2013年 ナビスコカップ2階の目線 横浜1-0川崎(ホーム)

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試合開始早々にファビオのファースとタッチ。スタンドから歓声が上がる。

「みんな、どんだけ信じていなかったんだよ!?」

ついに秘密のベールからファビオの姿を現した。高さと上手さがある。ポジショニングに、やや難はあるが見事なプレーだ。ことごとく川崎の放り込みを跳ね返す。さりげなくパスも気が利いた弾道。後半には素晴らしいヘディングシュートも見せる。

「相模原は、どこから探してきたんだよ!」

「まったくだ。このプレーをJFLでやったら反則級だ。」

「西部、てめぇ止めるなよ!せっかくのファビオのデビューなのに!!」

勝って良かった。リーグ戦ではさっぱりの川崎相手に、これで負け、いや引き分けであっても激怒の試合内容だ。収穫はファビオのプレーくらい。もちろん、中町や中村大先生の活躍はチケット代では足りないくらいに価値あること。しかし、この試合が憎き川崎戦でなかったら、まったく物足りなかったことだろう。

「でも、こうやって、なんとなく勝つのがうちなんだよね。」

「しっかり勝てたことは良いこと。」

「粘り強い試合だったね。」

風間監督の「新理論」や「革命」が注目される川崎は、真ん中にパトリック。右に小林、左にレナト。トップ下に大久保。ワイドなスリートップ。しかし、その後ろの選手との距離感が悪い。押し上げが遅い。そして、守備に回ればチェックが遅く自由なプレーを許す。前後分業の伝統は引き継いでいるが、それでも革命を出来るのかが心配になる。しかも風上の川崎はリスクを排してロングボールを蹴り込んでくる。

試合開始早々に31番がパスミス。

「なんだ、そのプレーは!親父の顔を見てみたいわ!」

「そこにいるよ!」

そして、よく倒れる。

「そいつを狙っていけ!」

「そいつは弱いぞ!そのうち親父に泣きつくぞ!」

「ほら、もう親父が心配そうに見つめているよ!」

川崎サポーターは不憫だ。この選手がなぜ起用されるのか解らない。弱い、技術がない、おまけにスピードがないのだ。

大久保は大人しくなりスピードが衰えているし、稲本は太って重くなっている。まったく魅力を感じない。さらには、肝心の黒人大型ストライカーとの噂のパトリックの体幹が弱い。少しの接触でバランスを崩して倒れる。

「名前はエムボマと同じなのに弱いなー。」

「なんだ、この木偶の坊。」

本当に簡単に倒れる。

「でも、あいつ、守備では貢献しているぞ。」

「そんなの意味ないし。」

まったく失点をする気配はない。蹴り込んでくるだけだ。だが、逆に、まったく得点を出来る気配もない。どうやら、前線の仕掛けが足りないようだ。特に学に仕掛けが少ない。そのためか、コンディションが良いからなのかマルキーニョスが動きすぎる。サイドに流れてしまう。そのため、中央に誰もいないことがある。となると端戸の不在が大きい。学は足下で受けることを要求しすぎている。

「中央が弱いのだからサイドになんて行かずに、中央から攻め込めばいいのに。」

「サイドにこだわり過ぎだな。」

後半に入ると風間の息子が下がる。

「なんだよ、つまんねー。」

「あれ、代わりに入るのは森谷ですよ。」

「それなら大歓迎だ。」

スタンドからは恩知らずに盛大なブーイング。早くも田中を超える人気者だ。身体の重い稲本がワンボランチに。これで、川崎の攻撃もやっとサッカーになる。

そして、激しい当たりを流し気味にする家本主審のジャッジもあって、プレーがどんどん激しくなっていく。そして、見逃してはならないのはバックスタンド側の副審。スローイン以外では、ほとんど何もしない。家本さんからは見えない角度でのファールを副審は、かなり見逃している。

「彼はヤバいね。」

均衡を破ったのは、やっと83分。中村大先生のクロスをマルキーニョスが無理矢理ニアサイドのゴールへ。臨場感あふれる三ツ沢のバックスタンドが一瞬で総立ち。ドッと沸く。

「Oh!マールキーニョス!ララララララマルキーニョス!」

「Oh!マールキーニョス!ララララララマルキーニョス!」

「Oh!マールキーニョス!ララララララマルキーニョス!」

「あれ、カードが出た。」

「え〜退場!?」

「何?脱いだの!」

「お〜〜〜〜〜まるきーにょ〜す。」

困ったイタリア人のような嘆きの「Oh!マールキーニョス」に変化。

1人多くなった川崎は一気呵成に攻め込んでくるかと思ったら拍子抜け。攻めに戸惑いを見せる。おどおどした攻撃。トリコロールはボールを奪えば,1人少ないことを感じない。パスを回して時間を使う。中村大先生が、チャンスがあればドリブルで相手をかわし、ゴール前に持ち込む。この鹿島国や川崎とは対局にある素晴らしい時間稼ぎのプレーに「オーレ!オーレ!」と、拍手喝采だ。終盤に、何度か大きなピンチはあったものの完封で勝利。マルキーニョスの退場と学の警告は余計だった。学は、おそらく足がかかって倒れたのだろう。しかし日頃の行いが悪すぎる。簡単に倒れないプレーを心がけないと、今回のようなシミュレーションで警告をもらうことが、またあるだろう。

甲府戦はマルキーニョスが出場停止。だが、みな陽気だ。

「みんな、寛容だなー。」

「ま、勝ったし、カップ戦だし。」

「普通にやったら、樋口さんは甲府戦でもマルキーニョスを使っちゃうと思うんだよね。でも、これで藤田を使ってくれるんじゃないかな。」

「逆に甲府戦が楽しみだよ。」

三ツ沢の坂を下る足取りも軽快。あっという間に下りきる。

「ご飯行く人ー?」

「行く、行く。」

「ここにしようよ、豚ちんかん。」

「確かに、今日は頓珍漢だったね。」