ここ一番に数の強みが生み出す弱みを見せた浦和 マリーシア感情的サポ論

Jリーグ2016年シーズンはファーストステージ優勝の鹿島が、セカンドステージ優勝の浦和を下して優勝となった。勝つために全てを徹底的に遂行する鹿島らしさが、最後に栄光を引き寄せた感がある見事な第2戦の勝利だった。メディアや浦和サポーターは盛んに「下克上」「年間勝ち点1位が優勝とならない理不尽さ」を訴えるが、それは意味をなさない。Jリーグに勝ち点制度が導入されたのは1995年シーズンから。そのシーズンの年間勝ち点1位は勝ち点108(なんとリーグ戦52試合の過酷スケジュール!)のヴェルディ川崎。しかし、優勝したのはファーストステージを制した横浜マリノスだった。2000年シーズンには年間勝ち点1位の柏レイソルがステージ優勝しなかったためにチャンピオンシップにすら進出できないということが起きた。それは珍事だったのか?実は違う。Jリーグに勝ち点制度が導入された1995年シーズンから2004年まで、そして2015年シーズンと2016年シーズンを数えてみれば、年間勝ち点1位のクラブが優勝したのは11シーズンのうち3シーズンしかない。しかも3シーズンのうちの2シーズンは2ステージ優勝の完全優勝(プレーオフは開催されず)。勝ち点制度導入後のプレーオフの結果で年間勝ち点1位のクラブが優勝したのは2015年シーズンの広島だけなのだ。つまり、浦和の敗北は下克上でもなんでもなく「普通にあること」だということを多くのメディアや浦和サポーターは見逃している。

さて、今回の浦和の敗北は浦和自らの敗北とも言えよう。優勝のために全ての時間を費やして、セカンドステージの終盤を捨ててまで優勝をした鹿島とは、その違いが顕著に現れた。古い例で恐縮だが、2004年シーズンのファーストステージを制した横浜の岡田監督は、チャンピオンシップを見据えて、リーグ戦セカンドステージの最後の2試合を捨てた。チャンピオンシップ対策のがんじがらめの守備戦術をテストしたのだ。当時、そのような岡田監督の狙いは明らかにされていなかっため、リーグ戦での下位クラブに対する消極的なサッカーは横浜サポーターから強烈に批判された。しかし、チャンピオンシップを制した後に「実は・・・。」と、その事実が岡田監督より明かされ、サポーターは驚愕した。そこまでして優勝したいという岡田監督の強い意志によりリーグ戦の2試合を捨てたのだ。2016年シーズンを制した鹿島も同様。優勝するためには細部にわたるまで徹底した努力と強い意志が必要なのだ。

一方で、浦和には甘さがあった。「年間勝ち点1位が優勝して当然」という気配は、同じく浦和がチャンピオンシップで敗れた2004年シーズンと同様だった。更には、リーグ戦の最終節終了後には、見事なコレオグラフィで「チャンピオン」と唱い、ご丁寧にシャーレまで描き出したのだ。挙げ句の果てには、チャンピオンシップに臨むにあたり「罰ゲーム」とチャンピオンシップを評する者までがいた。彼らのリーグ戦は2016年11月3日で大満足のうちに終了していたのだ。

レギュレーションに難癖をつける浦和サポーターがいる。しかし、このレギュレーションの導入に至る経緯を思い出してほしい。このレギュレーションは、浦和サポーターの要望によって誕生した歪なレギュレーションなのだ。それを忘れてはならない。「2ステージ制+ポストシーズンの併用」の方針を固めたJリーグに対して猛反発をしたのが浦和サポーターだった。彼らは、Jリーグの財政事情など御構い無しに「年間勝ち点1位が王者である」と主張した。

そこで生まれたのが「年間の34節を闘って1位となったチームにはチャンピオンシップへの出場権が付与」であり「年間のリーグ戦成績を重視したルール」なのだ。これは、当時の浦和の橋本社長が浦和サポーターのアピールを最大限に取り入れてJリーグ理事会で提言することで生まれたレギュレーションなのだ。

浦和の強みは数字の大きさだ。クラブの規模、予算、利益、サポーターの数がずば抜けて大きい。だから、日本のサッカーを数の力で動かしてきた。そして、サポーターは数の力を強みを武器に、強引な主張を行ってきた。その結果、「年間勝ち点1位という本来は存在しないはずの勲章」を生み出し、そして手にすることができた。数の力で生み出した勲章によって満足し、生まれた甘さと隙が生み出したのが、鹿島の勝機だった。

