素晴らしい立ち上がりだ。前からボールを奪いに行く。守備の連動が美しく、次から次へのトリコロールの選手が柏の選手に近づいて圧力をかけていく。ボールが下がる。拍手と歓声。奪い取る。声援が高まる。試合開始直前に大コールを受けて深い礼を返した山中がサイドを駆け上がる。ボールがこぼれて学の前に。ここで外からカーブをかけたシュートの軌道はゴールマウスに向かっていく。

絶叫し、飛び跳ね、隣の仲間と抱き合い・・・浴衣の帯が一瞬で緩んだサポーターは足元がはだける悲劇を防止するために、一瞬の冷静を取り戻す。だが、興奮は冷めない。再びの絶叫。

試合が進むにつれて口々に感想が漏れる。
「やればできるんじゃん。」
「前節が悔やまれる。」
「ぜんぜん、守備の位置の高さが違う。」
「なぜ、これを前節にできなかったのか。」
「あれが、無敗、無失点のプレッシャーだったのか・・・。」

しかし、選手から余裕が感じられるかといえば、そうでもない。学はスローインの判定にクレームをつける。そこから流れが悪くなり押し込まれる。前半の、唯一の悪い時間帯だった。木村さんはアドバンテージの取り方が上手くない主審だ。
「止めないでくれよー!」
この試合3度目だ。
「きっと、木村さんは、前節のウチの試合を見たんだろうな。」
「ここで流しても、チャンスにならないでしょって。」
「どーせ、すぐに下げるんでしょって。」

上々の前半。やりたいことができてきた。大きなピンチも与えていない。これならば、前節のショックを払拭する良い結果を残してくれる、誰もがそう思った。だが、Jリーグは甘くはなかった。

ケイマンが縦パスを前で収める。柏の最終ラインを追う。前半にできていたプレーが、後半は影をひそめる。高い位置でプレッシャーをかけてくる柏に押し込まれる。後半は学が前を向いてボールを持ち、そして山中が外を追い越して、空いたペナルティーエリア内のスペースに天野が侵入するとチャンスが生まれる。だがそれだけだった。人数をかけて2点目を奪うという意図を感じられるシーンが記憶に残らない。

柏の2枚目の選手交代が裏目に出て、クリスティアーノがサイドへ、伊東がサイドバックに移ると、余裕を持って試合をコントロールする時間が生まれた。ここでモンバエルツ監督が打った選手交代はケイマンを下げて喜田の投入。天野をワントップに置くという、過去に見たことのないゼロトップ布陣だった。しかし、トップにいるはずの天野が、柏の縦パスについて下がって行ってしまい、ケイマンが行っていたような前からの守備を出来ずに柏の最終ラインからの自由な配給を許すなど、ピッチ上はギクシャクし、明らかに不慣れを伝えている。柏が息を吹き返す。

その6分後に、前からの守備を一人で受け持っていた喜田が、何を考えたのか焦ってか、ボールを奪い取ろうという守備をしてしまいFKから失点。
「シュートを撃たせない守備だけでよかったのに・・・。」

「ウーゴを入れろ!!」
試合再開となり、腕組みで悩むように立っていたモンバエルツ監督だが・・・。
「あっ、座った。」
動くことはなかった。

残念だが、最後のビッグチャンスに、学はシュートを撃つチャンスが2度あった。だが、撃つ決断をできなかった。日本代表GKの中村の見えない力に屈した。

勝てなかった。2点目を奪い取ろうとする強い意志を見せず、後半はシュート1本だったのだから、この引き分けは、妥当な結果であったと認めざるを得ない。「運が良ければ2点目を」が全ての試合で通用するわけではない。優勝を狙うならば負け試合。残留を目指すならば勝ち試合。ACL狙いならば引き分け試合。この試合が、3つのうちのどれに相当するのかは、サポーターの立場であれば答えは明確だろう。さあ、まだ残り試合は沢山ある。だが開く勝ち点差。ここからの選択は難しくなった。優勝を目指すサッカーを求めるのか、クラブや監督の発言にあるように優勝ではなくACLを目指すのか。布陣もサッカーのやり方も、目指すゴールで変わってくる。

この日の前半は素晴らしかった。特に、川崎戦に先発しなかった選手のパフォーマンスは素晴らしかった。今シーズンの素晴らしい歩みを止めるか、見事なコンビネーションを錆びつかせるか、それとも花を咲かせるか・・・それは、次節からの選手の心次第だ。監督は優勝を目指した采配をしてこないだろう。では、サポーターは・・・優勝を目指して応援するんじゃないかな。その方が楽しい。私は、そのつもりだ。

<試合後のコメントはこちらをご覧ください。>

<様々な目線から捉えた試合>