Jリーグ2階の目線2017 横浜2-1磐田


ここまで負けて失うものが大きな試合は、25年間のクラブの歴史の中で数えて3つしかない。1つめは2001年11月24日。敗れれば降格の危機があったJリーグ最終節。神戸ウイングスタジアムでの試合だ。2つめは2007年8月11日。横浜FCとの「最後のダービー」。この磐田戦は、ただの一試合ではない。まさに、クラブの尊厳を賭けた一戦となった。

立ち上がりから両チームともに動きが硬い。金井など、明らかに考えすぎでシンプルなプレーをできない。そして、なぜか60分を過ぎると、トリコロールの足が止まる。
「まずい。このままだとやられるぞ。」
「なんで、お休みしているんだ!!」
スタンドに追い詰められた雰囲気が漂う。この試合は、絶対に勝たなければならない試合なのに。そんなとき、目の前に起こったのは、金井の完璧なトラップ。最もシュートを撃ちやすい場所にボールを置き(止めというよりも置きだ)、素早く、そして余計な力をかけることなく滑らかに脚を振る。ボールはゴールに吸い込まれていく。
「うぉーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「決まった!!!」
「すげーーーーーーーー!!!!」
揺れるスタンド。倒れる人。ぐしゃぐしゃに、もみくちゃになって拳を突き上げる。
「誰だ?誰が決めたんだ!?」
「金井だ!!」
「金井が決めたぞ!!」
大抜擢あり、挫折あり、不祥事あり、移籍あり・・・それでも、このクラブに食らい付いてきた金井が、このゴールを決めたことに大きな意味がある。金井に、ピッチ上の選手が、そしてベンチから仲間が駆け寄り祝福する。

それにしても酷いレベルの試合だった。落ち着きなく、高い技術を披露するシーンも少ない。特に、中盤にぽっかりと空いた大きなスペースを磐田に自由に使われることで、スタンドからは何度も悲鳴が上がった。このような守備のやり方には、このスタジアムは慣れていない。

しかし、リードを奪うと。モンバエルツ監督は、これを選手交代で解消して見せた。扇原を守備的トップ下で起用。右サイドには遠藤。国際試合で修羅場を経験してきている扇原は試合を落ち着かせる見事な働き。確実に磐田の攻撃の速度を低下させていく。遠藤は、デビュー以来、最高の気迫で駆けた。スタンドからの声援が、彼を後押しする。こうなれば、孤軍奮闘していた松原も活きる。アディショナルタイムに最後までボールを追い込んでコーナーキックを奪ったシーンでは、バックスタンド2階席は総立ちになった。さらには栗原の投入。そのときの歓声は、マルティノスの先制シーンに匹敵する大音響。「絞めて勝つぞ」という決意がスタジアムを一体化させる。

苦しい試合を勝利する。この勝利に爽快感がない。残ったのは、選手への感謝と安堵。我々は、このクラブの尊厳を守り、行くべき道を見失わなかった。降格時に強豪としてのアイデンティティが崩壊し、あらたなクラブのブランド構築を進める磐田とは、目指すものの違いを応援で、そして選手はプレーとコメントで表現した。我々は次の航海に向けて錨を上げた。

試合前、メディアが、中村俊輔のプレーに期待をするトリコロールサポーターを選んで取材していた。メディアのあては外れただろう。そして、多くのトリコロールのサポーター自身も、このような試合になるとは予想していなかった。例えば、私は、中村俊輔にブーイングすることになるなど、試合開始まで思っていなかった。選手紹介ではブーイングをしないと決めていた。しかし、試合が始まると、大きなブーイングが中村俊輔には浴びせられた。私も、その感情に共感して、目一杯のブーイングをした。

ベテラン選手の選択として中村俊輔の移籍決断を理解していた多くのサポーターが、人間・中村俊輔の度重なる発言に反発した。試合前の2日間のスポーツ新聞に掲載される記事は、磐田のメディア戦略もあって(名波が仕掛けた)、ナーバスな気持ちをだめ押しで刺激した。メディアも、中村俊輔も、磐田の関係者やサポーターも、日産スタジアムは中村俊輔の帰還を歓迎するだろうと考えていただろう。だから「凱旋」などという見出しまでが使われた。しかし、日本のプロサッカーは成熟した。クラブとサポーターの絆は、この25年間でとてつもなく太く強固なものになっていた。過去の功績や選手個人のキャラクターも大切だが、愛するクラブを守りたい絆は、クラブを傷つける発言を続ける者に我慢ならなかった。そこにメディアは気づいていなかった。そして、ピッチ上のプレーだけがプロサッカーではない。オフザピッチも含めて、全てがプロサッカーだということを、この25年間で私たちは学んできた。だが、なぜか不思議なことに、欧州生活の長い偉大な10番だと言われた選手は気がついていなかったようだ・・・いや、自分自身の希望する世界観を維持するためには、現実に気づきたくなかったのだろう。もし、中村俊輔が指導者としてトリコロールに戻る希望を持っていたとしたら、大きな過ちを犯した。おそらく、それを中村俊輔が認めるには長い時間を要するだろう。

トリコロールは勝利した。激しい守備を免除された中村俊輔は10番のプレーを楽しんだ。ババを引いたのはジュビロ磐田だけだった。
ところで、松井大輔はどうしたのだろう。

<試合後のコメントはこちらをご覧ください。>

<様々な目線から捉えた試合>

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