Jリーグ2階の目線2019 横浜F・マリノス3-0サンフレッチェ広島

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この幸せな時間を創り出してくれた全ての選手に感謝したい。今季のベストゲーム。

歓声、声援、歌声、手拍子、溜息、ブーイング、悲鳴、絶叫、笑い、怒号、スタジアムには喜怒哀楽の全てがある。素直な感情表現をピッチ上の選手たちが引き出している。幸せな空間。この試合は優勝争いの生き残りをかけた直接対決のはずだった。しかし、前半の途中でそんなことはどうでもよくなった。これは善と悪との闘いだ。

広島は伝統的にフェアプレーで評判のクラブだ。今シーズンも反則ポイントはマイナスで、上位にいる。そんなクラブのスタイルを一変させる絶大な影響力を持つ選手がいる。それがアナコンダ殺法の使い手・青山だ。今季リーグ戦初先発。序盤からの汚いプレーの数々が三ツ沢のスタンドをアツくした。広島は、先制点が欲しい。粗っぽいプレーも躊躇せず、激しい一対一を挑む。そんな中で、腕を使い、足を出し、腕と首を同時に締め上げるアスカロックを狙い、青山はスタンドの憎悪を煽る。さらに、ベンチ前で城福監督が「後ろからじゃん」「ボールに行ってるよ」「フェアにやってよ」「元気でやってるじゃん」と謎の呪文を絶叫する。

お互いにタテを狙う緊迫感ある攻防。見事なテクニック。そこに負けたくない意地と意地のぶつかり合いが加わるので、抜群に面白い試合となる。怪我人の発生だけが心配だったが、前半終了前に、やっと青山にカードが出て安心する。そこから先の青山は借りてきた猫のようだった。

松原は、久々のリーグ戦出場で、さぞやりにくかっただろう。試合勘からではない。エリキ先輩の謎行動が前節と変わっていなかったからだ。

むやみやたらと中のレーンに入り大外を空にしてピンチを招く。松原が入ってくるスペースを消す。さらには、クロスを受けるタイミングをうかがっていた仲川を背後から追い抜かし仲川の進路を妨害する等々、わがまま放題だった。遂に堪忍袋の尾が切れた喜田が「外だ外だ!」と大きな身振りでエリキに指示をして、エリキを適切なポジションに追い出す。

若いGKの大迫は多くのサッカーファンに期待される日本代表選手だが、試合時間が進むにつれて、悪影響を受けて冷静さを失う。大迫にとって広島は相応しいクラブなのだろうか。のらりくらりと時間を浪費し続けるスタイルの中で、彼は、今後も、もがき続けるのだろうか。前半から、謎の時間をかけてゴールキックを蹴り続け、ブーイングと罵声を受ける。そして、後半には遂にイエローカード。さらに音量を増した四方八方からのブーイングに心を乱して直後のゴールキックをミス。このプレーが、トリコロールに傾いた勢いを決定づけた。

「流れが来るぞ!!」
「ここが勝負どころだ!」

するとなんということでしょう!エリキのポジションを気にして広島の選手が2枚、ファーサイドに足留め。ティーラトンからのスルーパスを走り込んだ遠藤が素早く折り返し仲川が一対一の競り合いをニアサイドで合わせて先制点。トリコロールらしい美しいゴールが生まれる。

続いて、ティーラトンのシュートをニアから得点にする大迫のミス。あのタイミングでシュートを撃てるティーラトンは凄いしディフェンダーに当たってコースは変わった。だが、あの距離、あのスピードのニアサイドのボールを止められないのはGKとしては致命的なミスだ。

そして迎えたPK。マテウスはエリキ先輩に託す。

「大迫ってイエローもらってたよね?」
「これ、新ルールで、もし、大迫がエリキが蹴る前に動いたらイエローだよね。」
「新ルールだと、そうなるね。」
「ということは・・・・。」
「2枚目のカードで大迫退場。」
「見たい!新ルールで2枚目もらうの見たい!」
「退場を見たい!」
「おい!大迫!エリキは良いの蹴るぞ!」
「おい!大迫!蹴る前に動け!」
「先に出ないと間に合わないぞ!」
「ゴールライン踏んでる場合じゃないぞ!」
「頑張れ大迫!!」

結局、大迫は強がって立ったものの、エリキ先輩との大した駆け引きをできず、しかも飛んだのは逆コース。トリコロールは、難なく3点目を得て勝利した。

悪役の輝く試合は白熱する。この試合の素晴らしさをサッカーを愛する全ての人に捧げたい。アウェイから乗り込んできた、悪に操られたクラブと、ホームのヒーローとの闘い。スタンドからの大きな声援、そして歓声とはっきりと意思表示するブーイング。一歩も引かない肉弾戦。やってきた謎の転校生のような助っ人。チームメイトの友情。これがリーグ戦だ。

トリコロールマーメイズの後ろにいるお姉さんの目が笑っていないのが、いつも気になる。

<試合後のコメントはこちらをご覧ください。>

<様々な目線から捉えた試合>