Jリーグ2階の目線2017 横浜3-2鹿島


試合終了の笛が鳴り、大歓声とともにスタンドは総立ち。拳を突き上げ、抱き合い、涙を流す。激しい試合は終わった。私たちのリーグ戦は終わっていない。優勝の可能性は、僅かに残っているし、目標だったACL圏内の3位に浮上した。浮上したといえば天野。前節の90分間に渡る消極的なプレーは見られず、強気のチャレンジで1ゴール1アシスト。守備にも大きく貢献し、この大きな勝利を私たちに引き寄せた。前節の後の多くの批判で、本人も考えるところがあったであろう。上手さに怖さが加わったプレーぶりだった。

「頼む!味方に当ててくれ!」
天野のコーナーキックに対する希望は、最低限のところから始まった。しかし、私たちが得たのは、試合開始早々の、大きな大きな先制点。天野のいつものコーナーキックは、伊藤翔がゴールに撃ち込んた。さらに、直後に天野がボールを植田から奪取し、迷いなくシュート。しかも、コースは鹿島の選手がスライディングをしてくる狭いコース。強気のシュートは曽ヶ端の逆を突いて、見事に決まる。

「天野できる子!!」
「あまのーーーーー!」
「素晴らしい!」

スタンドのテンションが上がる。豪雨の中とは思えないほどの大声援。
「急ぐな。」
「ゆっくり回せ!」
反撃する鹿島のハイペースに付き合ってはならない。
「いつものようにチンタラやれ!」

主導権を握るとトリコロールは強い。バブンスキーが鹿島を翻弄する。そして、バブンスキーが左サイドにいると、天野がサイドに流れてこないのが良い。だが、気になるのはサイドの守備。鹿島の仕掛けは早い。特に、両サイドに長い距離で斜めに入れてくるグラウンダーの縦パス。これを入れられると中町が走らされる。
「これ、中町、最後までもつのか?」
「喜田と中町は、かなりキツイな。」
ところが、前半の途中で動きが落ちたのはバブンスキーだった。
「電池が・・・。」
「試合から離れていると、こればっかりはどうにもならないからな。」

リードしているが油断ならない。相手は鹿島だ。強度、スピード、とにかくレベルが違う。強い。このまま、トリコロールが主導権を握ったままで試合を終えられるわけがない。それだけに、前半を2点リードで折り返したかった。ところが、ここで隙を見せてしまう。天野が蹴られピッチで寝ている間に攻勢を許し失点。トリコロールの甘さが鹿島に付け入る隙を見せてしまう。
(天野は1ゴール1アシストの活躍等により「公式睡眠アドバイザー」である「まくらぼ」からの表彰を受けた。)

後半開始早々、緩い入り。パススピードは、鹿島と大きく違う。完全にペースを握られる。だが、このリードを守りぬかなければならない。スタンドの声援は、いつもよりも大きい。試合開始早々からのリード、トリコロールギャラクシーの興奮・・・。アツく選手を後押しする。だが、徐々に受けに回る。そうなれば鹿島は小さな采配のミスすら見逃さない。コーナーキックのタイミングでの選手交代。バブンスキーはゴール前が守備の受持ちエリアではなかった。だから、交代もありだと思った。しかし、バブンスキーに代わって扇原はピッチに入るとゴール前へ。ベンチからの伝令か、他の選手に指示を出す。マークの担当が、これまでと変わる。ちょっとしたズレが生まれる。そして、鹿島は扇原の前にコーナーキックを蹴り込んできた。さすがだ。痛恨の失点。

試合を決めたのは、月並みのセリフではあるが、選手の頑張りだった。何度でもダッシュを繰り返す山中が絶妙なスルーパスを送り込み、横からスペースに入ってきた遠藤がターンし、倒れこみながらシュート。その瞬間にスタンドは爆発したかのような騒ぎになり、雪崩を打って人が倒れた。怪我人が出なかったのが不思議なくらいの大騒乱。絶叫する。この時点で、今日は、何回、泣いたのだろう。

大変なのは、ここから。鹿島の猛攻が強まる。サイドのケアのために栗原を入れて最終ラインを5枚に。スペースを埋める。中盤と前線には人が少ない。伊藤翔、遠藤、中町、喜田らが走る。中でも、扇原のプレーは素晴らしく、たった一つのファールをもらっただけでもスタンドからは立ち上がっての拍手が起きる。ドリブルで前にボールを運び、後ろにパスをするふりを何度かした上でドリブルスピードを緩めてファールをもらって吹っ飛ぶ。
「さすがだ!」
「素晴らしい!」
「経験してきた修羅場が違う。」
突破されて後ろから追いかけっこになった中澤は、いつ掴んでファールで止めるのかと思っていたら、味方との連携で突破を食い止め、しかも、中澤がファールを食らって相手にカードが出るという神業も披露。飯倉のスーパービッグセーブも鮮烈な記憶。不慣れなポジションにミスすることなく冷静にプレーし続けた下平。潰し合いに負けなかったデゲネク。普通の選手であれば担架で運び出されていたに違いない金崎の体当たりにも耐えて、鼻血を出しながら立ち上がった栗原。「舐められたら失点する。けっして引かない。」という決意を感じた。

「返せ!」
「引くな!」
「行け!」
「上げろ!」
「倒れるな!」

熱を帯びた声が飛び、We Are Marinosを歌う。飯倉への声援はスタジアムを一つにする。そして、西村さんの笛。試合終了。大歓声とともにスタンドは総立ち。拳を突き上げ、抱き合い、涙を流す。激しい試合は終わった。

気がつけば、オリジナル10で降格を経験せずにJ1の舞台で戦い続けているのは鹿島とトリコロールだけ。鹿島戦でステージ優勝を決めたこともあった。しかし、鹿島戦は苦手中の苦手というより、すでに獲得タイトル数でも追い抜かれた。スタジアムに入るまでは「クラシック」というフレーズに、若干の違和感があった。「クラシック」などという関係を結ぶことするおこがましいと感じた。だが、試合前に上映された動画で、屈辱にまみれた鹿島スタジアムからの帰路の思い出と併せて苦々しい記憶の数々がよみがえり、サポーターは「負けてなるものか」という思いを強くした。その思いは、応援をパワーアップする燃料になった。激しい試合を制した。この素晴らしい試合のお膳立てをしてくれたクラブ、両クラブの関係者、選手、そして、見事なジャッジで円滑に試合を進めてくれた西村さんら審判団、さらには、これまでの両クラブの歴史を作ってきた諸先輩に感謝したい。

1992年9月23日、国立競技場。今から25年前の初めての鹿島との対決は4-3の激闘だった。このカード、来年からは胸を張って「クラシック」と言えそうな気がする。

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<様々な目線から捉えた試合>

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