今後も、浦和サポーターは数の力でレギュレーションに難癖をつけ続けるだろう。しかし、浦和の敗北は下克上でもなんでもなく「普通にあること」だったのだ。彼らは負けるべくして負けた。浦和のサッカーは間違えなく素晴らしかった。川崎と並んで、2016年の日本のサッカーの最高峰だったと思う。だからチャンピオンシップ第2戦でも圧倒できるサッカーでの勝利を目指していたように見える。しかし、勝負には負けた。数の力の強みによって生み出された「年間勝ち点1位という本来は存在しないはずの勲章」さえなければ浦和がチャンピオンシップに謙虚に臨み勝者となっていたかもしれない。

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第96回天皇杯2階の目線2016 横浜1-0新潟

「終わってくれ!」
「決めてくれ!」
93分に得たフリーキックを天野がセットする。左足で蹴ったボールは山なりの弧を描くことなくゴールに飛び込みゴールネットが揺れる。
「きた!!!」
「決めた!」
「天野!!」
「やった!」
「やった!!!」
窮屈な一階席が騒然として揺れる。
「終われ!」
「もう終わりだ!」
「終わりにしろ!」
新潟がキックオフによるリスタート。そして、直後に試合終了のホイッスル。勝った。土壇場で私たちは勝利した。残されたタイトルは、この天皇杯のみ。怪我人が多いメンバー。さらには、おそらくは移籍交渉が進んでいるがために出場機会を奪われているファビオ。相手は残留争いをしていた新潟とはいえ、こちらも下位。まさに、下位クラブ同士のスコアが動かない闘いとなった。

93分間のことは書く気になれない。圧倒された前半。鈴木武蔵がシュートの放ち枠を外す。普通のクラブのストライカーがいたら0-4で負けていてもおかしくない。そんな展開だが完封勝ち。攻撃はサイドに逃げた。積極性に欠けた。新潟の、さして強くないプレッシャーにミスを連発した。
「前田ってさぁ、読売出身っぽくないよね。」
「技術に緻密さが欠けるというか・・・。」
「読売文化センター出身なんじゃないか?」
まだ、冗談を言う余裕は客席にあった。しかし、パク・ジョンスがヒールパスをしてボールを奪われるなど、凍り付く場面も。

土俵際でうっちゃって勝てた。そしてトリコロールの中盤を背負って立たなければならない天野が、難しい場面でゴールを決めたことはプラスと捉えたい。酷い試合だったとはいえ、なんとか一歩前に進むことはできている。

「次の試合会場はどこだろう?」
「吹田で決勝戦だから、吹田は無いとおもんだ。」
「もしかして、また長崎?」
「みんな長崎に飛ばされると思うと嫌かもしれないけれど『クリスマスイブに長崎』って聞くと、ちょっといいでしょ。」
「うわぁ、かなり魅力的。ロマンチック。」
「物は考えようよ。」

次の決戦はクリスマスイブ。まだ時間はある。契約交渉の騒動も収まっているだろう。怪我人も戻ってくる。この苦しみを大きな喜びに変えるときがくる。勝とう。タイトルを獲ろう。再び、小林祐三の崩しから元日に頂点へ立とう。

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Jリーグ2階の目線2016 横浜1-1浦和

選手の移籍や契約非更新が発表されると、人さまざま、選手について色々な想いがネットに書かれ、移籍の背景の妄想が描かれる。ファンは自分自身の好む大切な物語を好きな選手に対して知らず識らずのうちに心の中で執筆している。それが一斉に世間に披露される。ここで終わる物語もあれば永遠に続く物語もある。

埼玉スタジアムにリーグ戦の終了を告げるホイッスルが響く。その後は、まだ11月の上旬だというのに、仲間との別れを惜しむ季節外れの忘年会のようだった。年間順位は二桁。散々な戦績。しかし、勝てなかったシーズンを全て忘却の彼方へ追いやり、みな、美しい思い出作りに向かう。それをメインスタンドの2階席から無言で眺める。無理もない。嫌なことは忘れたいのだ。美しい思い出を作りたいのだ。

「今日は、さっさとここを出よう。」

動画の収録もせず、足早にスタンドを後にする。

何もできなかった前半。なんとか追いついた後半。浦和とは大きな差がついた。負けなかった。でも、ここまで「勝てる気のしない浦和戦」は珍しい。勝つための速攻を取り入れて戦術の上積みを果たした浦和。停滞のままで、まるでシーズン序盤のような未完成のサッカーを披露したトリコロール。その差は、あまりに歴然としていた。

