Jリーグ2階の目線2019 横浜F・マリノス4-1川崎フロンターレ
我々が正しい航路を進んできたことを証明した集大成の一戦。
一年前に、あなたは何をしていただろう。何を考えていただろう。思い出してみてほしい。長崎で1-0の辛勝。九州連戦の2試合目は鳥栖でフェルナンドトーレスのjベストゴールに沈んだ。J1残留を決めたのは最終節だった。プレッシャーに弱く、ここ一番に勝てない我慢のシーズン終盤だった。
そんな昨シーズンを考えれば、今シーズン開幕前にトリコロール が降格候補に挙げられるのは当然。そんなトリコロール が、残り2節の終盤戦で王者・川崎に挑んだ。ここ数年間は、互角の戦いをすることすら許してくれなかった連覇の王者だ。
「今年は真っ向勝負できるよね。」
「やっと自分たちのサッカーで川崎に挑める時がきたよ。」
「今シーズンの集大成だ。全力でぶつかれば勝てる。」
強敵を前に期待が膨らんだ。
試合が始まると川崎はファールとオフサイドを連発した。
「汚ねぇぞ川崎!」
と絶叫しながらも、内心は嬉しかった。川崎はファールをしなければ、このサッカーを止められない。試合の主導権を握ったのはトリコロール だった。そんな試合を最後に見たのは何年前だろう、思い出すことすらできない。
タッチライン側の競り合いでハンドオフ。反則ギリギリのプレーだ。
「ファールだろ!」
「またかよ!」
その直後に奪い取った3得点目は、トリコロールのサッカーに正義があることを証明した。この1点は「勝つべくして勝ったトリコロール 」の象徴であり、この試合の結果を決定づけた。
逆に川崎は自分たちのスタイルを見失う試合となった。パギを加えた最終ラインのパス回しにプレッシャーを十分にかけることができず撤退。それでいてコンパクトさが足りず、トリコロールはバイタルエリアに縦パスを通す。川崎は、ただ、なんとなくゾーンを埋めるだけの守備だった。いや、思ったような守備ができなかったのだろう。
川崎サポーターからブーイングを受けた仲川と、跨ぎフェイントなどで超人的な身体能力を発揮し始めたエリキ先輩が川崎のショートカウンターを防いだ。インテンシティの高い試合でコロコロと倒れるのは川崎の選手だった。トリコロールの選手は、どちらかというとザクっと倒されたシーンが印象に残る。喜田が、マテウスが、倒れてもすぐに立ち上がりボールを奪い返すアクションをする。縦パスのコースを切る。いつの間にか、強いチームらしい振る舞いが当たり前になっていた。ゴールを奪えば、控え選手が飛び込んでくる。力強く、そしてダイナミックに。リードしても次の得点を奪いに行く。あの、ひ弱だったトリコロールの姿は、どこにもない。
ワクワクして会話の弾んだ試合前。でも、キックオフの笛が鳴れば、フワフワしたムードもソワソワとした落ち着きのなさもなくなった。多くの仲間は、同時キックオフのガスがリードされたことを知っていた。でも、スタンドの雰囲気はいつも通りだったし、ピッチ上は、もちろん、いつも通りだった。
いや、ちょっと待てよ。
これが「いつも通り」になったのはいつからなのだろう。一年前は、こんなことは当たり前ではなかった。でも、いつ「いつも通り」が変わったのか・・・それを思い出せない。地道な努力がほんの少しずつの変化を積み重ね、いつの間にか「いつも通り」が変わっていた。気がつけば、こんなチームになってた。
次節は最終節での直接対決。「いつも通り」の試合で優勝を決めよう。「いつも通り」と書いただけで、みんな、どんな試合を目指すのかわかるよね。それが、今のトリコロールなんだ。