2013年 Jリーグ2階の目線 横浜2-1大宮(日産)

Pocket

大外に走り込んでくる選手。クロスがゴール前を斜めに横断する。間もなく40歳を迎えるドゥトラは消耗していた。脚がもつれ、振り切られる。今井のボレーが見事に決まり、完封勝利を逃すアディショナルタイムの後味の悪い失点。

これをドゥトラのミスと考えるか、ドゥトラの体力的な限界と考えるか、それとも、前線からの守備が機能しなくなったことによる歪みによる消耗の結果と考えるか、人ぞれぞれに解釈が違う。ただ、一つだけ確かに言えることがあるとすれば、それは、試合前には考えいにくい状況であったということだ。そう、私たちの想像以上に、この試合は良い試合だった。選手たちの闘志が伝わる見事な試合だったということだ。だから、あの失点を悔しく思えた。

前半だけならばベストゲーム。一つのピンチもない。前半終了間際まで、バイタルエリアへの侵入すら許さない完璧な守備。前線からかけ続けるトリコロール全選手のプレッシャーに拍手が起きる。大ボリュームの拍手だ。

選手の気迫は、間違えなく、スタンドからピッチ上にかけられるプレッシャーによって増幅されている。先週の三ツ沢が嘘のようだ。あの試合後、サポーターは嘆いた。特に、学には厳しい批判が渦巻いた。2試合連続で飛んだのだから仕方ない。セレッソ戦も全体としては物足りないという声が多かった。だが、学の素晴らしいシュート2本はサポーターの心を打った。そして、今週末。ゴール裏には厳しいメッセージの横断幕。どうしても勝たなければならない一戦。初めてスタジアムに脚を踏み入れた人でも、この試合の重要性が解る。なによりも、この緊迫感。「民衆の歌」でテンションが高まる。子供店長から日産方に寝返った加藤清史郎君が「一緒に戦いましょう!一緒に歌いましょう!」と叫び、スタンドが応えた。選手紹介の音楽への手拍子からフルボリューム。選手には、全力で闘い切るしか選択肢はなかった。

 

「大宮の弱点はディフェンスラインの裏に斜めに抜け出す動き。失点のシーンは、ほとんどそれで崩れている。長い距離を走ればついてこない。」

「奇麗に勝とうとしなくてもいい。グジュグジュの展開に持ち込んで勝ちさえすればいいんだ。」

試合前のM・cafeでの大宮対策は、何でもいいから得点をして勝てば良い、というもの。ただし、大宮の弱点だけははっきりしている。そして、選手たちも知っている。兵藤が、マルキーニョスが、何度も弱点を突いていく。そして、時は来た。予想よりも早く来た。右の学にボールが渡ると、スルスルとノーマークでゴール前に走り込んでくるマルキーニョスの姿が見える。

「来たぞ!」

「入れろ!」

美しいクロスの奇跡が曲線を描き、マルキーニョスの頭に当たると鋭角的にピッチに突き刺さる。ワンバウンドでゴールに突き刺す先制点。トリコロールの小旗が揺れ、抱き合い、絶叫。見事な先制点だ。

 

「休むな!畳み込め!!」

「続けていけ!!」

その声に応えるピッチ上の選手たち。中でも学は、並々ならぬ意気込みに違いない。前線で受けたボールは全てシュートを撃つという決意を感じる。そのチャレンジに惜しみない拍手。カットインしてディフェンスラインの前を横切るドリブル。急角度でコースを変えて前へ。

「撃て!」

マルキーニョスが跳ねる。しかし撃たない。

「撃たないのか!?」

「どうする!?」

「抜けた!」

「撃てーーーーーーーーーー!!!」

グランダーのシュートがゴールに吸い込まれていく。既に汗だくだったスタンドに汗が飛び散るファインゴール。スタンドが揺れる。約30,000人が叫ぶ。

嬉しい。このゴールは、たまらなく嬉しい。この時間帯に追加点。首位大宮に追加点。嬉しい理由はそれだけなのか?いや、違う。目の前で繰り広げられる繰り返しのチャレンジがゴールという結果を出したことが嬉しいのだ。才能を持て余すことなく30,000人の前で美しく披露する、この瞬間を待っていたのだ。

「いいか!叩き潰せ!もう一点穫れ!」

「この8年分を取り返せ!」

あまりに完璧な前半に、後半開始前に声を飛ばす。

「ちょっと待て!試合前にM・cafeで言っていたことと、全然違うし。」

 

ベルデニックは試合を諦め、早い時間帯で金澤、富山、ヨンチョルを下げる。厳しい夏の試合日程でリーグは進む。次の試合は、すぐにやってくる。

「なに?浦和は0-4で負けたの?」

「それ、マズいだろ。次は奴ら、本気でくるぞ。」

「誰か退場になっていないのかよ。」

「でも浦和は普通にしっかりやれば勝てる。ここで連勝だ。」

何が起きるかは解らない。年間試合日程が決定したとき、夏の大宮との対戦に喜んだ記憶を忘れていないか?終盤に強くなる前に弱い大宮と対戦できることを喜んだのだ。あれは春のこと。しかし、夏が来てみれば、大宮は首位だった。このようなシチュエーションでの対戦など、誰も予想していなかった。

気を抜けば失点する。全力でプレーをすれば、とんでもないファインゴールが生まれる。結果も内容も、その時々で右に左に大きくぶれる、その大きな可能性がサッカーの魅力だ。その魅力を堪能できるのはスタンドだけ。さぁ、次も日産スタジアムに足を運ぼう。ユナイテッド戦?そんなものは真剣勝負ではない。本当のサッカーの魅力を堪能したければ、リーグ戦に限る。