Jリーグ2階の目線2019 横浜F・マリノス1-2鹿島アントラーズ
鹿島は人を狂わせる。
加入したばかりの相馬は、マシュマロマンかミシュラン君のような体型で童顔ながら、トリコロールのフリーキックの助走を邪魔するための妨害を行う。名古屋から期限付き移籍が決まって、わずか1日後の試合であるのにも関わらず、相馬は躊躇なく、それをやり遂げた。
3万人近くが入るとカシマスタジアムのスタンドの圧力は強くなる。応援の力は数だ。ゴール裏の声や手拍子は遠くから時差を持って響くが、メインスタンドやバックスタンドの手拍子、歓声はダイレクトに私たちや選手に降り注いでくる。この感覚・・・久しぶりだ。トリコロールのゴール裏も、近年は記憶にない1階スタンド全開放。多くのサポーターが湖と大河を渡ってやってきた。その力は大きかったはずだが、トリコロールの応援は太鼓のリズムよりもテンポが早かった。ゴール裏の一人一人に焦りがあったのだろう。
アンジェ・ポステコグルー監督は不慣れな5バックを突然に採用し、ピッチ上は混乱。フリーな選手を生み出して失点し敗戦。逆に動けず、退場になる前の扇原を交代できなかった。退場の予兆はベンチの目の前で露呈されていたというのに。
1972年に制作されたフランスのドキュメンタリー映画「鹿島パラダイス」は高度成長期に日本の伝統的な農民が土地を手放し工場の労働者に変身して好景気に地域全体が狂っていく(資本主義のパラダイスとなっていく)様を描いている。
鹿島は古来、大和朝廷の東国経略の拠点として重要な地政を占めた。いわば、軍事拠点として紀元前からの歴史と伝統がある。この地に攻撃的な性質の人々が多く含まれることと無縁ではあるまい。
鹿島のゴールが無効と判定された後の鹿島サポーターの猛烈なブーイング。そして、ならばこちらもと仲川のゴールに執拗に抗議を続ける鹿島の選手たち。
鹿島は人を狂わせる。
だが、この土地に宿る強さを羨ましくも思う。なぜ我々は大一番に勝てないのか?なぜ、ゴールが無効と判定された直後のプレーで簡単に倒れてボールを奪われてしまうのか?なぜ、ちょっとした圧力に屈して、いつものプレーをできなくなってしまう選手がいるのか?なぜ、ムキになって自分たちのやるべきプレーを忘れてしまう選手がいるのか?
時には「頑固」と評されることもある監督が、ピッチ上の選手の決定を覆す5バックをなぜ選択してしまうのか?相馬の加入が1日前のことで対策を用意できなかったとはいえ、後ろの人数を増やす、つまり、守備のラインを下げることを選ぶとは意外だった。扇原がレッドカードを出されから、ピッチを去るまでに十分に用意した、選手同士で話し合いの時間は無駄になった。もっとも、それ以前に、前半から走らされて疲れが見え、簡単なミスをしていた扇原を交代していれば、このようなことは起きなかった。それすらもベンチは感じられなくなってしまうのか?
1993年以来、ここでは、こんな負けばかりだ。何度も憤慨して泣いた。でも、こんなに嫌な思いをしても、また行きたくなる。次こそは勝ちたいと心に誓いながら疲れて眠りに落ちる帰りのバス。狂っている。こんなことを毎年、繰り返す私たちは狂っている。鹿島・・・ここはアウェイ遠征のパラダイスだ。

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<様々な目線から捉えた試合>
勝つぞ#fmarinos pic.twitter.com/AjBbwET7b3
— 安部 僚介 (@marinos919abe) August 10, 2019
選手登場 pic.twitter.com/PMlTZwbePH
— トリコトー(@torico0155) August 10, 2019