サポ論マリーシア感情的サポ論

他クラブサポーターには理解されにくい、マリノスサポーターの齋藤学移籍への反発はなぜか?マリーシア感情的サポ論


横浜F・マリノスで10番を背負った齋藤学が川崎フロンターレに移籍した。この移籍と移籍決定後の齋藤学のコメントに対して、サポーターやサッカージャーナリストから、多くの意見が発信されている。だが、この移籍の当事者である川崎フロンターレサポーターであっても、なぜ、ここまで横浜F・マリノスサポーターが反発するのかを理解しにくい。そこで、横浜F・マリノスサポーター側から見た移籍の経緯についてまとめてみた。

この移籍は、今後、各クラブでも発生する「(移籍金)ゼロ円移籍」によるトラブルの先行事例として記憶されるだろう。DAZNマネーにより、Jリーグには年間で10億円の補強をできるクラブが存在することになった。つまり、どのクラブの主力選手も、突然に、好条件を提示したクラブから引き抜かれる可能性があるということだ。各クラブは、引き抜きを防止することは難しい。これからの時代は、欧州と同じように、引き抜きをされた場合の損害を最小限にとどめる、もしくは、引き抜きによって主力選手を失っても、その損出を上回る利益を手にすることができる準備が必要となる。そんな契機となる移籍事例だ。

今回の移籍を横浜F・マリノスサポーターが問題視しているのは、移籍に至るまでの過去1年間の経緯についてが中心だ。前提として、横浜F・マリノスの主力選手のほとんどは複数年契約で、中には4年契約の選手もいることを頭に入れておかなければならない。報道によれば、同時期に浦和レッズへ移籍したマルティノスの移籍金(契約期間中の移籍による違約金)は3億円以上とされている。主力選手を引き抜かれたが、横浜F・マリノスは利益を確保している。これはマルティノスが複数年契約をしていたからだ。もし、マルティノスが契約満了で契約期間を終えるタイミングでの移籍だったら、移籍金(契約期間中の移籍による違約金)を浦和レッズは支払う必要がなかった。いわゆる「(移籍金)ゼロ円移籍」となる。

一年前のことを振り返ってみよう。齋藤学側はシーズン開幕ギリギリまで川崎フロンターレへの移籍をほのめかしながら横浜F・マリノスとの契約交渉を継続。当時は、中村俊輔の移籍問題がトラブル化しており、中村・齋藤の2枚看板を同時に失いたくなかった横浜F・マリノスは齋藤学側に譲歩し、未契約ながら「練習生」として齋藤学の練習参加を許し、契約交渉を並行して進めた。最終的には契約更新。そこで齋藤学の背番号10とキャプテン就任が発表された。しかし、この契約が1年契約であったことが1年後になって判った。つまり、1年後の「(移籍金)ゼロ円移籍」が現実化したことで、実際は1年前から1年契約による契約切れで場合によっては「(移籍金)ゼロ円移籍」をできる計画があったであろう「クラブ側が弱みに付け込まれた構図」が明らかになったことでサポーターが反発したという流れなのだ。当然のこと、また、その移籍先が、かねてから齋藤学が希望していた欧州のクラブではなく、一年前に移籍の天秤にかけていた川崎フロンターレであったことが、怒りの火に油を注いだ。移籍報道の中に「恩を仇で返す」という表現があるが、これは、隣町のクラブという関係性や、齋藤学が下部組織出身であるということよりも、一年前の譲歩に対する裏切りであるという印象が、横浜F・マリノスサポーター側には強い。

なお、移籍の際に所属クラブに悪印象を与える情報発信力に優れたことで有名な代理人のロベルト佃が、今回も齋藤側の代理人であることも重要な要素の一つだ。一年前に中村俊輔、榎本哲也が横浜F・マリノスから移籍。移籍決定前後に、横浜F・マリノスのクラブ運営を問題視する情報発信が相次いだ。また、遡ること9年前の2009年に移籍の発表直前に中村俊輔が方針を転換し、エスパニョールへの移籍を敢行。横浜F・マリノスの不手際ではないかという記事がメディアに大量に掲載された。特別仕様のユニフォームを用意し、地上波での生放送を組んでいたこともあり、横浜F・マリノスには大打撃。社長辞任にまで至る大事件となった。これらの事件を起こした選手の代理人は全てがロベルト佃。それゆえ、今回の齋藤学の移籍決定の際にも、横浜F・マリノスのクラブ価値低下につながる情報発信が齋藤学側から行われることを横浜F・マリノスサポーターは恐れた。

そのような経緯があるため、齋藤学を快く川崎フロンターレに送り出そうという声は極めて少数派となっている。横浜F・マリノスは、グローバルに活動しているサッカー事業グループであるCFG(シティ・フットボール・グループ)が経営に参加し、イングランド流の極めて客観的な選手評価を開始ししている。そのため、旧態依然とした選手とクラブとの関係を望む選手や代理人とは、評価やクラブ運営の方法を巡って衝突した。一年前の中村俊輔の移籍トラブルを通して、横浜F・マリノスサポーターは多くの経験をし、愛するクラブの将来と、選手契約のあり方について、欧州基準の考え方を学んだ。それゆえに、横浜F・マリノスサポーターの間では、驚くほどに、今回の移籍をめぐる意見に衝突が生まれるシーンが少ない。課題と解決方法がサポーターの間で共有されているのだ。Jリーグでは、今後、横浜F・マリノス以外のクラブで、同様の、契約期間を巡るトラブルが発生するかもしれない。齋藤学の移籍トラブルは先行事例であり。今後の、参考となるだろう。

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