Jリーグ2階の目線2022 横浜F・マリノス2-1京都 亀岡で掴んだ大きな自信
初めて訪れるスタジアム。外観が見えるだけでテンションが上がる。評判の良い最新のスタジアムだ。若い世代のサポーターにとっては未知のアウェイゲームとなる。前回のアウェイの対戦は、いつだったか思い出せないくらい昔のことだ。
平日のナイトゲーム。スタジアムは京都盆地の外にある亀山市にある。ホーム側のゴール裏スタンドは1/3くらいの入りで、最後まで埋まることはなかった。横浜F・マリノス側のゴール裏スタンドのビジターエリアは半分程度に制限されていたがびっしりと埋まった。照明が落とされると紫のライトがスタンドを染めるのだが、メインスタンドとバックスタンドで青、赤、白のライトも揺れており、この一戦のために多くの横浜F・マリノス・サポーターが仕事を休んで亀岡までやってきたことは明らかだった。
久しぶりのアウェイでの対戦とはいえ、京都の監督は曹貴裁。チームの決まりが音は過去に平塚で対戦したときと同じ雰囲気。前からボールを奪いに行こうという意気込みが紫のユニフォームから感じられる。横浜F・マリノスの選手たちは、それを冷静にいなしてパスを回すのだが、奪われると何度か大きなピンチを招く。
厳しい展開だっただけに、先制点の与える安堵は大きかった。しかも美しい中央突破。これで京都の勢いは一旦は止まった。もう反撃をしてくるかと思ったのだが、その勢いが京都にはなかった。
後半にエウベルが美しい軌道のシュートを決め2−0になる。京都の足は次第に止まっていった。選手交代で息を吹き返した京都が1点を返す。1万人を切る観客数とはいえスタンドからアウェイの重圧が伝わってくる。押し込まれる。
福岡戦でも多く見られた最終ラインからのロングボール。もしかすると、マスカット監督はボールを自陣のゴールから遠ざければ、たとえルーズボールを奪われても失点に結びつけられる可能性は低いと考えていたのかもしれない。この試合も、ひとまず長い距離のパスを前に送り込むシーンが続いた。ただ、京都の選手が勢いを増し「何か一つ間違えると失点に結びついてしまうかもしれない」と一抹の不安を抱えた。
そんな終盤に「そんなに慌てて前にボールを置きにいかなくても、十分に逃げ切れるじゃないか」とプレーで伝えたのが吉尾だった。ドリブルで前にボールを運び、後ろに下げ、横にパスを回し、ボールを京都の選手から遠ざけた。
「勇猛果敢に3点目を奪いにいく」のは前任者のサッカーだ。今、マスカット監督は、何がなんでも攻め込み続けることを良しとしていない。うまくボールを動かして、相手の焦りを生み出してから、隙があれば得点を奪うという考え方のサッカーに見える。ところが、この試合では、なかなか余裕を持ってボールを回せずにいた。しかし、吉尾のプレーでスイッチオン。
「そうだ!それでいいんだ!」
バックスタンドで思わず声を出してしまう。これまでの試合で、サイドでのプレーの正解を見つけられれず迷子のように走っていた吉尾とは思えない、思い切りと責任感と確実な選択眼を持ったプレーを続ける。逃げ切りは吉尾によってもたらされたと言って良い。
終盤戦に入り、怪我人が出現しどのチームも苦しい。そんな中で、渡辺が蘇り、吉尾が自信を取り戻し、松原が安定した力を発揮した。それほど大苦戦したわけではない。でも、試合が終わると涙が浮かんだ。
「これが優勝への大きな一歩なのだ。」
そう思ったのかもしれない。今シーズンを終えたら、吉尾は「自分の力で獲得した勝ち点で優勝した」と主張して良い。大きな貢献だった。
亀岡駅から京都駅までの電車の中は勝者の自信と満足が充満していた。そして、京都駅の改札を出ると京都タワーがトリコロールに染まっていた。