長岡に転勤し観戦機会の減った仲間が、米国西海岸で活躍する仲間が最終節の観戦に駆けつけた。彼らは、それなりに喜んでくれた。特にマルちゃんの全てを凝縮した終盤は、面白かっただろう。謎のカード、痛がり、長いリーチの間合い、妙な快速、突然のタイミングでのシュート。あとは、試合後のカードとベンチでのカードがあれば完璧だった。でも、やっぱり、こんな試合をしてはダメだ。これは名門の闘いでも古豪の闘いでもない。ただの中堅クラブの闘いではないか。

13勝12分9敗。リードしても追いつかれて引き分ける。勝てない12引き分け。

「こんなの欧州だったら八百長疑惑で調査対象だぜ。勝たなすぎる。」
「愛媛よりも引き分け数は少ないよね。」
「だって、愛媛は20引き分けだけれど試合数が多い。53試合だよ。」
「うちの場合は34試合で12引き分けだからね。」
「どっちが本物の引き分け王かチャンピオンを決めた方が良いよ。」
「引き分けチャンピオンシップだな。」
「どーせ愛媛も暇なんだからやればいいんだ。」
「引き分けチャンピオンシップも引き分けに終わるんじゃないか?」
「引き分けチャンピオンシップなんだから勝ったら負けだよ。」
「どうやって勝負をつけるんだ!?」
「ホーム&アウェイで勝負だよ。2引き分けでアウェイゴールを多く取った方がチャンピオン!」

やっとプレシーズンマッチのリーグ戦は終わり、いよいよ本番の天皇杯だ。だが、それと並行して契約更新の季節が本格的に始まる。シティ体制が固まって初めての契約更新の季節を迎えることになる。きっと、かなりの動きがあるだろう。そして、客観的に見ておかしいと思われるトリコロールの悪しき慣習は是正されていくだろう。例えば90年代から続く年功序列型の年俸。日本代表でエースの学の年俸は中澤の1/4でしかない。放置されてきた歪みは、少しばかりの痛みを伴って解消すべきだ。そして、もし可能ならば、この勝てない采配もなんとかしてほしいものだ。

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Jリーグ2階の目線2016 横浜4-0甲府

ビッグゲームを敗戦で終え、新たな気持ちで臨む開幕戦。全てはリセット。2つのタイトルを狙って新たなスタートだ。心配された雨もなく、甲府にトリコロールの情熱が集結する。ゴール裏席の入りだけを比較すれば、明らかに甲府側よりも入っている。何が入っているかといえば、サポーターの人数だけではない、気合もだ。降格圏転落目前の甲府が全力で立ち向かってくる。いつもであれば気迫負けをするパターンだ。榎本のビッグセーブがなければ、そのパターンに陥ったかもしれない。しかし、あのピンチから逃れたことで、闘いの主導権を掌握することができたトリコロール。

甲府は戸惑っていた。監督の指示とは「話が違う」と感じていたのかもしれない。深めのディフェンスラインを敷いてパスコースを限定する。そうすれば、後ろで、さしたる効果もなさそうなパスをつないで時間を浪費してくれるはずだ、そう考えただろう。しかし、今日からのトリコロールは違う。球離れが良い。小気味よくパスを繋ぐ。動きながらパスを引き出す。たまにスピードダウンをして、急にスピーディーなロングパスを織り交ぜる。パスミスが起きない限りは、甲府は何もできないに等しかった。

まず、新たなシーズンのトリコロールを感じさせたのは先制点への流れ。これまで、どん詰まりの拙攻を繰り返してきたマルティノスの足元にパスをするのではなく、サイドのスペースへ。スピードに乗ったままで相手をかわす。ゴール前には複数の選手が詰め、グラウンダーの丁寧なクロスはゴール前を横切り、最後に登場してきたエースが決める。惚れる。

失点した甲府だが、後半になっても前から奪いに来る気配がない。前半と同じようにゲームは始まる。そして、またしても美しい流れからエースが決める2点目。気がつけば、マルティノスは倒れて痛がることがない。倒れかけても我慢してボールに喰らいつく。誰もがパスコースを生み出す動きをして相手を翻弄する。なんて規律のあるチームなんだ!!マルティノスと前田のパス交換。左から斜めに入ってくるマルティノス。右で学が受けて食いつかせると、逆に左から中央に前田!!!!!
「美しい!!!」
「素晴らしい!!」
「見事だ!!!!」
トリコロールは、こんなプレーができるのだ。これは、今シーズンのベストゴールではないか。といっても、これが今シーズンの開幕戦だ。

速い展開についていけない甲府。新たなメンバーを加えるモンバエルツ監督。怪我から復帰の喜田。明日を担う和田。
「速い!!」
「すごい展開!」
スピーディーな展開は、喜田の投入でさらに加速する。もうワンランクアップのスピードに驚く。思考停止の甲府をあざ笑うような、学の山なりのパスからのケイマン。もう笑いが止まらない。

