Jリーグ2階の目線2023 横浜F・マリノス2-0浦和レッズ 王者の優雅な週末
しばらく王者を離れていたので忘れていたが、王者とはとても良いものだ。試合前の大型ビジョンに「王者横浜開幕」と表示しただけで、反対側のゴール裏から嫉妬のブーイングで盛り上げてもらえるし、試合が終われば「ダメだこりゃ」と早々に引き上げてくれる。だから、勝利の後は実に気持ちよくスタジアムから帰ることができる。できれば、この先もずっと王者でいたものだ。頭上には王者のペナントが気持ちよさそうに風になびいていた。

前半は浦和レッズの2列目以降の選手がサボり、中盤にぽっかりと穴を開けてくれたので余裕のパス回しができた。後半に入るとハーフタイムに投入された興梠が中盤のつなぎ役となり、守備の密度も上がったので、そう簡単にチャンスを作ることはできなくなった。でも、それに慌てることなく冷静に対処し続けたのは、やはり王者としての心得が身についてきたからだろう。最後の最後でダメ押しの得点を加え危なげなく逃げ切った。浦和は駆けっこでいくつかのチャンスを作りかけたが、それ以外には目立った策がなかった。最後まで試合をコントロールしたのはトリコロールだった。
持ち味を出し切った試合ではないのかもしれないが、選手の的確な判断と、昨シーズンよりも上達したプレー選択がスタンドを沸かせた。渡辺はボールを止めることで大声援を受け、角田はワンタッチで目の前の相手をいなすことで拍手を受ける。
浦和レッズのゴール裏はお馴染みのメロディで歌謡ショーのように歌声が続くが、日産スタジアム全体の空気感はピッチのプレーと連動していた。一つ一つのプレーに呼応して声と拍手が湧き起こるのがトリコロールのスタイルだ。クラブの価値観、チームの目指すことがサポーターと共有できているからできる雰囲気だ。スタンドも王者と呼ばれるにふさわしい。

2連勝。勝ち点3。王者は上々の滑り出しとなった。ただ次の対戦は難敵が相手だ。サンフレッチェ広島の圧力をどのようにかい潜るか、そこで真価が問われる。この日、試合がスローモーに感じたのは、ヴァンフォーレ甲府、川崎フロンターレとの対戦の後だったからだろう。次は逆に速く感じるかもしれない。ペースを見出すことなく勝ち切ろう。