Jリーグ2階の目線2022 横浜F・マリノス3-0広島 帰ってきたJリーグの音
Jリーグに音が戻ってきた。スタジアムにコールとチャント、歓声、そして、ブーイングにヤジまで戻ってきた。みんなが知っている日産スタジアムにまた少し近づいた。
前節は、下位に沈む清水エスパルスをお祭りゲーム。大量得点にスタジアムが湧いた。今節は、上位進出し大躍進中のサンフレッチェ広島との対戦。厳しいゲームが予想された。予想外だったのは3ー0のスコアだけ。内容は拮抗し、多くのシュートを放たれた。だがエドワルドをはじめ、トリコロールの選手は奮闘し強いシュートを放たれた回数は、その一部にとどめた。
サンフレッチェ広島は強かった。80分を過ぎるまで足が止まらなかった。紙一重の戦いだった。しかし、トリコロールは首位の貫禄を見せつけることができた。アディショナルタイムが7分と表示されたとき、大多数のトリコロールサポーターは「7分あれば、あと何点かとれる」と思った。そして、その通り、宮市がシュートをゴールに叩き込む。広島サポーターを絶望に叩き込んだ。この一撃で、彼らの中の何割かはリーグ優勝を諦めただろう。
喜びの裏には怒りと嘆きがある。勝利の喜びが大きければ大きいほど、そこに至るまでに苦しみがあり怒りと嘆きがあったはずだ。コロナ禍で人は怒りや嘆きの感情を押し殺すことを強いられてきた。いや、強いられてきたと意識することもないくらい、そうした感情を表に出さないことを普通としてきた。そして、その鬱憤が溜まり、ここ最近は世の中に騒ぎを越す事件が増えたり街角でトラブルが起きたりしてきた。
サッカーのピッチほど鬱憤が溜まるものは他にない。なぜなら、ほとんどの人は手という便利な肉体を持っているのに、手を使えないのだ。サッカーはルールに従い不自由な足でボールをコントロールする。だからミスが起きる。しかも、試合に勝てる可能性は低い。それでも、コロナ禍に、選手とサポーターは感情を押し殺してきた。中には町田ゼルビアのポポビッチ監督のように、このコロナ禍で4枚のカードをもらってベンチ入り停止となる監督もいるが、それは例外だ。
この試合でスタジアムにコールとチャント、歓声が戻ってきた。それに加えてブーイングもヤジも戻ってきた。それは当然のことだと思う。あの、大きな歓声の足元には、怒りや嘆きが幾重にも積み重なっているのだ。だからだろうか、判定に不満でヤジを飛ばし続ける広島サポーターを見ると確かに怒っているのだが、心なしか楽しそうに感じた。人の感情は複雑で、どちらか一方だけを向いているわけではない。その全てが迷彩模様のように敷き詰められているからJリーグは面白いのだと思う。