビ中継ではリプレイも流さない。主審からも見えやすい位置だし選手もあっさり引き下がっているので反則はないだろう。両プレーとも山本主審は大きなジェスチャーでノーファールを示していた。あえてノーファール判定だが最も誤審の可能性が高かったプレーを挙げると54分に中町が自陣ペナルティエリア内で大宮の選手の腰に手を回したホールディングの見逃し疑惑。大宮サポーターからすれば、あれはPKではないかと不満を持つだろう。実際に、アウエー側バックスタンドでは悲鳴が上がった。

ファン・サポーターが目の前で見えた、感じたことに反応するのは自然なことなので、ブーイングが起こることは全く悪くない。素直な感情表現こそがスタジアムでは優先されるべきだ。ただ、振り返ってみて、その反応が正しかったのかは録画などで検証した方が、Jリーグにおける応援という視点では、より良いと感じる。優勝をするためにスタンドに足を運ぶのであれば、審判への悪い先入観は、次の試合には全くプラスに働かないのだ。

この試合をマリーシアメンバーと一緒に一人のブラジル人女性が観戦していた。トリコロールに不利に感じる判定があったときに「日本の人は審判にフィリォ・デ・プータって言わないの?」と不思議そうにしていた、ということを報告しておく。人それぞれ、国民性も様々だ。

<試合後のコメントはこちらをご覧ください。>

<様々な目線から捉えた試合>