Jリーグ2階の目線2017 横浜2-1大宮

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ゴールドカップのキュラソー代表に選ばれたマルティノスはチームを離れる。そのせいか、いつもの数段上の気迫を感じる。痛がらないどころか倒れもしない。ゴールを自らの脚で奪い取ってやるという気迫が見える。大宮のディフェンダーは左脚を封じたつもりだっただろう。ところが、振り抜いたのは右脚。ゴールネットは一瞬で揺れた。

「うぉーーーーー!!!」
「決めた!!」
「右脚かよ!!!」

ぎっしりと詰まったアウェイスタンドが揺れる。ちょうど隣の野球場の掲示板に大歓声が反響する。続いて魅せたのは新戦力の山中。

「シュートだ!シュートだ!シュートだ!」

3回目の叫びの瞬間に、放たれた弾丸がゴールに突き刺さる。

「すげーーーーー!!」
「撃ったぁーーーーーー!」
「よーし!!!」

氷川神社の敷地だった、このスタジアムで、トリコロールは、常に見えない敵の力を感じて闘っていた。だが、今のトリコロールには、過去の縛りは無関係だ。過去の勝てなかった大宮アウェイの呪縛を感じない。なぜなら、既存の概念にとらわれない、トリコロールを変えていく左サイドの2人が決めたからだ。直後にピンチが1つ。何度も揺さぶられていたセットプレーからの失点が1つ。しかし、慌てることはなかった。落ち着いて試合を締めた。ケイマンが学に気を使いすぎるがあまりにズッコケたこと以外は、見事に試合を進め切った。「降格候補なんで」などとサポーターは控えめに語っていたが、シーズン半ばにして勝ち点は30を越えた。毎試合、新しい発見がある。驚きがある。

心配事があるとしたら、やはり天野だ。試合後のコメントとはあまりにギャップのある実際のプレー。彼には、おそらく自覚がない。裏を狙いたいがあまりに、扇原、中町から楔のパスを受けるための動きがない。無意識に、敵を背負ってパスを受けることを避けてしまい、前を向いてプレーしたいのだろう。だから、天野はトップ下ではなくシーズン開幕当初は中盤の底で起用されてきた。今はワントップの下だ。厳しいマークに苦しみながら前を向くのは、このポジションの義務だ。それをやらなければ、扇原と中町にとっては、目の前にあるはずのパスの選択肢が減ることを意味する。ここが機能すれば、トリコロールの攻撃は、もっと早く、もっと激しく・・・そして、ウーゴ・ヴィエラもプレーしやすくなるはずだ。技術はあるのだ。天野には気づいてほしい。

試合前の選手紹介で聞こえないくらいの音量で読まれる選手紹介。

「大宮の選手紹介になったとたんにボリュームアップするんじゃねーだろうな。」
特攻野郎Aチームのテーマ曲が流れ、大きくなる音量。
「ほら、みたことか。」
「器がちっちぇーな。こういうことやるから勝てないんだよ。」

逆に、トリコロールには、名門の雰囲気が帰ってきた。名門の名に恥じぬ魅力を発揮しようと、選手が全力でプレーする。新しい風を新戦力がクラブに送り込んでくる。そして、天野、中町、扇原が中央を締めて伝統の堅い守備が蘇った。伝統と革新が噛み合う。ただの古豪の雰囲気ではない。この日は、前半を見れば、けっして良い試合ではない。得点の気配も感じなかった。それでも、後半に2得点して、しっかりと勝利した。凌いで勝てる力もついてきた。トリコロールは上を目指せる。手応えを感じる一戦だった。

<試合後のコメントはこちらをご覧ください。>

<様々な目線から捉えた試合>