試合開始前にピッチに散らばる選手たち。黒髪の小林はバックスタンドを見上げる。スタンドの表情を一瞬確認してか、拍手する。バックスタンドからも拍手で答える。相互に健闘を讃える爽やかな春のシーン。ところが、試合は、イタリア人の監督らしい、潰しにかかるサッカーで肉弾戦と化した。

「まさか、Jリーグでこんなサッカーを見ることになるとは・・・。」
「こりゃマンマークで詰めてきているじゃないか。」
「さすがはイタリア人はやることが違うな。」

中盤の選手には、タイミングにもよるが、ほぼマンツーマンの厳しいマーク。狭い局面で自由を奪おうとする鳥栖の戦術。これをやり過ごすことは、それほど難しいこととは感じなかったのだが、ピッチの中の感情は、外とは違い、相当苦しかったようだ。ポイントは扇原。この試合に関しては、全てが彼に起因する。

「扇原だとこうなっちゃうだろうなー、と想像した通りになってしまうとは・・・。」
「パスを受けてから出しどころを考えている感じ。」

中盤に数的優位を作って素早いパスで翻弄して、相手のディフェンスラインの裏を狙っていくはずが、時間をかけてしまう。そして、昨年まで通りにサイドに流れていてしまう。運ぶわけではない、ただ無駄に時間を過ごしてしまうドリブル。イバルボ、原川、小野といった攻撃力に才能を持つ選手たちが体を張って仕掛けてくる。中町を中心に応戦する。

解決策としてバブンスキーが投入され、前節までの素早い配給を復活させる。しかし、サイドからの攻めに偏重し、その様は、まるで昨シーンまでのよう。残念ながら、終盤の反撃に転じた時間帯では、扇原はピッチ上から存在感を消去された。

では、扇原については絶望的なのか?そうではない。彼のプレーを絶望視するのであれば、対応策は単純だった。キャンプでポジション経験のある中町がアンカーの役割を担えばよかったはずだ。しかし、中町はベンチに下がった。おそらく、中町がアンカーを担っては未来がない。扇原に、このポジションをやらせたいはずだ。扇原の奮起に期待しよう。まだ挑戦ははじまったばかりだ。

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