Jリーグ2階の目線2016 横浜1-0仙台


「終わったの?」
「終わったのか!?」
「勝ったの!?」
飯田主審の鳴らしたホイッスルを試合終了と確信できない。勝ったことをすんなりと信じられない。それほどまでに追い詰められた状況の中で1-0での完封勝利。確かにアディショナルタイムを終え勝利したということを確信し、一呼吸おいて歓声をあげ表情が緩む。このスタジアムは客席が暗い。やや沈んだ色に見えるトリパラが舞い始まる。涙を流す者もいる。鳥肌が立った者もいる。こんな勝利を予想していなかった。前半を終えた時点で、こんな大勝利を期待できる状況にはなかったのだ。

全く良いところがなかった前半。選手の動きが重たい。対する仙台も、復興ユニフォームとはいうが屋上のウルトラマンショウの休憩時間に頭を脱いでしまったようなアルバイトのような弱そうなユニフォームに身を包んでいることもあって怖さがない。そして、ディフェンスラインは乱れている。積極的に中央を突いていけば攻略できるはずなのに、トリコロールの攻撃はエンジンがかからない。でも無理もない。過密日程。ミッドウィークには120分間の天皇杯。この試合では内容を問えない。低いディフェンスラインを敷いて失点を回避するサッカー。ボールを奪っても瞬発力がなく、時間を要する攻撃。もどかしい。後半に、このサッカーが改善されるだろうか。望み薄に思えた。今日はスコアレスでも仕方ない。うまくセットプレーで1点を奪えたら、守り抜いての引き分けでやむを得ない。

後半開始早々に前田が素晴らしいプレーで仕掛ける。中を何度も確認してのアーリークロス。合わせる伊藤翔。
「来た!!!」
それは突然に来た。伊藤翔が足を延ばす。私たちの腰が浮く。ボールはゴールポストの外に離れていく。
「惜しい!!!」
「決まれば美しかった!!」
このプレーが号砲となる。前からボールを奪い素早い攻めに。どこに、このような力が残っていたのだろう。右サイドから仙台に圧力をかける。前田と小林のパス交換。生き生きとした小林が躍動する。ディフェンスラインの裏を何度も狙う。またしても前田のクロス。
「学!!!!」
「届かなかったか!!??」
猛攻が15分間続く。
「行け!!ここが勝負だ!!」
「何が何でもゴールを奪え!」

しかし、奪えない。支配した時間帯が終わる。一進一退の攻防に。ゴールを奪える雰囲気は減退。逆に奪われるピンチが増える。前半とは違う展開。といっても、疲労の残る選手たちにいつものキレはない。気力で闘っている。ギリギリの戦いだ。激しいぶつかり合い。ときには汚いファール。学はなんでもないフェアーなショルダーチャージに吹っ飛ばされた。踏ん張りが利かない。ついには、新井が金井に代わるアクシデント。

それでも、何度もチャレンジする。倒れても立ち上がる。数日前までのドリブルをすれば一人では止めることができなかった学の姿はそこにはない。今、目の前にいるのは、脚の痛みに耐え、重たい身体に精神力で鞭打ちドリブルでまっすぐ前進し続けるエースの姿だ。仙台のディフェンス陣が下がる。クロスを入れる。入らない。やはり身体が動かないのだ。ところが、跳ね返ったボールに素早く近づき叩き込んだボーレーーー。

「兵藤!!!!!」
「来た!!!」

ゴールネットを突き破らんばかりにボールがゴールに飛び込んでくる。気がつけば兵藤が、中町が、ゴール裏スタンドの前にやってくる。兵藤の身体が宙を舞い広告看板の上にあるのが見える。幸せだ。何て幸せな時間なんだ。ここに来て良かった。この幸せな気分は、このスタンドにやってこない限りは味わえない。

「よくやった!!」
「勝つぞ!!」
「絶対に勝つぞ!!!」

ここから簡単に追加点が獲れれば、もっと楽な試合だっただろう。例え追加点が獲れなくても、普通の試合であってほしかった。なぜなら、選手たちは疲労困憊。満身創痍なのだ。ところが、杜のラフプレー王・大岩は、それを許さなかった。学の脚をめがけて、遠くから猛然とスライディングタックル。危険を察して学はボールを放棄して飛び跳ねる。まともに脚を刈られていたら大怪我をしたところだろう。それは回避するが、それでも倒れて、なかなか立ち上がることができない。これまで、アドバンテージの見極めに慎重なジャッジをし続けてきた主審の飯田さんは、即座に大岩を追いかけてイエローカードを提示する。

「これは酷い。」
「大丈夫か、学。」

新ルールの導入により担架は入らず、ピッチ上で治療を行う。大岩への怒りとレッドカード相当のプレーだというアピールをベンチ前で行ったマルティノスに飯田主審がイエローカードを提示。おもしろ外国人としての存在感を示すが、これは良くない。さらには、物をベンチに投げ込んで大荒れの様子。試合再開。しかし、学はプレーできずピッチを去ることになる。

「うわぁダメか。」
「おい、どうするんだ、交代の準備はできているのか?」
「誰を出すんだ!」
「マルちゃんは、もうカードをもらっているから怖くて入れられないぞ。」
「なんということだ!?試合に出ていないのに!」
「消去法で遠藤しかない。」
「ここは遠藤に頑張ってもらうしかない。」

ピッチに入った遠藤にシュートのチャンス。遠藤は、絶対にGKにキャッチされないシュートを慎重に放つ。枠外。キャッチされてカウンターを食らうことのない上隅を狙ったシュートだろうが、遠くゴールの上をボールは飛んでいく。

「なんじゃそりゃー!」
「いや、いいんだ。これでいいんだ。」
「カウンターを食らうよりも100倍マシだ。」

そのあとは覚えていない。ただ、絶叫し、コールし、手拍子した。

「終わったの?」
「終わったのか!?」
「勝ったの!?」

まだリーグ優勝の望みがあるトリコロールは最後まで闘い続けた。サポーターは苦しい状況を理解した上で、現実的な戦術を認め応援し続けた。我々には目指す物がある。2ステージ制最後の王者の座を譲りたくない。一方、仙台は目指す物がなかった。天皇杯で隣県の県庁所在地である盛岡に大敗。サポーターは試合前の応援をボイコット。優勝するわけでも残留争いをするわけでもない順位で目標を見失った。試合前のボイコットで仙台サポーターの応援はボルテージが上がらないままに試合終了を迎えた。

まさかの激しいゲームに笑顔が出始めるが、疲労も襲ってくる。そして、突然の空腹。昼は塩釜のすし哲で贅沢三昧に美味しい魚を食べたというのに。でも大丈夫。国分町の店は抑えてある。祝勝会の準備は万全だ。普通の牛タン料理店では食べられない美味い牛タン料理が待っている。今夜の祝勝会は、いつもの祝勝会よりも3割り増しで美味しく味わえそうだ。これだから仙台遠征はやめられない。

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<様々な目線から捉えた試合>

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