かの有名な西ドイツ代表を世界の舞台に導いた名将・ゼップ・ヘルベルガーは、このように言った。
「Nach dem Spiel ist Vor dem Spiel.」
(終了は次の始まりである)
この名言は、日本では「日本サッカーの父」と呼ばれるデットマール・クラマー氏が、東京五輪後に選手たちに
「タイムアップの笛は、次の試合へのキックオフの笛である。」
と伝えたことで有名になった。当時の通訳はコーチであり、のちに日本サッカー協会会長となる岡野俊一郎氏。

試合は終わった。紙一重の差や不運でタイトルを逃したわけではない。見せかけの「猛攻」は終盤の少しばかりの時間帯にあったものの完敗だった。貴賓席での表彰を受ける際、そして、表彰を終えてスタンドに戻ってくるとき、選手たちは悔しさを隠せない表情だった。彼らは力を出し切ることができたのか・・・。

全ては試合開始20分間の湘南の圧力に起因していた。例えば、仲川に対して飛び込まずに距離を置いたポジションをとる。ゴールキックはペナルティエリアの前に3枚を並べペナルティエリアの両脇の選手をフリーにするが次の縦パスのコースは切る。山中にパスを出させても人数をかけて縦のコースを徹底的に塞ぐ・・・。スタンドの上から見れば一目瞭然だし、文字にして書き起こして見れば当たり前のトリコロール対策だった。だが、ピッチ上の選手は決勝戦の緊張感からか、それに対応することができなかった。
「こんなはずじゃない」「やりにくい」
そんな感情だけが、スピード感のないプレー選択から漂っていた。

与えられたタスクをやり切った湘南の選手が素晴らしかった。そして、残念だがトリコロールは、そこに勝る打開策を有していない実力だったと納得するしかない。だが、落胆し力不足を嘆く必要はない。振り返ってみてほしい、今大会のトリコロールの戦いぶりを。残留争いをする波風荒い後悔の途中で、私たちは新しいトリコロールの姿を探して前進し続けてきた。

グループステージ第4節2018年4月18日(水)味の素スタジアムの感動を思い出してほしい。偽サイドバックの役割とセンターバックのあり方に試行錯誤していた時期の試合だ。1分にケイマンから失点し、38分には、あの梶山に追加点を奪われてしまう。この試合を支えたのは2得点した伊藤翔であり、最終ラインから鋭い縦パスを連発した下平匠であり、ウイングとして初めて自分のポジションを見つけ出した仲川輝人であった。得点時間は67分と84分。

残留争い真っ只中の準決勝第1戦2018年10月10日(水)カシマスタジアムの激闘を思い出してほしい。90+3分に失点し90+5分にウーゴ・ヴィエイラのゴールで勝利とアウェイゴール2点目を強奪した。グループステージから多くの選手が苦闘し、勝ち点を積み上げて立つことになった決勝戦の舞台だった。大会を通して得たものは大きい。タイトルを奪えなかったが胸を張って良い大会だった。

勝つためにタスクを与え、選手が体を張って最後までやり切った勝者湘南。圧力を受けて本来のサッカーを見失い、余所行きのサッカーをせざるを得なくなって完封されたトリコロール。見せかけの「猛攻」は、本来のやり方ではなかった。我々の歩んできた道が誤りなのではない。表彰式の最中に、何が足りなかったのかを考えれば考えるほど、私たちには目指すべき未来が見え続けているという結論に達した。課題は、依然として目の前にある。

元日、埼玉スタジアム。ミスからの失点に沈んだあの日、私たちは表彰式が始まるとスタンドを離れた。だが、今日、トリコロールと湘南の表彰式をしっかりと目に焼き付けた。大きな拍手を贈った。また、決勝戦の舞台に戻ってこよう。ここに「忘れ物」など存在しない。カップウィナーに相応しいチームになれば、必ずタイトルを獲れる。

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<様々な目線から捉えた試合>