Jリーグ2階の目線2019 横浜F・マリノス4-0ジュビロ磐田

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「(新加入は)2人しかいないが、自分には7、8人の新戦力が見えている」あの時、名波が見たのは夢か幻か。

ジュビロ磐田が新体制発表会で披露できた新加入選手は期限付き移籍から復帰した選手を含めて3人だけ。そのうち2名だけが名波監督と共に登壇した。その後、補強選手の発表があるものだと誰もが思ったが、戦力に大きな変化はなくシーズンは半ばを迎えようとしている。ここまで話題になったのは偽偽サイドバックの導入くらい。多くの他クラブのサポーターが予想した通り、ジュビロ磐田は、惰性でゆっくりとくだり坂を走り続けている。

名波監督は、試合を前に「特殊な(横浜の)スタイルをどう崩すか。みんなで頭を捻った。どれくらい粘り強く守り、どれくらい相手の背後に出ていくかだと思う」と語った。誰が、どれくらい本気で、頭を捻ったのかは想像しても分からない。ピッチ上を見ても謎だった。そして、灼熱のスタンドで、おそらく20,000人くらいは首を傾げた。
「名波は、どうやって勝とうとしたのだろう・・・?」

試合開始早々に、中山とアダイウトンが前から長い距離を走って深い位置にまでボールを追いかけてくる。
「この暑い気候の中で追いかけてくれると助かる。」
「前の2人だけで追いかけてくるみたいだな。」
「これは途中交代の予定で、走れるところまで走れという監督の指示なのだろうか。」
ここまでは普通の会話だった。立ち上がりの時間帯で失点の多いトリコロールに対して、前からハメに来るのはよくあることだからだ。

「あれ!?中盤がスカスカだぞ。」
「中盤は押し上げてこないのか?」
「中盤の人数が足りなくないか?」
「最終ラインに5人いるよ!!!!!!」
どうやら磐田の布陣は5-2-3らしい。5レーンを埋めることでトリコロールの攻撃を防ごうという闘い方らしい。だから中盤の人数が少ない。

試合が止まるたびに磐田の選手が相談する。何度も何度も相談する。
「あ、最終ラインが4人になったみたい。」
「5人のままじゃないの?」
「右サイドバックが前に出て中盤のスペースを埋めるみたいだよ。」
「でも、4人になっても5人でもラインがグジャグジャに乱れているから、本当は最終ラインが何枚なのか、よくわからないよ。」

明らかにJ1レベルではない。
「これは、大量得点で勝たなきゃならない試合だぞ。」
「最終ラインを4枚にして右サイドバックが前に出て、2枚だった中盤をスペースを3枚で埋めることをやって、ボールがアタッキングサードに入ってきたら元に戻って最終ラインを5枚にするってことに、話し合いの末に決めたっぽい。」
「でも5枚にしたときに、中盤の枚数が元の2枚になるから、結局のところは試合開始直後と中盤に大差がない。」
「3から1引いたら2だろ。」
「スライドして前の3人のうちの1人が中盤に下がってくるとか、中盤を助けるルールがないから、結局のところは何も変わっていない。」
「あれだけ話し合ったのに・・・。」
「あれだな、磐田のピッチ上は日本の企業の縮図だ。」
「日本企業の会議の悪しき習慣そのもの。話し合ったことで終わり。」
「根本的な対策には手を付けるに至らない。」
「ブレストだけ?」
「あれは決める会議じゃなくて分科会なんだよ。後ろは4枚に変えました、以上!前も含めてトータルで意思決定して実行するわけじゃない。」
「縦割りか?」
「いや、ピッチを横割りだ。」

嫌な雰囲気が出てきた40分にマルコスジュニオールが技ありのゴール。待望の先制点に安堵する。
「さあ、どんどん行こうぜ。」
「磐田を楽にしてやってくれ!!」

後半に入るとゴールラッシュ。まずは、美しいカウンターからの仲川が決めた2点目。一直線にゴールを目指すドリブルとスルーパス。あのドリブルコースならば、普通は右足でシュートするので、磐田の選手は仲川の右足のシュートコースを切りに行くのだが、仲川が切り返して左足の良い場所にボールが置いた瞬間に大歓声が起きる。私たちは、あの瞬間に、仲川の過去のゴール履歴を一瞬のうちに脳裏で照合し得点を確信したのだ。ここで切り返せば得点を奪える!大歓声に見送られるように、向こう側のゴールに左足から放たれたシュートは吸い込まれていった。これぞ「ホームの応援」の姿。歓声からSeven Nation Armyへ。飛び跳ねて絶叫する。

この試合をコントロールしていたティーラトンのクロスを大井がハンドリングで止めてPK。エジカルジュニオが3点目を奪う。そういえば、試合前にタイからやってきたファンと会話した。彼はパタヤのユニフォームを着ていた。

4点目は、またしても完全に崩してのエジカルジュニオ。どのゴールも得点に至るまでのプロセスが美しい。偶然によって生まれた得点ではない。クラブが一丸となって努力を積み上げてきたことによって生まれたゴールだ。多くの苦しみを共に乗り越え、多くの決断をし、新しい仲間を加え、クラブ全体で前進しているトリコロールに相応しいゴールラッシュだった。

トリコロールには、様々なコミュニケーションが生まれ、一つの目標に向かって進んでいる。選手も、スタッフも、サポーターも、新しい仲間を増やし、意見を交換しながら、新しいトリコロール像を創出し続けている。逆に、排他的な小さなコミュニティの限界を磐田は私たちに教えてくれている。仲良しの導く先には地獄が続く。

「ヴェルディは潰れません!これだけのパワーがあればまた(J1復帰)できます。みんなの力があれば大丈夫。これからもヴェルディを愛してください。」と服部年宏(当時、ヴェルディの主将)が、降格決定後の挨拶で絶叫してから10年と半年が経とうとしている。降格の決定打は福西の肘打ち退場だった。

名波さんは悪くない。

ピッチ上は暑かった13時キックオフ
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<様々な目線から捉えた試合>