Jリーグ2階の目線2022 横浜F・マリノス0-0札幌 北の術中にはまる

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得点は入らなかった。VARの介入はスムーズだった。それでも後半のアディショナルタイムは7分と表示された。それくらい、札幌の時間稼ぎは徹底していた。何度も靴紐は解けるし、靴紐が解けたからボールを外に出すなんて見たことがない。おまけに、菅野の表情と金髪と小さな仕草はスタンドを苛立たせていった。

前日に川崎フロンターレが引き分けたことで影響を受けたかもしれない。前半の対角線を使った大きな札幌の展開を恐れてか、マスカット監督は守備時の布陣を442に変更。その対応のためもあってマルコスジュニオールをハーフタイムに交代させてしまう。残り時間がわずかになりどうしても1点が欲しい場合、本来ならば畠中を投入し磐田を前に出すはずだが、最終ラインの選手を交代させなかった。最終ラインをいじるリスクを重視したのではないか。

スタンドでも、マスカット監督が、どうしても失点したくないという本心を采配に投影していたように見えるのだから、選手たちにもそれが伝わっていただろう。慎重なプレーが目立った。シュートを打てる場面で打たない、パスが少し後ろの安全な場所に……。そんな中で、吉尾はマンマークを恐れて無造作にサイドに逃げ、ディフェンスラインの裏に走り込み持ち場を離れてしまう。どこに走ってもマークはついてくるから連携なく動いても意味がない。中央にパスコースが作れなければ最終ラインから縦パスが入らない。ポッカリと中央に空いた穴を松原と永戸が埋めに走る。慎重さと焦りが混在し、ピッチ上は混乱していた。そして、ヤン・マテウスはどうすれば良いのか、やっぱりわからない様子だった。

優勝を争っているチームが残念な試合を披露してしまった。勇猛果敢なサッカーには見えなかった。こんなことではダメだ。このような姑息な時間稼ぎの連続に打ち勝たなければならない。厳しいマンマークの守備を撃破しなければならない。優勝争いをしているがゆえに、多くの人は忘れているのではないだろうか。我々が戦っている相手は、皆、残留争いをしているのだ。だから、真っ向勝負の気持ちの良いサッカーをできるはずがないというのが前提であるはずだ。残留争いをしているチームは、ほんのわずかな勝ち点1を積み上げることを目指す。せこくて必死でギリギリの戦いに彼らは誇りを賭けている。その領域に、我々は覚悟を持って足を踏み込まなければならなかったのだ。この試合では、その覚悟が少し足りなかったように思える。