Jリーグ ルヴァンカップ2階の目線2018横浜1-1神戸

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神戸のホームゲームは、とても雰囲気が良い。コンパクトで観戦しやすいスタジアムの構造。そして、Jリーグで随一のマニアックな選曲。

「Football’s coming home」という文字を大きくビジョンに映し出してかかる曲は「Three Lions」。
It’s coming home,
It’s coming home,
It’s coming,
Football’s coming home
帰ってくるぞ
帰ってくるぞ
もう来るぞ
フットボールがホームに帰ってくる

そして、もう一つ。何度も使用されたクラシカルな曲は、かつては日本の唯一のサッカー番組だった「三菱ダイヤモンドサッカー」のテーマ曲。そして、驚かされたのはルヴァンカップのアンセムの使用方法。通常は選手入場時に使用されるのだが、このスタジアムでは使用しない。リーグ戦と同じように選手が入場する。そして選手が入場後に場内に響くのがルヴァンカップのアンセム。UEFAチャンピオンズリーグのアンセムと同様の使用方法だ(誰もじっくりとは聞いていないのがUEFAチャンピオンズリーグとの違い)。

神戸の立場に立てば、アウェイゴールを2つ獲ってホームに帰ってきた試合。2-0で勝利すれば、通算成績が1勝1敗。得失点差が同じとなりアウェイゴールの多い神戸が勝ち抜け。アウェイゴールの妙が適用されるシチュエーションとなった。勝負は立ち上がり。10分間で主導権を握られると、勢いは神戸に傾く。

「先に点を獲れ!」
「引くな!」
「1点獲れば、この試合は終わる。」

悪くない入り方だった。神戸に前からプレッシャーをかける。引く気配はない。しかし、たった一つの軽率な謎プレーが緊迫感を高める。余裕のあるシーンで、なぜかパスをプレゼントしてしまう扇原。・・・失点。

「実に扇原らしい。」
「何をしようとしたのか解らない。」

その後は、右サイドを田中に破られ、危うく2失点目というシーンがあったが、徐々に試合の主導権を握っていく。そして、試合終了までの大きなピンチを招いたシーンは、この後は一度だけ。思考停止に陥って、誰も「やられる」と予感しいた山中が背後からボールを奪われるシーンだけだった。90分間の試合で危険だったシーンは3つしかない。

インターバルでトリコロールは進歩した。山中も松原も、神戸の攻撃に臨機応変に、それでいて原則を守りながら対応した。これまで、いまひとつ実力を発揮できなかった選手も、ポジショニングが良く、的確にボールを動かした。

「すごいなー。今日は素晴らしいよ。」
「5レーンをしっかりと使えている。」
「多分、芝生が縦に12本に分けて刈られているので、縦線でレーンがわかりやすいんじゃないですかね。」
「なるほど〜。」
「それかよ。」
と冗談が出るくらいにスムーズ。

そんな中でプリンス山田の役割が大きい。彼のパスを引き出す動きで左サイド偏重は解消した。ボールを動かすスピードも速く幅を取れるので、ポジションを崩してボールに寄ってくる選手が少なくなった。そして、時たま見せる、信じられない発想力。

前線のウーゴに高い山なりのパス。神戸の選手が触れそうで触れない。しかし、あれだけの滞空時間があれば、神戸の選手は複数でウーゴに寄ることができる。そこで手詰まりになるはずだが・・・。
「そこなのか!!!」
ウーゴが山田にパスを出す。そう!長い対空時間を使って、山田は逆サイドの前線に猛ダッシュ。ウーゴを追い越しにかかっていたのだ。ラグビーのハイパント攻撃のような発想。そんなピッチを3Dで解釈した大胆なパスワークを思いつく選手は、他にはトッティくらいしか思い出せない。そして、その奇想天外な発想を理解していたウーゴはパスを山田に出す。
「あれを解っていたウーゴも凄いや。」

シーズン開幕当初の中町を皮切りに、次々と選手が監督の目指すことを理解して実践して行く。ピッチ上で披露するプレーに新たな気づきがあり、チーム全体が次のステップに上がっていく。今シーズンの魅力が詰まった、中町から大津へのパス。大津の高速ターン。ディフェンダーの背後から飛び出してきて右足のアウトサイドでゴールネットに突き刺す弾丸シュートを放ったウーゴ。美しい。素晴らしい。

2得点が必要になった神戸は焦る。トリコロールは神戸のやる気を削ぐようなパスを回す。後手を踏んだ神戸はファールを繰り返す。これぞカップ戦。ホーム&アウェイの第2戦の闘いだ。この繰り返しになったのは、トリコロールが神戸のファールを恐れなかったからだろう。引くことなく、逃げることなく、前にボールを運び、ササっとボールを下げ、いなして見せては裏を突く。そして痛さに耐えてファールを誘発する。これぞマリーシア。次第に神戸は、ボールを追う体力を失っていった。

最後まで走り切ったトリコロール。崩れ落ちる神戸。試合終了。次のステージに進むのは我々だ。アウェイスタンドの前にやって来る選手たち。だが、表情は疲労困憊で、勝どきの腕が頭上に上がらない。試合中は、あれほどアクティブに動き回っていた選手たちは、強い日差し、高い温度と湿気、密閉性が高く無風の厳しい環境の中で、苦しさをスタンドに見せることなく90分間を闘い抜いたのだった。

プロフェッショナルを感じる試合だった。

<試合後のコメントはこちらをご覧ください。>

<様々な目線から捉えた試合>

<おまけ>