Jリーグ2階の目線2022 横浜F・マリノス2-0 神戸 日産スタジアムに幸せな水曜日がある

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週の半ばの平日に、サッカーは、私たちをこれほどまでに幸せな気分にしてくれる。西村の放ったシュートが、大きく弧を描き、外から巻いてゴールネットを揺らしたとき、スタジアムは、全ての苦悩を消し去った。ただこの瞬間の輝きだけが私たちを支配した。至福の喜びの中でホイッスルが響き、試合は2−0で終わった。

決して名采配ではない。スタメンは、限られた駒の中から選び出された苦難の選択だっただろう。勝利を手繰り寄せたのは偶然の結果に近い。しかし、紛れもない事実は、この試合のピッチに立った選手たちがチャンスを掴み、力一杯戦って勝ち点3を掴み取ったということだ。

特に、西村の活躍は凄まじく、試合途中まで神戸の扇原を完封した。徹底したマンマークで、神戸の選手、特に前川は扇原にパスを出すことができなかった。これまでの試合で、神戸の対戦相手は扇腹を狙い撃ちした。ボールの奪いどころとしてターゲティングしていた。しかし、この試合では、西村の働きが完璧すぎて、トリコロールは、ボールの奪いどころを見つけられなくなってしまった。扇原がボールを触らないのだから仕方ない。神戸の攻撃は、外からに偏重した。

そして、スタジアムを沸かせたのは山根だった。しっかりとした技術。トリコロールのサッカーを熟知した適切なポジショニング、視野の広さ……ボランチに必要な要素を兼ね備えていた。全く予想外のコースにパスを通し、神戸の攻撃の芽を摘んだ。スプリントする必要なく、山根は必要な場所にいた。

イニエスタとサンペールが登場してからは、様相が一変。守勢に回る苦しい展開に。しかし、週末に日立台のスタンドに乗り込んだ面々にとっては、人数が揃った真っ向勝負は心地よく感じられた。これぞ、アタッキングフットボール同士の対戦だった。そして、苦しさがあってこそ、ラストプレーの喜びは倍化するのだった。

このコロナ禍の厳しい時代に、心の底から仲間と笑って過ごせる平日の夜を経験した人は、どれくらいいるのだろうか。でも、日産スタジアムには当たり前のように幸せがある。トリコロールに輝く笑顔が溢れている。その輪は、次の日曜日でさらに大きく広がるだろう。