2013年 Jリーグ2階の目線 横浜1-0清水(ニッパツ球)


アウェーに行ったサポーターは反則オンパレード、ラフ攻撃を記憶している。早く中村大先生を下げろと叫んだほどだ。しかし、テレビでは、その清水のスタイルを臨場感をもって知ることが出来ない。そして、スタジアムでも冷静さを失うほどに興奮してしまうことがある。勢い余って「審判に勝った」とインタビューで答えてしまうことも。事実とは大きく異なる個々の持つ印象。これがサッカーの面白さでもある。

日本平での悪印象はあるものの清水というクラブに悪い印象は無い。試合開始前に行なわれるサポーター歓迎のアナウンスにスタンドからは拍手。

「だって20年間、一緒にJリーグをやってきた仲間だからね。」

「浦和とはちょっと違うのだよ。」

監督がゴトビになってからの清水のスタイルは好きではない。悪質な反則を繰り返す4番など、自分の応援するクラブに所属していたら憤慨するレベルだ。だが、対戦相手となると意味合いが異なる。今の清水は燃える相手だ。どの試合もエキサイティングだ。

選手入場に合わせて行なうコレオグラフィ。ゴール裏からバックスタンドまで一直線に赤、白、青の3本線。選手を鼓舞すると当時にサポーターの士気も高まる。選手がピッチ上でポジションに散ると大歓声。ピッチが近い三ツ沢とうこともあって、ハイテンションで試合を迎える。そしてキックオフからいきなり学へのスルーパスでスタート。大歓声と絶叫だ。

4123で臨む清水。村松が中村大先生にマンマーク。これは事前の報道通り。中村大先生も、準備万端だっただろう。ラドンチッチとの空中戦に勝ったボールが中村大先生に渡る。近づいた村松に中村大先生は肩を当てて吹っ飛ばす。枯れた芝に叩き付けられた村松は立ち上がり、今度はユニフォームを掴みにかかる。その村松を振り切るように、中村大先生は左脚一閃。

「うぉ!」

その瞬間、ドスンという凄いインパクト音が響く。グランダーのシュートは外から巻き込むようにしてサイドネットを揺らす。いきなりのスーパーゴール。それも技巧派のゴールではなく気迫で叩き込むゴール。試合前のハイテンションが、そのままシュートを後押ししたかのようなゴールにスタンドは総立ち。絶叫。仲間の目を見て叫ぶ。強い。倒されるどころか、逆に挑んできた敵をなぎ倒す中村大先生の強さがゴールを強奪した。

「この勢いで行け!」

「追加点だ!」

「10番と8番!両サイドバックは素人だぞ!!」

ラドンチッチ、大前の補強でポジションを失った攻撃的な選手が両サイドバックにコンバートされている。ドリブルは魅力的な選手だが、ポジショニングを見れば、明らかに不慣れ。ディフェンスラインは揃わず、裏に蹴り込んだハイボールの処理を誤る。

「徹底的に両サイドの素人を攻めまくれ。」

右に左に、両サイドへのロングボールで清水を追い詰める。

 

20分までは清水を完封。そのフラストレーションでラドンチッチが肘打ち。富澤が出血し試合が止まる。ここまでは完璧な試合運びだったが、この富澤治療のインターバルが、運悪く流れを変えてしまう。

村松が初めて中村大先生からボールを奪うことに成功。浮き足立ったのか学がかなり危険なファールを犯し、ラドンチッチのフリーキックがクロスバーへ。さらには石毛がドリブルでペナルティエリアに侵入し際どいシュート。一気に緊迫感が高まる。 清水の守備のバランスが4141の陣形に。この的確なポジショニングでスペースがなくなる。繰り返し沸き上がっていた歓声は、いつの間にか悲鳴の連続に。

