2013年 Jリーグ2階の目線 横浜0-2新潟(日産)


日本最大のキャパシティを誇る日産スタジアムには62,632人が来場。鮮やかな青の秋空の下、日向では汗が出るほどの熱気。しかし、何か空気が固い。選手の動きもぎこちなさが散見されるうちに時間は進み、家本さんが90分間+5分間の終了を告げる笛を鳴らす。その笛は聞こえなかったような気がする。ただ家本さんの手が上に上がり、トリコロールの選手たちが頭を垂れるのを見て、私たちは歓喜の瞬間が、一週間先に延ばしされたことを知る。ただ、その瞬間は驚くほど静かで、そこに62,632人がいるとは思えないほどだった。

優勝目前の報道、そして、過去95年の初優勝の記憶から、スタジアムが浮ついたムードに包まれることを懸念した。しかし、実際は予想外だった。固く重苦しい試合前の雰囲気。民衆の歌ですら、白く霞みがかって感じる。盛り上がりに欠けるスタンド。ゴール裏の意気込みがスタンド全体にはなかなか広がらない。満員を感じたのは、選手紹介の手拍子の大きさ、反対側から遅れて届いてくる手拍子の時差、そして、アウエー側ゴール裏のメインスタンド寄り2階席が解放され、人が流れ込んで行く様を見たときだけだった。

まず、新潟が強かった。後半戦に最多勝ち点を稼いでいることがうなづける。試合開始早々に激しいプレッシングでプレッシャーをかけてくる。その新潟の勢い。いわゆる「試合開始早々には、ハッタリでも良いから圧力をかけろ」というパフォーマンス。これにより、中町と富澤のプレーが慎重になっていく。ただでさえプレッシャーのかかる試合で、さらに丁寧なプレーを心がけてしまい、攻めにスピードを失う。いつもは足下にボールを要求することが大半の学がスペースに動き出したために、足下を狙ったパスが通らないという珍しいシーンも数回。逆に、中村大先生やマルキーニョスがトリッキーなプレーを織り交ぜたのは、プレッシャーから優勝経験の浅い選手を解放するためだったのではないか。

失点は確かにミスによって川又をフリーにしたことで生まれた。だが、敗因と言って良いものが何であったのかを言い表すことが出来ない。リードされると放り込み以外に監督采配の選択肢が無いことはいつものことであるし、マルキーニョスが献身的にサイドに開いてしまうとボランチが攻撃参加しない限りはゴールに近づけないこともいつもの通り。見落としてはならないのは、後半に失点する前の時間帯に「マリノスが圧倒する時間帯」と報じられているがシュートは少なく、コーナーキックをとるのが精一杯だったこと。攻撃の枚数が足りないし、シュートを撃つ積極性にも欠けていたのだ。

家本さんが90分間+5分間の終了を告げる笛を鳴らす。するとゴール裏からはチャントが始まる。スイスW杯決勝戦で、当時は無敵だったハンガリー代表を下して世界中に「ベルンの奇跡」と後に呼ばれる大勝利をもたらした西ドイツ代表監督のゼップ・ヘルベルガーは、こう言っている。

「試合終了の笛は、次の試合開始の笛である」

あのチャントが始まった瞬間に、私たちの次の闘いは始まった。落ち込んでいる暇はない。そしてゼップ・ヘルベルガーは、このような言葉も残している。

「ボールは丸く、試合は90分。総ては単純な論理である」

恐れること無く、ただ勝つことだけを目指して闘え、トリコロール。

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