スーパーカップ2階の目線2023 横浜F・マリノス2-1甲府 上島を通じて知ったこと

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Jリーグのシーズンがやってきた。まだ2月だけれど、節分を終え春の足音を感じる。晴天の国立競技場でスーパーカップを獲得し、この1試合で3,000万円を獲得した。マリンのマスコット制覇もあり、試合後のスタンドは祝祭ムードに包まれた。

そして、もう一つ強く感じたのはトリコロールのアタッキングフットボールがサポーターに深く浸透しているということだ。そのキッカケは、この試合がトリコロールデビューとなった上島のプレーにあった。

2日前に右サイドバック起用を監督から言い渡されたという上島のプレーに大満足したファン・サポーターは多くはないだろう。積極性に欠けたというよりは、適切な立ち位置を見つけることに苦労し続けた印象だ。「3CBの右のようなイメージでやってほしいと言われていました。」「中に入る役割を今日はしなくていいと言われていました。」といっても、タッチライン際に水沼と2人が並んで立ってしまうシーンやパスを受けて前のスペースが空いていてもボールを運べないシーンもあり、右サイドの攻撃は機能しにくい時間が続いた。試合中に多くの選手が指を指しながら上島のポジションやパスの方向に注文をつけて続けていたし、水沼はVARチェックの長い時間を使って、ずっとレクチャーをしていた。

スタンドも同様で「あれ、いない!?」「この瞬間にもっと前だよね」という会話が続出。ピッチ中央の選手が右のスペースに首を振ったが誰もいないのでパスを諦めたシーンでは、周囲のサポーター全員がのけぞった。

つまり、上島を通じて、我々は再確認をできたのだ。このチームにはルールがあり、お互いが助け合うためにやるべき仕事がある。仕掛けるべきタイミングがあり、パスを引き出すために走らなければならないコースがある。知らず知らずのうちに、トリコロールのアタッキングフットボールは、監督、選手の間だけではなく、ただのファン・サポーターにまでも浸透しているのだ。それを実感することができた。浸透していたから、あのとき一斉にのけぞったのだ。

先制点をとった直後、選手に余裕が生まれたのか、右のスペースに強めのパスが送られ、誰もいないスペースをボールは横断。スローインとなったシーンがあった。おそらく、あれはパスミスではない。上島に向けたメッセージだったのだと思う。言葉では伝わりにくい「そこに走ってほしいんだよ」ということをボールで伝えたかったのだと思う。愛に満ちたボールだった。チームは、こうして完成度を高めていく。

さて、上島についてだが、ヘディングと対人プレーの強さはさすがだった。そしてパスの軌道が素晴らしい。しっかりとした基礎技術を持っているからボールが素直に転がる。とても期待できる選手だ。そして、Jリーグ開幕の相手は左サイドからの個人突破に強みを持つ川崎フロンターレが対戦相手だ。たった2日間で持ち味の片鱗を発揮することができた上島が川崎フロンターレの攻撃力への防波堤となってくれたら、トリコロールが連覇を目指す大航海は素晴らしい船出となることだろう。