Jリーグ2階の目線2022 横浜F・マリノス2-2 C大阪 マスカットの謎
マスカット監督はどのようなサッカーを思い描いているのだろう
「シーズンあけましておめでとうございます」
この挨拶を始めた正確な年を覚えていないが、おそらく、もう25年くらい前のことだろう。今では、多くの人が、この挨拶を習慣にしている。今シーズンは、また、深い喜びを持って、この挨拶をすることになった。コロナ禍のJリーグ2022年シーズンが幕を開けた。皆、無事にスタジアムに足を運ぶことができた。そして、こうして2階の目線も復活した。
王座奪還を狙うトリコロールは、期待の新戦力・アンデルソン・ロペスが1得点1アシストの大活躍。西村も貪欲に得点を狙うプレーを左サイドで繰り広げ、勝ち点1を獲得した。両サイドバックが前がかりになり、素早く縦パスを入れてダイレクトに繋いで裏を取るサッカーは、優勝した2019年シーズンを彷彿とさせスタンドは大いに盛り上がった。オフ明けの開幕戦から、ファン・サポーターが望む攻撃サッカーは全開となった。
全く違う前半と後半
ただ、この試合の気がかりは、後半ではなく前半のやり方にあった。メンバーの放出、離脱、そして、マスカット監督が開幕から指揮をとる初めてのシーズンとなる。試合前に、あえて最悪の予想をすれば「仕掛けが少なく『前田大然の穴は大きかった』」と記事になることだった。これは、ファン・サポーターが、あえて想像してみれば、ほとんどの人の行き着く結論だったはずだ。
セレッソ大阪にお付き合いした前半
そんな状況での開幕戦だが、マスカット監督は「仲川、レオ・セアラ、水沼」を前線に並べてきた。足し算してみるとわかりやすい。前田大然を軸としたいてサッカーでの裏への仕掛けの量と比べて、かなり不足が生じるのは予想できる。そして、予想通り、前半は、トリコロールに積極的な素早い仕掛けはほとんどなく、中を固めるセレッソの狙い通りにパスを外に回すお付き合いをして時間を浪費した。両サイドバックもオーソドックスなポジションにとどまることが多かった。
多くの人がイメージするトリコロールらしさを印象付けた攻撃は、右サイドからのグラウンダーのクロスを入れたシーン一つだけだったと思う。右に水沼を起用する布陣はアンジェ・ポステコグルー監督のサッカーでは効果の高いオプション扱いだった。だが、もしかすると、マスカット監督の望む布陣は、縦への突破よりもパスの供給源に位置付けられる水沼の起用が基本なのだろうか。つまり、マスカット監督の最もやりたいサッカーが「前半のサッカー」なのか「後半のサッカー」なのか、それとも「どちらとも違うサッカーなのか」が解らなかった。
スタジアムから新横浜駅に歩きながらの会話も、そこに焦点が当てられた。
「ホーム開幕戦で、様子見みたいなサッカーだったのは残念だったよ。」
「やっぱり、新戦力がフィットしていないしコンディションの問題がある選手もいたから、去年のメンバーでスタメンを組んだのかな?」
「だったら、右のスタメンはエウベルでも良いよね。今日の前半とは違ったサッカーになったはずだと思うよ。」
「水沼とレオを併用すれば、どうしても裏への仕掛けには余計な時間がかかってしまうから、この布陣だと前半のようなサッカーになるのは想像できると思うのだけれど、なぜ、この布陣だったのだろう。」
「一つ考えられるのは、すぐ、水曜日に川崎戦がやってくるということだね。連戦で選手を入れ替えながら起用していくことを考えたときに、今日の組み合わせが水沼とレオの併用になった。川崎戦では違う組み合わせで臨むということ。」
「様子見だったのか、あれが希望するサッカーだったのか、ちょっと解らなかった。」
なぜ選手交代で試合は動いたのか、理由は川崎戦まで謎
アンデルソン・ロペスとエウベルの投入で試合が動いた。ただ、この2人だけが動いたわけではない。他の選手まで動いたのだ。この選手交代まで、ピッチ上の選手がリスクを負って動けなかったことが、今シーズンの乗り越えなければならない大きな課題に繋がっていくかもしれない。理由は選手にあるかもしれないし、監督にあるのかもしれない。
開幕戦を見る限り、FC東京が予想を上回る変身を見せた。他のチームもレベルアップしているだろう。難しいシーズンになる。川崎フロンターレは、まだサイド・アタッカーが定まらず、攻めの形を模索している。今のうちにトリコロールが自ら第2節で勝たなければ優勝への道のりが遠くなる。もし、トリコロールが、川崎フロンターレを相手に開幕戦の終盤のサッカーを最初からできるのであれば、開幕戦の先発メンバーをセレクトしたマスカット監督の真意と、今シーズンの展望が見えるかもしれない。