「すげーなー。おっさんが中澤しかいないぞ(GKの榎本を除く)。」
「みんな下部組織出身じゃないか。」
「いやいや、きたねー。」
「でも、パクくんはちがうよ。」
「パクは、もう、経歴詐称でウチの下部組織出身ということにして良い。」
「前田が・・・。」
「中澤もいるぞ。」
「中澤は『名誉生え抜き』だからいいんだ。」
「読売だろ。読売なんて、ウチの下部組織のようなもんだ。」

楽しい。楽しいのは勝っているからというだけではない。ピッチ上に未来を感じる、そして、ピッチ上の選手たちが楽しそうにサッカーをプレーしているのが嬉しいからだ。100点満点のリスタート。雨も降らずに地は固まった。さぁタイトルを奪おう。我々には二冠の資格がある。ただ、勝利したのではない。美しく、力強く、未来を感じさせて勝利した。本日を、トリコロール無限大記念日とする。

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Jリーグ2階の目線2016 横浜2-3川崎

アディショナルタイムは9分。そこから2点を奪い、同点に。しかし、振り出しには戻っていない。我々は勝たなければならないのだ。もう1点がほしい。ところが、もう1点は我々のゴールネットを揺らしてしまった。スコアは2-3の1点差。最少得点差だ。でも、この試合は惨敗だ。得たものはなく、勝ち点は0。リーグ優勝は手の届かない、遥か彼方に飛んで行ってしまった。

絶望的な90分間を終えた後で、なぜ、同点に追いつくことができたのか。途中投入された前田と天野が怯えることなく勝負し、ゴールを奪う努力をしたからだ。彼らが入るまでのトリコロールは、あまりに情けなかった。川崎の守備力に対してビビり過ぎていた。そう、これは書き間違えではない。トリコロールは川崎の守備力に対して怯えていたのだ。だが、残念ながら、同点に追いつくことができた主な理由は、もう一つある。 それは、川崎が3点目を獲りにきたからだ。安全に試合をクローズすることを選択せずに、さらにとどめを刺しにきた。タイトルへの焦りだろうか、それとも「神奈川ダービー」という意識がそうさせたのか、あれほどのパスワークを持つ川崎が、パスをつないで時間を使うことなく、こちらに攻めてきた。そこで隙が生まれた。トリコロールが力づくで奪い取った得点ではないのだ。だから、この試合は、私たちにとっては。どうしても3-2で勝たなければならない試合だったということになる。なぜならば、負けてしまっては、あの2得点は「屈辱同点劇」でしかないからだ。川崎に舐められたのだ。「このトリコロールからは、もう一点を奪える」と、私たちは川崎に舐められたから2得点をできるチャンスを得た。ただそれだけのことでしかない。

この敗戦は、通常の敗戦よりもさらに重たい敗戦となった。舐められた。トリコロールは闘えなかった。川崎の守備力を恐れ、トリコロールは前半を安全策のサッカーで通した。前半から川崎と真正面から闘ったのは学だけだった。闘ったから、試合後に、学は泣いた。他に、何人の選手が真正面から闘ったというのだ。クロスを見送り1失点目。なぜか浮き球でパスミスをして2失点目。そして、力尽きた3失点目。これが実力だ。前半のシュートは2本。そして、優しき伝統を貫いたのは川崎のGK新井が頭を打ったときだ。試合を再開しても足取りがおかしい新井。これは川崎のミスだと考えられる。選手の安全を優先すれば、あの時点で新井を交代させるべきだった。しかし、新井がピッチ上に自らの意思で立っているからには、トリコロールにとってはゴールを奪うチャンスだった。ところが足取りのふらつくGKを目の前にしてシュートを一本も放てない情けなさ、いや、優しさ。それが、トリコロールの優勝に対する執念の浅さだ。
「いつものことさ。勝負所で勝負できないのがトリコロール。」
と、この試合を片付けてしまうことは簡単だ。たしかに、エンターテイメントとしては、この試合は面白かった。だが、それで良いのか。私たちは優勝するために、ここにやってきたはずだ。この先、タイトルを獲得するためには、その優しさを排除するところから始めなければならないだろう。

最後に主審の家本さんについて触れたい。細心の注意をはらい、気遣いをしながら警告も少なく、この難しい試合を進めた家本さんに感謝したい。そして、家本さんの凄さを見た。新井が再び倒れたとき、家本さんは「時計を止めているよ」というジェスチャーをゴール裏席に向かって行っていた。選手だけではなくサポーターにまで説明を行い、場内の雰囲気が荒れるのを防止しようとする主審を初めて見た。

