Jリーグ2階の目線2019 横浜F・マリノス4-1ヴィッセル神戸

Pocket

難破船を蹴散らし、大海原へ針路をとったのは横浜だった。

先日、マリーシアのメンバー3人が味の素スタジアムでヴェルディの試合を観戦した。そこで試合後に、ふとしたことから、こんな会話になった。

「なんだかんだ言っても、遠藤は頑張っているよね。」

壁を突き破れず現状維持が続く、かつてのトリコロールの選手を味の素スタジアムのスタンドから見て感じた、正直な感想だった。確かに遠藤には物足りないプレーが目立つ。だが、遠藤は同じ位置に踏みとどまっているわけではない。

4万人超えとなった神戸戦。スタンドには、初観戦だというグループやカップルが目立つ。お目当てはイニエスタだろう。だが、ピッチにイニエスタはいない。ポドルスキーもいない。初観戦の彼らが、今日という日を満足に終えるにはトリコロールが、どのような試合をするかにかかっている。神戸に、その期待はできない。

ここ数試合、調子に乗りすぎたのかポジションのセオリーを無視したプレーが多すぎた広瀬、他の選手に気を使って前でプレーできなかった天野、ピッチ上にいるだけで頼られ過ぎてチームコンセプトが崩れてしまう三好(本人が悪いのではない)を外して、がらりと布陣を変えてきた。もちろん、各選手に疲れも見えるため、必勝のルヴァンカップ(水曜日)も見据えてのことだろう。

立ち上がりから積極的に仕掛ける。今一歩のところまではいく。
「そこは思い切って行って!」
決定的な仕事には至らない遠藤に焦れる。
「なんというか、今日も『ミスター65%』なんだよなー。」
「結構、数字、低いね。」

だが、遠藤の大きな仕事が待っていた。回り道することなく斜めにゴール正面へ向かうドリブル。そして、スルーパスを素早くマルコスジュニオールがシュート。
「ウォーーーーーーーー!!!」
「すげぇ!!!!」
その声は、スピーカーからの音と同化してSeven Nation Armyのメロディーになっていく。大観衆の雰囲気が最高だ。このゴールが生まれるまでは、最も大きな歓声はビジャがシュートを放つ場面で起きていた。だが、その何倍もの大歓声がトリコロールの美しい先制点を讃える。

再び、遠藤が、驚きの、そして、最も得意とするプレーで大きな仕事をやってのける。遠藤のドリブルは「速さ」よりも「スタートの良さ」だ。ワンタッチで前を向き、ディフェンダーを置き去りにしてゴールに向かって一直線。
「撃て!」
「シュート!!」
「遠藤!!!!」
「どうする!!??」
「きたーーーーーーーーーーー!!」
中に待っていたのは李忠成だった。デビュー以来、長かった遠藤のThinking Timeは、ここで終わるかもしれない。遠藤は、次のプレーをどうするか考えていたのだと思われていた。だが、遠藤は、これまでずっと、中央に待つストライカーの姿を求めていたのかもしれない。遂に中央に「待ち人来たる」。生粋のストライカーが動き直して、最も得点を奪いやすい場所に入ってきた。
「ここまで微妙だったのに2アシスト!!」
「試合を決める大仕事!!」
「素晴らしいぞ遠藤!!」

今日は遠藤の日になるはずだった。しかし、途中から入ってきた三好が、イニエスタを見にきたサッカーファンをも唸らせる技ありの2ゴール。Seven Nation Armyのメロディーに乗せる歌声は、ボリュームを上げている。バックスタンド2階も縦ノリの大盛り上がりだ。
「いかん、これではMOMが三好だぞ。」
「遠藤、不運すぎる。」
「これでは、遠藤がかわいそうだ。」
「三好は、他の試合でももらってきたから今日のMOMは渓太でも良いだろ。」
「遠藤は自分でゴールを決めるしかない。」
「決めろ!遠藤!!」
「自分で決めろ!遠藤!!」
「まだ時間はある!」
しかし、アディショナルタイムにチャンスは回ってこなかった。逆に、神戸は右からのクロスを合わせたウェリントンがゴールを奪った。だが、「自分はどういう状況だろうと、あきらめる性格ではない」とインタビューに答えたウェリントンをはじめ、神戸の選手は、誰一人として、ゴール内に転がるボールを取りに来なかった。彼らは、とっくに試合を諦めていたのだ(諦めているのだったら点獲るな)。

「神戸が、これほど大きな投資をしたのに成功しないのはスポーツ界全体にとって残念なことだ。」

先日、スポーツマーケティングの最前線で働く人物とトリコロールのサポーターが食事をした際に聞いた言葉だ。だが、予兆はあった。1試合30万円のプレミアムチケット「1day VIP ticket」の座席がビーチサイドの仮設カフェのような白いプラスティックのテーブルとイスだったのだ。トリコロールは1つの勝ち点も、1つの得失点差も諦めたくない。確かに、神戸の大失速はスポーツ界には大きな損失となるだろう。当初は、神戸の成功を願った人が多かった。だが、ここまで来たら後世に語り継がれる寓話を生み出した方が良い。三木谷オーナーをはじめサッカーを舐めた神戸には罰が降り沈没し、地道な努力を続け、日本のサッカーシーンに新しいスタイルや価値を導入したトリコロールが輝く栄光を掴むべきだ。

トリコロールは美しい
<試合後のコメントはこちらをご覧ください。>
<様々な目線から捉えた試合>