「育成型クラブ」への転換とは何か?マリーシア感情的サポ論

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「育成型クラブ」を宣言されたクラブのサポーターは我慢をするしか無いのである。

J2栃木SCが2014年シーズンは「育成型クラブ」に転換する方針を記者会見で明らかにした。J2栃木SCは2012年から能力の高いブラジル人選手を擁してJ1昇格を目指したが2年連続で昇格実現とならないことが確実視され、今回の発表となった。「今後は長い目で育成していくチームに変えていく必要がある」というのが『表向き』の理由だ。

「育成型クラブ」とは何か?これもJリーグにおける建前でしかない。本気で「育成」をすると思い込むと、現実とのギャップに愕然とすることになる。ご承知の通り、優秀な選手を育成するには、かなりの投資コストが必要なのだ。ジュビロ磐田が「トップチームの強化に貢献しない下部組織になぜ金を掛けるんだ」という理由でジュニアユースの選手募集を取りやめにした例もある。

栃木SCの債務超過額は前期の5600万円から1億4600万円に膨らむ見込み。さらに、メインスポンサーの一つだった家電量販店チェーンのコジマの業績が悪化。債務超過の穴埋めのための増資のアテにしていたのにも関わらず、逆に、コジマは増資の強力をするどころか一切のスポーツ支援からの撤退を表明している。要は「クラブにお金がありません=『育成型クラブ』宣言」ということなのだ。サポーターやステークホルダーに対して、栃木SCは「お金がないから補強はできません。昇格は諦めてください。」と言っているだけに過ぎないのだ。

過去に、同じような例がある。2009年の横浜F・マリノスだ。当時の齋藤社長が「3年間の育成計画」を宣言。有力選手の補強を諦め、監督にはOBで、元チーム統括本部 本部長の木村浩吉を据えた。ちょうど、親会社の日産自動車からの資金援助が大幅に減額されるタイミングだった。

「育成型クラブ」で思い浮かぶのは、古いところではアヤックスだ。ユース年代から自前で選手を育て、オランダリーグでは成績を残しながら、欧州のビッグクラブに選手を移籍させ、違約金や育成費で収益を上げてきた。Jリーグにおいても、本来の意味での「育成型」クラブを挙げるとすれば、有力選手を海外移籍させている(また、海外スカウトからの注目を集める若手を多く有している)セレッソ大阪という人もいる。しかし、セレッソ大阪は「育成型」を宣言していない。

先ほども書いたように、Jリーグにおいて「育成型クラブ宣言」は建前でしかない。「お金がないので補強は諦めてください」と言っているだけなので、サポーターは本気で「クラブは若手を育成するぞ」と信じてはならない。建前の言葉を本気で信じると、後で落胆が大きい。2009年の横浜F・マリノスの場合は、サポーターどころか木村浩吉監督自身までもが「育成」を本気で信じ込んでしまい、勝負を度外視した若手に経験を積ませるための采配を繰り返してしまった。その采配は「育成」を期待したサポーター層からは大きく支持を受けたが、ファン全体で見れば観客動員を大きく減らしたために契約期間の途中で木村浩吉監督は解任となった。クラブは本気で「育成」を目指しているわけではないのだ。

「育成型クラブ」を宣言されたクラブのサポーターは、ひたすら我慢し、来るべき上昇のチャンスを掴むときを待つしか無い。クラブに補強を要求しても「育成」を要求しても、無い袖は振れないのだ。