Jリーグ2階の目線2023 横浜F・マリノス1-3京都サンガ 亀岡で散る 感謝を胸に

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横浜F・マリノスの2023年シーズンは終わらない。アジア制覇への道はまだ続いている。ACLグループステージ 第6節の劇的な大勝利はトリコロールのサポーターに夢と希望を与えてくれた。私たちは、まだ、無冠でシーズンを終えたわけではない。

その10日前、2023年12月3日、私たちは関西にいた。すでにリーグ戦は消化試合となっていたが、チケット発売時点では優勝の可能性が十分にあったため、サンガスタジアム by KYOCERAのチケットは売れに売れていた。だから、スタンドのかなり面積はトリコロールに占められていた。ゴール裏スタンド1階を起点に素晴らしい応援が展開された様は美しかった。

紅葉の嵐山見物に混雑する満員電車に揺られここまできた。京都盆地の外にある亀岡市の風は冷たく、小雨混じりの天候だった。でも、仲間の顔はどこか晴れやかで試合前は笑顔が溢れていた。

試合が始まると「今シーズンから背番号3なのではないか?」と思わせるアツいプレーを続けてきた角田がゴール前のハイボールの競り合いで相手を倒してしまい「著しい反則行為」で一発退場となる。Jリーグの規律委員会は「ペナルティーエリア外中央付近で、ドリブルをしていた相手競技者に対し、ボールにプレーできず反則で止め、決定的な得点機会を阻止した行為」と後日に発表したが、これは審判委員会ではなく規律委員会の書いた文章。ルール上「ドリブルかドリブルでないか」は判定を左右しないので、主審は原の脚の間に落ちたボールを「原が支配しているボール」と判断し、VARはその判断を覆す材料を持ち合わせていなかったことになる。

序盤での退場。普通ならば意気消沈するはずだ。しかし、ここから前半終了までがマスカット監督の采配集大成だった。フィールドプレーヤーが9人になったのにも関わらず、前線の人数を減らさずスリートップで戦うことを決断したのだ。そして試合再開。あっという間に先制点を奪ってしまった。大歓声に包まれるスタジアム。揺れるスタンドの約半分。突き上げる拳。このサッカーを見るために新幹線に乗ってやってきた甲斐があった。

……と、今シーズンのリーグ戦の素晴らしい闘いの話はここまでだ。このまま90分間を逃げきれないだろうと考えたマスカット監督は布陣を変更し少しばかり守備的に。そこから失点を重ねた。選手たちは勝利するよりもアンデルソン・ロペスに単独得点王をプレゼントしたそうなパスを連発。西村は行き場を失って彷徨い、一森は、トリコロールでの思い出づくりになりそうなプレーを披露した。

闘志溢れる素晴らしい攻撃サッカーの前半と特定の選手にパスを集めすぎてしまいチーム全体が機能したとは言い難かった後半。とても仲良しだったブラジル人選手たち。この90分間は、2023年シーズンの横浜F・マリノスのリーグ戦を締めくくるにふさわしかった。おそらく、選手たちの希望はある程度までは実現し、アンデルソン・ロペスは「単独」得点王となれた。

客観的に見れば酷い惨敗なのだが、今日、このスタンドにいる限りは、そのような気分にならなかった。迷わず選手たちはバックスタンド前にやってきて、ファン・サポーターに感謝を表明した。スタンドはそれに応えた。次はゴール裏スタンドの前で、選手とサポーターは見つめ合った。勝ち負けや内容を超えた試合だった。ピッチからもスタンドからも、お互いに想いを伝えたかったのだ。

こうして2023年シーズンのJリーグは終わった。亀岡から山を越え京都に戻り、京都タワーの地下で飲み、騒いだ。一年間を共に過ごした仲間たちとの宴だった。このまま時は流れ、いつものように新年はやってくる。達成できたこと、できなかったこと、得られたもの、失ったもの。あっという間に思い出は通り過ぎていく。でも、あの前半の45分間は、きっと長く語り継がれていくだろう。

ありがとう、トリコロール。でも、私たちは、まだ、無冠でシーズンを終えたわけではない。