Jリーグ2階の目線2019 横浜F・マリノス2-0ヴィッセル神戸

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神戸の動きが落ちるのは必然だったが、メンタルまで落ちるとは意外だった。

JリーグでNo.1の金持ちクラブ。スペインから世界的著名選手を獲得。しかし、横浜でのトリコロールのホームゲームにやって来たのはビジャだけ。元ドイツ代表のポドルスキーも来なかった。イニエスタを見るならば、アウェイに行くしかない、という気持ちも後押しし、ビジタースタンドは超満員となった。

チケット価格を値上げしすぎたせいか、ヴィッセル側のゴール裏スタンドには空席が目立つ。メインスタンドは2/3弱程度の入りだろうか。全体の1/3は空席となった。それでも、ビジター席は超満員。今のトリコロールは応援のしがいがあるのだ。私たちは関西にだって行きたくなる。

試合開始直後は神戸が442の布陣。左の中盤にイニエスタ。右の中盤に古橋。前からプレッシャーをかける。しかし、うまくいかない。古橋がパギにまでプレッシャーをかけようと最前列にまでボールを追ってくる。これをトリコロールは交わし、本来であれば古橋がいなければならない場所から反撃に転じる。このプレーで、この試合の流れは、だいたい決まったようなものだ。その後、神戸は前線を3人に修正し、古橋が前で守備するときの穴を埋める(442では埋める動きがなかった)。この時間帯の神戸の積極性を評価する声は多い。だが、スタンドからの見立ては違った。
「どーせ続かないって。」
「そのうち山口蛍のところから崩れるって。」

トリコロールはクレバーなプレー、いや、マリーシアが備わった。焦ることなくパスを回す。シュート本数は少なくても、それで良かった。焦りをあらわにしていくのは神戸の方で、手に取るように、それがわかった。その流れからの得点は「素晴らしい」というよりも「美しい」。即座に神戸は気落ちする。中でも失点に繋がるミスをしてしまった前川の落ち込みようは顕著で、リスタートを直接、タッチに蹴り出してしまう。
「ナイーブなGKだなー。」
「お父さん譲りですね。」
お父さんも日本代表で活躍した著名なGKだが、語り継がれる広島アジアカップの失態を始め、窮地に弱かった。トリコロールにとっては、とても助かる。2点目の飛び出しはナイーブの極み。酷すぎた。
「まだPKは決まっていないが言わせてくれ!前川はすげーぞ!!」
「まだ決まっていない!」
『槙野がいないから判定なら大丈夫だ。」

前半のトピックスといえば、パギのおいしい思い出作りだろう。試合開始早々に選手が倒れプレーが止まる。プレー再開でボールを返すのはビジャ。これが、ものすごく美しい回転と弾道のボールだった。これをしっかりと受けて止めるパギ。
「いやーパギはおいしいなー。まさかビジャのパスを受けられるなんてね。」
「今のプレーだけで20年後も自慢できる。」

結果を先に書けば、この試合は楽勝だった。新聞報道やDAZNでは伝わりにくいが完勝と言って良い。神戸は、序盤から焦り続け、パスミスし、消耗を増していった。それだけに、得点に結びつかないイニエスタやビジャの働きっぷり見物は、実に楽しかった。イニエスタの左サイドでのワールドクラスのドリブル、イニエスタのゴール前でのワールドクラスの空振り、イニエスタの仲川に対するワールドクラスの謝罪。特に、ゆっくりと寝ていたかった仲川は、悪いことをしたわけではないイニエスタから謝られ手を差し伸べられたら立ち上がるしかない。時計は止まらなかった。

時計といえば
「わざとやっているんじゃねーの?」
と声が出たリスタートの再三のやり直し。今村さんは、余計なところで厳しい(そしてアドバンテージをとるのは下手)。微妙にボールが静止していないタイミングでリスタートしてやり直しを命じられる。プレー再開に時間を要し、神戸サポーターが怒る。これを繰り返した。さらには、パギが水を飲むと神戸サポーターが激怒。アウェイの素晴らしいムードをつくり続けた。

何から何まで、トリコロールはふてぶてしかった。そして基本を守った。若い選手も経験を積み重ねた。ポジションをしっかりと維持し、リスクを考えた上で、奪えそうであればゴール前にボールを運ぶ。チアゴが退場になっても、大ピンチが到来することはなかった。特に、意識の徹底を感じたのはPK獲得の直後。蹴るのはマルコスジュニオールに任せ、センターサークル付近でミーティングを開始。その結果、パギに加えて4人が深い位置に残った。

「さっきから伊藤が、ずっとラインを気にしているんだよ。何度も何度も左右を見ている。あれが気になる。」
突然に投入された伊藤。移籍から数日しか経っていない。それが、10人のスクランブル体制で出番を迎える。
「いや、どうやら伊藤がラインコントロールしているみたいだ。」
「なんか、ウチは、また、すげーの獲っちゃったみたいだな。」
10人にはなったが、ディフェンスラインは下がらず、ポジションは崩さず、何事もなかったかのように普通に試合は進んだ。あっという間に神戸の足が止まる。そしてオフサイド連発の夏祭り。まるでトリコロールの方が人数が多いように見える。総走行距離は10人のトリコロールが11人の神戸を上回った。
「やっぱり無理していたんだよ、神戸は。」

ただ、このスタジアムの異常な蒸し暑さは、トリコロールをも消耗させた。チアゴが退場につながった扇原のミスも疲れからだろう。交代となった。続いて仲川が足を攣ってピッチから去り、さらに、マルコスジュニオールが足を攣る。それに加えてティーラトンまでも。エジカルジュニオが負傷退場しているので、もう、交代枠はない。マルコスジュニオールは、過剰にボールを追いかけたので、悪い予感があった。そして、その予感通りだった。
「やっぱり攣ったか。」
「頑張れ!」
「耐えてくれ!」
「前にいるだけでいい。なんとなく追っている感じでいればいい!」
「無理して全力で走らなくていい!とにかく頑張れ!」
声援が飛ぶ。
「ウーゴビエラくらいの守備でいいから!!!!!!」
そして、マルコスジュニオールは全速力ではないが走り続けた。

あまりに長いアディショナルタイム7分。しかし大ピンチなく終わる。完勝だ。ひときわ大きな歓声がビジタースタンドから上がり、スタジアム全体はブーイングに包まれた。神戸は、まるで数年前のトリコロールを見ているようだった。

トリコロールは変わった。強さを増した。ひ弱な「上手いだけのチーム」ではなくなった。優勝できるかどうかは、まだ分からない。だが、優勝する資格を得たことだけは間違えない。他クラブも、それを認めるだろう。

壁面がガラス張りの構造が過酷なコンディションを生み出している。
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