前半は勇猛果敢ではなかった。外に逃げるパスばかりだった。杉本が2つの大きなミスを犯し2失点。そして、ルーキーの西山が巻き添えを食った。失点にはならなかったものの、杉本がボールから目を離してゴール前に走って戻るとシュートがグラウンダーで飛んできて、杉山をボールが追い抜いていくという珍しいシーンもあった。全く何も出来なかった前半が終わると、いつもはクールな下平が前身で怒りのオーラを発散していた。

「お話にならない。」
「こんなサッカーしか出来ないんじゃ、今日のスタメンは、夏には、みんな放出されるぞ。」

ハーフタイムが終わり選手がピッチに登場する。
「監督、怒りの2枚替えだな。」
「西山が交代するのは仕方ないな。普通のパスすら出来なくなっていたし。」
「でも、センターバックはどうするんだ?」

前半の優柔不断なやり方を断ち切り、本来のやりたかったサッカーを蘇らせるために、監督が選んだのは「ゼロトップ」ならぬ「ゼロセンターバック」だった。本来はサイドバックで攻撃的な仕事を出来る金井と、前半に怒りのオーラを発散していた下平がセンターバック。左サイドバックには遠藤。

勇猛果敢なサッカーが始まった。ピッチ上を支配したのは下平だった。アップテンポな攻撃の起点となる。まず特徴は、余程の必要性がなければ、パスはアンカーを経由しない強気の配給だ。早いタイミングで縦パスを入れる。ウイングが開いていることもあり、縦パスを入れるのはサイドへではなく中央かインサイドレーンへ。無駄なパスが無い。展開はシンプルになる。

最も驚かされたのは仲川だった。「ストライカーとしては物足りなさはあるがアグレッシブな姿勢は評価したい」といった適性ポジションの見極めに困る選手だった仲川はもういない。タッチライン際に立つ仲川は、完全にサイドアタッカーに変身していた。後ろからのパスを、左脚で前に押し出してトラップして縦に突破を図るか?右脚でインサイドに折り返して味方からの壁パスのリターンをもらうか?姿勢からは見分けがつかない。対面するガスの選手にはやっかないな存在となった。しかも速い。単独で突破をできる上に、そこに遠藤が絡んでくる。

そして、監督のやりたいサッカーに忠実に挑戦し続けるのは山田と吉尾。インサイドレーンで縦パスを入れられるスペースを創り出す動きに休みがない。こうなれば、中町は、中盤を黒く締めるだけで良い。全ての選手が躍動する。逃げの前半が嘘のように肉弾戦を挑み、ボールを奪い返す。特に、久保に対しては過剰なくらいのフィジカルコンタクトで圧力を掛ける。

2つの得点は「これぞ2018年のトリコロール」。手数をかけず、中央を突いて、サイドにおびき出した上でとどめのシュートを撃ち込む。いずれも感動的なボールの流れ。選手たちは自信を取り戻した。スタンドは、自分たちが目指すスタイルが間違っていないことを確信した。ゴールの真裏から見ると、ファイブレーンの美しい展開もよく分かった。

試合後は We are Marinos の大合唱。私たちは勝者のように誇り高く歌い上げた。ガスサポーターは敗者のようにうな垂れた。グループステージ突破に向けて小さな一歩前進。グループ首位を守った。そして、監督の目指すサッカーを、後半はしっかりと表現できた。このメンバーの中からリーグ戦メンバー入りする選手もいるだろう。トリコロールは、この引き分けで、勝ち点以上の大きな成果を得た。

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<様々な目線から捉えた試合>