齋藤学はなぜ輝いているのか?マリーシア感情的サポ論
齋藤学はサポーターの共感を生む存在だから輝いているのだ。
ロンドン五輪メンバーの一員として活躍し、ザックジャパン入りしてから、齋藤学へのスタジアムでの声援は、ひときわ大きくなった。齋藤学はハマのメッシとして光り輝いている。
だが、一方で、数字で検証してみると、意外な現実も浮かび上がってくる。FoolballLabのChanceBuildingPointによると、齋藤学の数字は意外と低い。(2013年10月30日現在)
攻撃全体では49.22ポイント。これは中村俊輔の82.74よりかなり低いことはもちろんだが、中町の62.42よりも低い。ラストパスの数は28本でしかない。シュートは0.81ポイント。中村俊輔の9.97、兵藤の9.04、マルキーニョスの8.0の1/10。ドゥトラ、ファビオ、富澤よりも低い。もちろん、出場時間の短さも考慮すべきだが、攻撃的ポジションの選手としては物足りない数字だ。ゴールは4。これは広島の野津田と同じゴール数でしかない。
それでも齋藤学は輝いている。なぜだ?答えは3つある。
一つ目はユース出身の選手であること。ユースからストレートにトップチームに昇格する選手が多いクラブではあるが、誰もが活躍できるわけではない。現在のトップチームのユース出身選手では最も旬な活躍をしているのは間違えない。これは長くクラブを応援しているサポーターや同年代のサポーターにとっては、とても大きな要因だ。
二つ目はレンタル帰りであること。齋藤学はユースから昇格当初は、目立った活躍をすることが出来なかった。愛媛へレンタル移籍しJ2で揉まれることで、自らの得意のフォームをピッチ上で示すことが出来るようになった。これまで、帰ってこずに完全移籍で去っていく「レンタル片道切符」が多かっただけに、レンタル帰りの活躍にサポーターは胸を熱くした。
三つ目はビッグゲームで印象深いゴールをゲットしていること。特に2013年においてはアウエー浦和戦の同点ゴール、ホーム広島戦の決勝ゴールが鮮烈に印象に残っている。大切なゲーム、大切な場面に美しいゴールを披露している。これが大きい。過去、齋藤学と最も対極の位置にあった選手がいる。それは城彰二だ。長く歴代ゴール数ランキング一位の座にありながら、サポーターは記録に見合った尊敬を集めることが出来なかった。だめ押しゴール、下位の相手からのゴールが多く、また、タイトル獲得に貢献できなかった。そして、大切な残留を決める試合でボールの上に乗ってしまい尻餅をつくなど、とにかく印象が悪かったのだ。それに対して、齋藤学のゴールは、その瞬間だけではなく、数日後、数ヶ月後、数年後にも語られるインパクトを持っているのだ。
サポーターの心をアツくするのは、数字上の記録ではなく、共感する記憶なのだ。
石井和裕