せっかくのチャンスも、清水の浅いディフェンスラインに苦しむ。オフサイドを繰り返す。

「学はおそらく『止まってパスを待っているだけじゃなくて裏に抜け出さないとダメだよ』と中村大先生に言われたのだろうな。」

そんな声が出るほど、何度も裏を狙う。この辺りで解ってくる。清水は、このコンパクトで激しいボディコンタクトを武器に中盤を制圧しようとしている。だから、両サイドバックが素人でも十分に闘えるのだ、と。そして、引かずに挑んでくる両サイドの攻撃がトリコロールへの脅威へと変わる。

狭い局面で激しい競り合い。主審の松尾さんはフェアなボディコンタクトとアンフェアなボディコンタクトを見極めて試合をコントロールする。それが功を奏する。止まらないゲーム。エキサイトするスタンド。しかし、トリコロールの好みではないレフリングであることは確かだ。そして苦戦する。

後半は大前のクロス直撃シュートで幕を開ける。そして、「悪のトリコロール」ヨンアピン(清水のゴール裏では母国オランダのトリコロールフラッグが振られていた)の反則。テレビ放送で中村大先生の悲鳴が上がるほど強烈に足首を踏みつける危険な行為だ。パスを出した後のタイミングなので松尾さんの目に入らなかった。エキサイトする両クラブの選手。騒然とするスタンド。

この反則で中村大先生の動きが落ちる。となるとチャンスをつくるのは富澤だ。右サイドから逆サイドのディフェンダーの裏のスペースに送るロングボール。

「行け!」

「学!頼む!」

ディフェンダーに走り勝って身体を入れようとするが吹き飛ばされる。ノーホイッスル。罵声とブーイング。バックスタンドも総立ち。だがイーブンなボールなので、ここで倒れたら負けだ。

さらに白熱していく終盤戦で「悪のトリコロール」ヨンアピンがドゥトラにフェール。今度は松尾さんは見ていた。警告。中村大先生の足首踏みつけと同じように、正面からボールを奪おうとして踏み込み、止ることが出来ずにドゥトラの脚を蹴る。故意ではなかろう。おそらく、ダメな人なのだろう。

ラドンチッチは栗原と中澤との対決で迫力を見せる。この試合の見せ場の一つだ。だが栗原と中澤が完封。そのフラストレーションをラドンチッチはラフプレーに向けることができない。既にカードをもらっているからだ。激しい試合の中で一人取り残される。闘えず、すぐに倒れて審判にアピールする「痛いチッチ」となってしまう。さらには、他の選手の反則を誤る「ごめんチッチ」になるなど、まったくの戦力外。一方のマルキーニョスは清水の厳しい守備に苦しむがサイドに逃げず、献身的なプレーを続ける。

「悪のトリコロール」ヨンアピンのインチキロングスローから放たれたシュートが、またしてもポストに。波状攻撃に身を呈して守る。

「止めろ!」

「頼む!」

「撃たせるな!!」

長いアディショナルタイム。「悪のトリコロール」ヨンアピンに突き飛ばされた兵藤が体勢を立て直して負けずとタックル。ロングボールには必至に食らえ付き、倒れても、なお、立ちあがって挑む奈良輪。前節の技と技を競い合うセレッソ戦とは対象的。局面の闘いを繰り返す激しい試合。迫力と勝利への執念。

試合終了のホイッスルに飛び跳ねる。嬉しい勝利だ。

「やった!」

「よく耐えた!!」

「素晴らしい試合だ。よく勝ち切った。」

 

素晴らしい試合の後は興奮冷めあらず、饒舌に試合を振り返ることが多い。しかし、この日は少しばかり違う。あまりに激しい試合に疲れがどっと出る。

「あ!今日の試合のダイジェストを上映するぞ!」

上映されたのはゴールシーンと、後半のシュートが1つだけ。

「短っ!!!」

僅かにシュートは5本だった。それを感じさせない激しい試合。上手さでも勝つが、この試合のように激しさでも勝つ。優勝へ、また一歩近づいた。

 

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