2013年 Jリーグ2階の目線 横浜3-0浦和(日産)

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平日ナイトゲームにも関わらず30,000人が集まった日産スタジアム。僅かに5,000人程の浦和サポーターは、試合終了のホイッスルを聞くと、ブーイングも聞こえない程に静まる。スタンドに残るのはトリコロールのみ。それは幸せな時間。試合中に膝を痛めた中村大先生はインタビューに現れず心配だが、それを除けば、平日の夜に、こんな幸せな時間を満喫して良いのだろうか?と、一瞬、罪の意識を感じてしまう程だ。

映し出される3つの得点シーン。それは大人のサッカーが赤い兵隊を粉砕したことを証明している。美しい、そしてひらめきへの驚き。特に、小椋のボール奪取から強引に奪い取った先制点が大型ビジョンに再生されると、スタンドからは大きな歓声が上がる。那須は、まさか、その位置に小椋が現れるとは夢にも思わなかったのだろう。慌てふためき無惨な姿をさらした。それだけでも十分に恥ずかしいはずだが、3分後にマルキーニョスに吹き飛ばされる那須。そのシーンは、「センターバックで勝負したい」とクラブを出て行った那須よりも「センターバックを任せられない」と判断を下した我がクラブが正しかったことを証明している。そして、鹿島戦の小椋のプレーぶりが敗因ではなかったことも証明している。私たちは勝ち点3以上の大きな勝利を手にした。

「今日は小椋で勝ったのがデカい!」

前半に2点をリードして始まった後半。たった3分間で勝負はつく。まさか、8月のうちにガス戦の再現が起きようとは、誰が思っただろうか。正確に言えば、再現はされなかった。それは、鈴木啓太が堕ち行く者の舞をやめたからだ。鈴木啓太は舞を30,000人の前で披露するよりも、あっさりとシュートを中村大先生に撃たせることを選択した。つまり、撃たせまいとシュートコースを塞ぎ続けることよりも右脚で撃たせれば、まさか失点はあるまいと考えたのだ。だが、中村大先生は、そんな俗世間思考の兵隊の想像を遥かに上回るシュートを放った。簡単に、右足で。そして、サイドネットを揺らす。

 

これで勝負はついた。残り42分間は3得点の余韻を楽しむ時間となった。

「浦和は広島比率が下がると何も出来ないな。」

「じゃぁ、浦和って何なんですか!?」

攻撃のときは最前列に5人が並び、守備のときは最後列に5人が並ぶ。この独自の戦術で浦和は勝ってきた。中盤に人はいない。特に中央はがら空き。なぜ、これで勝てるのだろう?と不思議に思えてしまう。しかし勝ってきたのは、最終ラインからの試合の組み立てがあるからだ。パスの起点でもあり、最終ラインからドリブルで前にボールを進めることで他の選手と縦のポジションチェンジが起きる。それが浦和のエンジンだった。しかし、センターバックは組み立てセンスに欠ける那須。阿部ではない上に森脇が怪我で退いてしまった。いつも煙たい存在で語られる森脇だが、浦和にとっては重要なピース。そのピースの代わりは坪井では勤まらない。僅かな散発的な攻撃を除けば、ポジションを代えながらチャレンジするのは槙野と柏木だけ。他の選手は走らない。3/11が広島であれば勝負になるが2/11では勝負にならないのが、この日の浦和だったのだ。9人は、試合前の監督の言葉を忠実に守り続ける、赤い小さな兵隊だった。

トリコロールの戦士は勇敢に、かつ、クレバーに闘う。その動きは赤い小さな兵隊を圧倒し続ける。中盤が数的不利になる浦和はバックパスのオンパレード。するとスタンドからは大きな拍手。ピッチ上の選手だけではなくスタンドまでもがクレバー。そして大人。何がこの試合を左右するのかを知っている。赤い小さな兵隊たちが幼稚に見える。浦和の最終ラインでなぜかボールを回す姿に「オーレ!」の声が出る。

「ずっと回してろ!」

そこに小椋が襲いかかる。高い位置でボールを奪い取り、体力の消耗と時間の経過を考えてピッチを広く展開する。そこに突如、盛り込まれる中村大先生の驚愕の股抜きエンターテイメント!そして、中町のインサイドキックによる宇宙開発。幸せな時間だ。さいたまスタジアムでの失点の印象が強かったのか、過剰にサイドを圧倒しようとした布陣の浦和に対して、大人の対応で逆にサイドを圧倒する。そして、小椋の後ろのスペースを中村大先生や兵藤が埋める。

小林とドゥトラに綻びがない。なんといってもセンターバックが強いのだ。だから、サイドを守る選手は安心して最終ラインの中央を中澤と栗原に任せて闘える。近年、強さよりも技術のセンターバックを優先するクラブが増えている。そんばクラブには浦和の攻めは通用するだろう。しかし、私たちには通用しない。それを悟ってか、浦和サポーターは爆竹を投げずに試合を投げた。バックスタンド側のスタンドは完全に沈黙となる。

 

試合後の気分は上々。首位に復帰。次はJリーグの恥となりつつある大宮が相手だ。気を抜くことが出来ない強敵だ。

「だいたい、大宮で試合をするとろくなことがないからな。」

「勝てないし。」

「負け、雷雨、猛暑。ほんと酷い。」

「今週末は、絶対に叩きのめさなきゃな。」

 

すでに街からは浦和サポーターが消えていた。