Jクラブの運営からサポーターに憎しみを生じさせる方法 マリーシア感情的サポ論


熱心なサポーターほど「嫌いなクラブ」を持っている。例えば、ガンバ大阪サポーターは、同じ大阪府内に本拠地を持つセレッソ大阪が嫌い。静岡県内の清水エスパルスとジュビロ磐田のサポーターもお互いに対立する関係だ。浦和レッズと鹿島アントラーズが嫌いだというサポーターは、かなり多くのクラブのサポーターの中に存在する。その原因の多くはサッカーの内容では無い。敵サポーターの振る舞いや、アウエースタンドでホームクラブの運営から強いられた嫌な経験からである。

ここで一つの典型的な例を紹介する。2013年12月7日にJ1リーグ最終節が行なわれた等々力陸上競技場でのトラブルの例だ。この試合は、アウエークラブの横浜F・マリノスが優勝を賭けた一戦。アウエースタンドの座席は短時間で完売。購入することが出来なかった横浜F・マリノスのサポーターが大量にホームAのチケットを購入している。メインスタンドを立て替え中の等々力陸上競技場のキャパシティは20,693席。当日の観客数は20,151人。ホーム側の2階席に空席が見られ、ホーム側の立ち見席で座って観戦していた人がいたことから、アウエー席とホームA席は超満員になっていた。

この試合のホームAチケットを購入した横浜F・マリノスのサポーターのほとんどが、川崎フロンターレによる、観客の安全を軽視しした運営に憤慨している。試合前の「川崎フロンターレクラブ、スタッフ、サポーター一同、皆様を歓迎いたします!」というアナウンスには笑いが起きている。

ホームAで起きた事象。

(1)10番ゲートで開門前に待機列に並んでいる(もしくは並ぼうとした)ホームAのチケットを有する横浜F・マリノスサポーターが警備員から「列から離れ13:30以降に入場する」ように指導される。しかし、13:00頃に運営ルールが変更されホームAのチケットを有する横浜F・マリノスサポーターも整列入場できるようになる。理由は「ホームページに入場できると書いてあるから」(警備員同士の会話より把握)。当然のことながら列を離れるように指導された横浜F・マリノスサポーターには、この運営ルール変更は知らされていない。

(2)開門直後に入場するとアウエー寄りのホームAエリアの座席の大半は年間チケット保持者により関取がされていた。横浜F・マリノスサポーターのうち席を確保できたのは約40名。また、物が椅子に置いてあるにもかかわらず観客が試合開始後も現れない座席が発生している。つまり、アウエー寄りのホームAエリアに横浜F・マリノスサポーターが来場することを見越して、満席のカモフラージュが行なわれている。

(2)開門後、アウエー寄りのホームAエリア2階では横浜F・マリノスサポーターが川崎サポーターに「出て行け」と怒鳴られた。

(4)開門後、アウエー寄りのホームAエリア1階では横浜F・マリノスサポーターが1名の川崎サポーターに「ユニフォームを脱げ」「マフラーをとれ」と目の前まで来て怒鳴られた。この1名の川崎サポーターはトラメガと脚立を有し、脚立の上から監視。特に女性に対しては「外してください。外さないと退場させます」を繰り返した。この川崎サポーターは通常のホームゲームでは、このエリアでは観戦をしておらず、ホーム側で熱狂的に応援するエリアの一角で応援を煽る役割を担っている。いわゆる「体格がよく強面」のコアサポーターが恫喝を繰り返し行なった。ただし、手段に問題はあるものの、このサポーターは「ユニフォームを脱ぐ」「マフラーをとる」を正しい運営ルールであると信じていた可能性がある。また、警備員の長時間の指導により、開門から約1時間後にこの1名の川崎サポーターは通常の観戦場所に移動した。

(5)(4)の恫喝が発生した時点で、多くの横浜F・マリノスサポーターが警備員にクレーム。しかし、警備員が恫喝する川崎サポーターを止めることがなかったため、多くの横浜F・マリノスサポーターがアウエーエリアに移動を希望。結果、アウエーエリアの整列入場が一段落した時点で緩衝帯の扉が開門され、ホームAエリアからアウエーエリアに横浜F・マリノスサポーターの大半が移動。結果、アウエーエリアがさらに混雑する。この時点では、その大半の横浜F・マリノスサポーターは(6)について把握していない。

