Jリーグ2階の目線2017 横浜3-2浦和


「シーズンあけまして、おめでとうございます。」
「おめでとう。」

シーズンが無事に幕を開け、こうして、しばらくぶりに仲間が顔をあわせることを祝う。だが、多くのサポーターは「無事」とは、程遠い心境に追い込まれたシーズンオフだった。年が明けて、これまでにない的確な補強、そして練習試合での新戦力の評判の噂を聞き、期待は大きく膨らんではいたが、半信半疑というのが正直なところだろう。キックオフ時間は12時35分。他のどの試合よりも早い。2017年のJリーグは、私たちによって始まる。

ピッチ上をトリコロールが躍動していた。昨シーズンに年間勝ち点1位を獲得した浦和を、立ち上がりは圧倒。学の仕掛けが2度、同じ形で繰り返され、バブンスキーが折り返されたグラウンダーのクロスからのシュートを繰り返す。同じ形だが2本目のシュートは鮮やかにゴールネットを揺らす。

「凄い!!」
「美しい!!」

新生トリコロールのお披露目には、贅沢すぎる程の見事な型を見せつける。躍動している。選手に迷いがない。誰もが前に仕掛け、速い。

予想通り、無失点とはいかない。不安定なディフェンスラインを破られ、またミスも重なり逆転を許す。さすがに、浦和は実力者。ケイマンへのパスコースを塞ぎ、両サイドにおいては、学のサイドからの攻撃で、学の位置を後ろに下げようとする。トリコロールの縦への推進力が鈍る。ボール保持率は試合終了時で40%を切った。だが、反撃の機会を、虎視眈々と伺った。プレーに悲壮感はない。

途中交代で投入された選手たちが積極的に仕掛け、再び、決定機を創り始めたトリコロールが、終盤に追いつき、アディショナルタイムに、またしても学からのグランダーのクロスが中央に送られ、今度は前田が、狭いコースを正確に突いて逆転。大興奮の熱狂に包まれて、2017年のJリーグ、最初の試合は華やかにフィニッシュ。

「俺はさぁ、トルシエが言った『ナカムラがいるとベンチが暗くなるから』って意味が、ちょっと解ったような気がするんだよ。」
こう試合後に語ったのは、マリーシアのメンバーで、最も中村俊輔を長く深く愛した仲間の一人だ。2002年の日韓ワールドカップのメンバー発表の際に、中村俊輔の名前が読み上げられることはなかった。その際に日本代表監督のトルシエが「ベンチが暗くなるから」と説明に加えた。当時、サポーターは中村俊輔を擁護し、トルシエは強く批判された。

時は15年を経て、いまだにプレーが錆びない中村俊輔はサッカー界のアイドルのポジションを維持し続けている。このオフでの磐田への移籍は、大きな騒動を巻き起こした。レギュラー選手は、極めて少人数が移籍しただけなのにもかかわらず「大量離脱」という文字が躍ったのは、中村俊輔の存在感が故にだろう。そして、この試合で、私たちは中村俊輔の存在感を、あらためて知ることになった。
「今日の選手のプレーぶりは明るいもん。なんかノーテンキなくらいに仕掛けてさぁ。」
「やるべきことが決まっている感じだったね。」

「俊輔さんの求めているサッカーだったら、このタイミングで動かなければならないかもしれない。」「俊輔さんのパス選択だったら、ここは、一度、後ろに下げて作り直すかもしれない。」などなど、そんな遠慮や迷いが感じられたのが、昨シーズンのトリコロールだった。選手たちは、モンバエルツ監督の目指すサッカーと、中村俊輔の好むサッカーとのギャップに折り合いをつけることで苦心していた。遠慮し、迷っていた。モンバエルツ監督の目指すサッカーは、おそらくずっと変わっていない。なぜならば、モンバエルツ監督就任の直後のサッカーは、昨シーズンよりも、この日のサッカーに近かったからだ。そして、中村俊輔の目指すサッカーも、また、すっと変わっていなかった。

バブンスキーのポジションは「10番のポジション」ではなかった。バブンスキーを経由してゲームをじっくりと組み立てるという考えはなさそうだ。天野のポジションは少ないボールタッチでボールを素早く動かす役割だった。そして、天野に限らず、突然に前線の学やマルティノスに送り込まれる対角からのロングフィード。これまでのJリーグでは、あまり使用されなかったパスが多用された。それが、プレーから感じる明るさだった。このサッカーには悩み考えている時間はない。サイドからはゴールに向かってのドリブル。マリノス誕生から25年。木村和司、中村俊輔に引き継がれた「日本の10番がゲームを創るサッカー」は、この日で終わりを告げた。私たちは、かつてない、スピーディーなサッカーで、この一年間を闘う。

2017年のJリーグ開幕と同時に、私たちは中村俊輔の存在感から解放されたのだ。新しい背番号10はサイドアタッカーが背負った。

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<様々な目線から捉えた試合>

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