Jリーグ2階の目線 横浜F・マリノス2-1鹿島アントラーズ

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怪物ロナウド以来の衝撃が逆転ゴールのネットを揺らした。

オリジナル10の仲間たちが次々と討ち死にし、いつの間にか The CLASSIC と銘打たれ特別な意味を持つようになったカード。27年間の平成Jリーグを振り返れば、そこには苦い思い出、歓喜の記憶が散りばめられている。試合前にその歴史が動画上映された。初のステージ優勝の嬉しさ、小村が肘打ちを喰らって悶絶した怒りも蘇る。元々は、1993年(平成5年)Jリーグの開幕カードである横浜ー読売が「クラシコ」と呼ばれ特別な一戦だったのだが、今では、もう「懐かしのカード」でしかない。この鹿島との一戦こそが The CLASSIC となり、DAZNの中継でも「伝統の一戦」という表現が何度も使われた。

札幌戦と同様に、畠中のミスから、あっという間に先制される苦しい展開。ハエの止まりそうなゆっくりとしたパスから挟み込まれてショートカウンターの餌食になった。元チームメイトの安西にチャンスを贈る畠中の恩返しだった。何をやっても通用しない前半・・・いや、何もしなかった前半といったほうが良いだろう。スペースを創る動きが乏しく「勝てる気がしない」という声まで出た。

The CLASSIC は始まりであり繋がりでもある。1992年(平成4年)のナビスコカップでの初対戦では鹿島の大場という選手が得点した。日産から鹿島に移籍した選手だった。「トリコロールの恩返し」の始まりだった。あれから27年間を経て、この試合には、自らの意思でトリコロールから鹿島に移籍した伊藤翔がいる。鹿島の守備の位置は深く、伊藤翔は攻め残りを許されているようだった。
「あれなら点を獲れるよなー。」

The CLASSIC には、平成を通して、常に一定のパターンがあった。王者は鹿島。トリコロールを罠に引きずり込むサイドの守備。芝生の上に転がるトリコロールの選手たち。汚い反則を織り交ぜてトリコロールの選手たちが冷静さを失う・・・。この試合も、その流れを踏襲して進んだ。

そんな伝統の一戦を動かしたのは仲川のゴールだった。美しく外から巻き込む軌跡でボールはゴールマウスに吸い込まれていった。一人の鹿島の選手がゴールネットに絡まる。まるで、蜘蛛の巣に絡まる哀れな汚い蛾のように。そして、仲川の前に立ちシュートコースを遮ったはずの2人の鹿島の選手は、ゴールネットが揺れるのを見た瞬間に、芝生の上にひざまづき、自らの過ちを懺悔した。

そしてクライマックスはマルコスジュニオール。4万人近くを飲み込んだ巨大スタジアムは、一瞬、息を飲んだ。何が起きたのかわからなかった。何か、魔法のようなステップと、ボディコンタクトに負けない強靭な肉体と精神力が、ギリギリのタイミングでシュートを撃たせたように感じた。だが、そのシュートが、あの狭にニアを撃ち抜いていると解るまで、ふた呼吸の思考を必要としたのだ。まるでFIFAワールドカップ2002日韓大会準決勝(平成15年)で怪物ロナウド見せたシュートのような、まさかのタイミングでのシュートだった。
「入った!!!」
「決まったの!?」
「ウォーーーーーーーーー!!!」
「すげーーーー!!!!」
歓声は Seven Nation Army と同化して、スタジアム全体に畝りを生み出していく。これぞ巨大スタジアムの底力だ。

ここから、鹿島は王者の風格で圧力を強めてくる・・・はずだった。しかし、扇原を加えたトリコロールは踏ん張る。鋭い攻めは一度だけ。終盤に鹿島が鹿島らしさを披露したのは犬飼がタッチライン際で見せた行為だけだった。アディショナルタイムにタッチライン際でウチの選手を倒し、自ら立たないと見ると押して転がして外に出そうとした行為。あれは勝利への執念だ。

The CLASSIC には、平成を通して、常に一定のパターンがあった。しかし、そのパターンを断ち切る新時代の到来の入り口を見た。The CLASSIC には、いつも苦々しく感じるシーンがあった。リードする鹿島が意図的にトリコロールの選手を挑発し、乱闘まがいの揉め事に持ち込み無駄な時間を経過させる。そして思うようにいかないままに試合終了の笛を聞くという、あのシーンを何度、カシマスタジアムで見せられたことか。そして、この試合での最終盤のタッチライン際での乱闘まがいだ。これまでの The CLASSIC とは違う。あれは全て天野が引き起こしたのだった。レアンドロのユニフォームを自ら右手で掴み引き寄せて、あたかも自分が後ろから押されているように見せかけて、左手での軽い掌底。主審の福島さんは、このトリックを見破れなかった(喜田に足の裏で蹴ってきた鹿島の選手の反則に警告を出さなかったことと並ぶ2つの大きな誤審)。そして、エキサイトした鹿島の選手がドッと集まる。大荒れの永木。当の天野は、何もなかったかのようにスススーっと後ろに下がって大揉めの両チームの選手たちを涼しい顔で眺める。あの、小笠原のお家芸を天野が披露するとは予想できなかった。次の時代の The CLASSIC は、きっと変わる。

主審の福島さんは鹿島がコーナーキックを蹴ることを許さず試合終了のホイッスル。大歓声が勝者を称える。主審を囲む鹿島の選手たち。この見苦しい幕切れこそ The CLASSIC にふさわしい。
「鹿島に勝つのは気持ちい。」
「勝てばよかろうの試合だったのだ。」

平成 The CLASSIC の集大成ともいえる要素が詰まった一戦だった。誤審、退場、ラフプレー。最後に、鹿島の反則の直後にスタンドで飛び交った野次を紹介しよう。

「汚ねえぞ鹿島!!」

「平成を通して汚ねえぞ鹿島!!」

「汚くなかったら鹿島じゃないじゃないですか!」

「だから鹿島が大好きだ!!!」

平成最初の頃。鹿島アントラーズ応援ツアーをジャックして鹿島に乗り込むマリーシア。
平成最後の試合を勝利で終える。次の時代も一緒に応援しよう。

<試合後のコメントはこちらをご覧ください。>

<様々な目線から捉えた試合>