(6)横浜F・マリノスサポーターは警備会社より「ホームAエリアでは横浜F・マリノスのユニフォーム、マフラーなど一切の応援グッズを身に付けてはならない。横浜F・マリノスの応援(拍手・歓声を含む)をしてはならないと指導される。この指導は、警備員(アルバイトスタッフではない)の独断ではなく警備本部と無線で確認をしながら行なわれている。また、マリノスサポーター1名からの依頼により、川崎フロンターレの運営方針との相違がないかの確認が行なわれた。しかし、マリノスサポータ1名の進言(「ルールで禁止をしても、田中裕介がミスをしたら歓声や拍手が起きることを止めることは不可能。それをルール違反として川崎サポーターが指摘をしたらトラブルになることは必至だが、そのリスクを負うのか?」という質問等)の後に横浜F・マリノスの応援は許可された。これらは明文化して周知されておらず、全てが川崎フロンターレの運営の考え方次第。その明文化されていない考え方を警備員を通して口答で告知した。

では、事前告知は、どのように行なわれていたのだろうか。

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(1)ホームAでは横浜F・マリノスの応援を行なえないとは明記してない。

(2)ホームAでは横浜F・マリノスの応援グッズを身に付けてはならないとは明記していない。「7番ゲートでは横浜F・マリノスの応援グッズを身に付けての入場時は禁止」「コンコースでは横浜F・マリノスの応援グッズを外す」と明記されている。それゆえホームA座席においては横浜F・マリノスグッズの着用は出来るものと考えるのは当然のことである(「外す」ためには「着用」している必用があるため)。

※ホームA座席における「横浜F・マリノスの応援グッズ着用」「横浜F・マリノスの応援」の可否については記載に不明瞭な表現があり念のために横浜F・マリノスのサポーター2名以上が川崎フロンターレに確認を行なっている。

12月3日の問い合わせ結果:「ホームAチケットを購入した横浜F・マリノスサポーターはあくまでバクスタアウェイ寄りに着席を」「ホームA座席でアウェイグッズ身に付けるのは構わない。」という返答。

12月8日の問い合わせ結果:「F・マリノス応援席はアウェイAゾーンですが、ホームAゾーンでもF・マリノス寄りであれば応援可能。ただし、エリアは『常識の範囲内でお願いします』」という返答。

なお、電子メールまたはツイッターでの問い合わせを2名以上の横浜F・マリノスサポーターが川崎フロンターレに対して行なっているが、いずれも返答を得ていないため、確認はテキスト情報では残っていない。

また、試合開始前に7:00頃に10番ゲート待機列において横浜F・マリノスサポーターが警備スタッフに質問し「7番ゲートの待機列であればホームA座席に入ってもかまわない。ただし入場時は応援グッズは外してくれ。着席すれば応援グッズの着用は可。」という口答での返答を得ている。

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12月2日に川崎フロンターレオフィシャルサイトで発表された「12/7 横浜FM『ホームゲーム開催情報』について」では席割図が発表された。発表時は上記のように「ホームA」の文字からオレンジ色の「アウエーエリア」に向けて線が引かれており「ホームAの横浜F・マリノスサポーターはアウエーエリアで観戦することになるのではないか?」という憶測が流れた。その後、「ホームA」の文字からオレンジ色の「アウエーエリア」への線は消去された。

上記のように事前の告知(広報が担当)と現場での運用(運営が担当)が大きく異なっている。さらに横浜F・マリノスサポーターはルールを遵守するために事前に電話や電子メールで問い合わせを行いルール確認を行なって返答を得ている。また、トラブル防止のために、一部のアウエーチケットを入手した横浜F・マリノスサポーターは、熱狂的に立って応援をすることを希望されている横浜F・マリノスサポーター(しかしホームAチケットを入手している)とチケット交換を行なっている。そのため、横浜F・マリノスサポーターの憤りは激しく、「裏切り」と「ホスピタリティのかけらも感じられない運営」が川崎フロンターレというJリーグクラブに対する憎悪を生み出す結果に至った。

何が問題なのか?

