Jリーグ2階の目線2022 横浜F・マリノス2-1 名古屋 このサッカーでタイトルを獲得すれば、そのタイトルは美しく輝くだろう
約1ヶ月ぶりに日産スタジアムで開催されたホームゲーム。前回の2階の目線TVを見たらベンチコートを着ていた。フラットに第三者が見れば、優勝を目指すクラブと下位で苦しむクラブの1試合にすぎない。だが、スタンドに足を運んだ2万人を超えるファン・サポーターの考えは違った。その多くは、遠路、ベトナムまで応援に行った仲間の声をツイッターで見ていたからだ。現地の環境は予想以上に厳しかった。そして中2日での連戦、一つも落とせない紙一重の戦い、コロナ対策……。
帰国直後の試合が、どれだけ難しいかを想像しピッチを眺める。グループステージをトップ通過した凱旋試合というよりも、Jリーグ優勝への難関のイメージが強い。
試合前の選手紹介で、マテウスと仙頭に大きな拍手が贈られる。実は、拍手が皆無だった長谷川健太監督はトリコロールのレジェンドで、黄金期に何度もタイトルをもたらしたストライカーだった(が、いわゆるスーパーサブだった)。時の経過とともに、その功績は忘れ去られたと感じる。そして、今日、長谷川健太は再び、私たちの胸に記憶を刻み込んだ。彼のサッカーはアフターファールが多く暴力的であり、彼はルールを知らない。そういえば、現役時代もルールをわかっているのかわかっていないのかもわからないような天然の感覚派の選手だった。
マテウスを止めるのは困難だった。あのコーナーキックからの失点を責めることはできない。仙頭の出場に納得した。今の柿谷では仙頭のプレーを上回ることはできなそうだ。枠を外したヘディングくらいしか柿谷のプレーに印象はない。彼らはトリコロールで飛躍した。
一方、横浜F・マリノスの選手は疲憊していた。全体に動きが鈍かった。しかし、最後まで気を抜くことなく戦った。それが胸に響いた。失点後、そして、VARで判定が覆った直後のスタンドに反響した手拍子の大きさは、この難関を乗り越えてほしいと考える仲間たちの精一杯のアクションだった。今シーズンで一番の応援は美しく力強かった(おそらく、ベトナムでの戦いの方が、心に響く手拍子は美しく力強かったと思うが)。それは、シンプルな手拍子を選択してゲームに入ったゴール裏の太鼓のファイプレーであるだけではなく、この試合の厳しさを知った仲間が2万人も集まったという事実の現れだった。
西村にパスを預けた藤田が西村を追い抜きペナルティエリア内に侵入し受けた縦パスを西村に戻す。選手が林立するペナルティティエリア内のコースを選択し、右から巻いてゴールキーパーの横にバウンドするシュートをダイレクトで放つ西村。そこで跳ね返りを待っていたのがアンデルソン・ロペス。交代枠をフル稼働し、美しく素早いパスで翻弄するトリコロールらしい得点で勝利を手繰り寄せた。長谷川健太監督は、自分が勘違いして真逆に覚えてしまったルールを報道陣に主張するよりも、自分を育ててくれたクラブの美しいゴールを称賛すべきだったのではないだろうか。
勝負を分けたのは、監督の力でもあった。交代回数3回+ハーフタイム1回の1つを浪費しないために、前半の7分間を10人で戦うことを選択したマスカット監督。そして、その意図を理解してしのぎ切った選手たち。曲者の吉田に攻撃参加させないために、高い位置で我慢してプレーし続けたアンデルソン・ロペス。勇者は前進した。このサッカーでタイトルを獲得すれば、そのタイトルは美しく輝くだろう。