サポーターの多くは他のクラブの運営サイドとも、同じJリーグファミリーの一員として信頼関係を信じている。それを一方的に裏切ったことが大きな問題である。また、川崎フロンターレの社内組織にも大きな問題を有していると推察できる。今回は、比較的、年齢が高く穏便な行動をとる横浜F・マリノスサポーターがホームAに多かったために暴力行為などの大きな問題にはならなかった。しかし、このような運営を行ない続ければ、どこかで大きな問題が生じる可能性が高い。

重要な問題

事前告知表現が曖昧であること。また「文章に明確に書いていないことは川崎フロンターレの運営が決定権を有しているのでクレームは認めない」(警備員を通して横浜F・マリノスサポーター1名へ説明)という姿勢は。顧客に対する姿勢としては正しいとは言えない。顧客対応ではなく「取り締まり」を主眼に置いた警備の視点が強すぎると考えられる。

広報、運営、営業の組織が縦割り過ぎること。三者の連携がとれていない。運営から警備会社に行なわれた指示が運営方針に沿った正しい指示であったとすると、運営の方針と異なる文書が広報より川崎フロンターレオフィシャルサイトに掲載されていることは明白。また、運営が応援グッズの着用禁止を警備員に指示しているのにも関わらず、ホームAコンコースの売店では横浜F・マリノスの応援グッズが販売されている。営業とも連携がとれていない。

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どのようにすればトラブルは回避できたのか?

横浜F・マリノスサポーターがホームAチケットを購入できないようにすれば良かったのではないか?という考え方がある。しかし、それは正しいとは言い切れない。なぜなら、他のクラブ(例えば横浜F・マリノス、ジュビロ磐田)ではホーム自由席チケットを購入した大量のアウエーサポーターに対して安全でホスピタリティを最低限維持した運営を行なっているからだ。また、イタリアにおいても同様(筆者はボローニャのスタジアムとペルージャのスタジアムで、それぞれ、ホームエリアのチケットを購入した大量のアウエーサポーターに対して安全でホスピタリティを最低限維持した運営を行なっている試合を体験している)の運営が行なわれている。

(1)社内複数の部署が連携し正確な情報発信を行なう。

(2)トラブルの本当の原因を明確化する。

特に(2)については、横浜F・マリノスサポーターがホームAのチケットを購入したことよりも大きな原因がある。そして、その発生は試合前に予測できたはずだ。それは川崎サポーターによる恫喝である。なぜなら、恫喝する川崎サポーターが去ってから入場した、事情と経緯を知らない横浜F・マリノスサポーターはマフラーを着用して応援を行なっている。また、寒さから、試合開始後にマフラーを着用したサポータもいるが、何一つトラブルは生じていない。また、本来は禁止となっているコンコースで横浜F・マリノスのユニフォームを着用した横浜F・マリノスサポーター(SS指定席を購入)が大量に目撃されているが、こちらも何らトラブルを生じていない。つまり、横浜F・マリノスサポーターが文書で明記されたルールを遵守するのであれば、予測される川崎サポーターの恫喝を防止する策を事前に投入することで、トラブルを回避することが出来たはずだ。

今回の例で言えば、当然予測できるトラブルの原因を防止する策を怠らなければ、杜撰な当日現場運営からサポーターが憎しみを生じさせることは回避できた。敵サポーターの振る舞いや、アウエースタンドでホームクラブの運営から強いられた嫌な経験から「嫌いなクラブ」は生まれるのである。

 

わかりにくいというご指摘を多数いただいたので2013年12月9日に以下を追記。

2004年チャンピオンシップ1stレグ(日産スタジアム)には64,899人の観客が来場した。これは今も破られていないJリーグの史上最多観客数である。この試合ではアウエークラブである浦和レッズサポーターが大量にホーム自由席チケットを購入した。横浜F・マリノスの運営は安全なスタジアム運営の為に決断し、ホーム自由席のバックスタンド2階に浦和レッズサポーター用のホーム自由席エリアを設けて収容した。自由席とはいえ、常日頃、そのバックスタンド2階エリアで観戦する横浜F・マリノスの常連サポーターは多数存在したが(人気の座席エリアの一つであるため)、横浜F・マリノスサポータはその決定に従った。筆者もその一人。当時、決定直後は立腹したが、試合を終えて振り返ると、安全なスタジアム運営の為に決断した横浜F・マリノスの運営は正しかったと思うことが出来た。また、当試合を契機に横浜F・マリノスを嫌いになったという浦和レッズサポーターの声を聴いた記憶が無い。史上最多観客数の混雑となった試合であったのにもかかわらずだ。

「日産スタジアムのアウエーエリアを縮小しろ」という声が聞こえるときもある。だが、安全なスタジアム運営の為には、必要以上の憎悪を生み出す運営を主催クラブは行うべきではないと考えている。

本記事を公開後の反応と考察についてはこちらをご覧ください。

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