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Jリーグ2階の目線2016 横浜3-1新潟

「行け!前田!!!」
「行け!!シュートだ!!」
「シュート狙え!!」
「きめろーーーーーーーーーー!!!!」

歓声は屋根にこだまし怒号のように響く。右サイドで天野からのパスを受けた前田は小さなフェイントを入れて中に切れ込む。そしてシュート。それはそれは美しい弧を描いてボールはゴールマウスに吸い込まれていくのが見える。その軌道が見えたとき、ゴールを確信し飛び上がる。そして、空中で拳を振り上げたとき、ゴールネットが揺れた。

「前田!!!!!!!!」
「決めたぞーーーー!!!!」

遂に決めた。前田が決めた、まるでスローモーションのように。前節での活躍で、前田にゴールの予感はあった。しかし、1点差に迫られた大切な場面で、ここまで鮮やかに決めてくれるとは期待以上だ。待っていた。このゴールを待っていた。迷いがなくなれば、前田の持ち味は生きる。スタンドの雰囲気は最高潮に。我々は、まだリーグ優勝の権利を持っている。そして、前田が救世主となって、これから上位との直接対決に入る。

エース学が先発落ち。メンバーが足りない。ユースの選手までがベンチ入りしている。だが、それをピンチに感じない。大宮戦、仙台戦を通じて描き始めた上昇機運(途中の福島戦のことは忘れよう)。さらには、中村大先生のベンチ入り復帰。スタンドのムードもとても良い。

「緑かよ!」

ミッドウィークに、久々の読売戦を控え、緑に過剰に反応する。オレンジに青を加えた新潟のユニフォームはトリコロールと色の重複があるために、今日のユニフォームは緑。闘志に火がつく。しかしながら、ピッチ上ではゆったりとしたサッカーが続く。新潟からは残留争いのピリピリ感が伝わってこない。これは監督の性格の反映か。なぜかよく解らないセンターバックの連携ミスから兵藤が芸術的なボール扱いで抜け出して先制。前半のうちにリードを得る。難しいシュートを榎本が防いでくれたことは大きかった。

三ツ沢での大宮戦で栗原のプレーには大きな変化があった。前線に大きく蹴り出すことが少なくなった。そして、後ろで待ち構えるだけではなく、前に仕掛けてボールを奪い取ることも。これまでの、どっしりと力強く、そして空中戦で金を取れる選手に加えて、縦への強さが加わった。そんなシン・ユウゾウが前に出た。ペナルティエリアの近くまで走り込んでボールを奪取。上手くボールをコントロールしてゴール前に突進すると見せかけて、右サイドのポジションでフリーになっていた中町に左足でパス。待ち構えていた中町は、足を止めて振り抜き、美しく地を這うように放たれたシュートは逆サイドのネットを揺らす。

「すげーーーー!!!」
「決まった!!」
「中町だ!!!」
「なぜ、いるんだ!!」
「納得いかないけどすげ〜!!!」

後半開始2分で得点差を2に広げる。この理由なき得点力の発揮で、なぜか勝利に貢献する中町。ゴールしてもスタンドに向かってスプリントすることはない。その場でドヤ顔が中町品質。

その後、1点を奪われるものの、終始主導権を離さない。パクジョンスは、新人ながら、チームメイトから絶大な信頼を得てボールを集める。安易に倒れたままだったのでシュートを撃てず得点を1つ損したが、マルティノスは全体にヤルキノスだった。前田は天野との相性が良いようだ。中村大先制を温存したままで逃げ切りを図る。

前田はよく走った。あの見事な3点目のゴール。全ての力を使い果たすほどの渾身のシュートだった。得点後、右サイドでパスを繋ぐ。前田は動けない。目の前をボールが通過するが直立不動のまま見送る。

「あー、前田が燃え尽きた。」
「もう、燃えかすになっている。」
「もう、お疲れ様だ、前田。」

新潟の攻撃を凌ぐ。学がボールを持ってドリブルで前進する。右サイドを見る。

「あー誰もいない。」
「前田がいない!どこにいる?」
「前田が後ろの方にいた!」

みんな、前田のゴールに気を良くしている。走れない前田。でも、もう十分だ。前田には、試合中の今からでも「ありがとう」と言いたい。

試合終了のホイッスルが鳴る。勝てなかった日産スタジアムでの勝利。しかも3得点。3点以上を奪っての勝利は3節の神戸戦以来、約2か月ぶりのことなのだそうだ。スタンドが盛り上がるわけだ。そして、トリコロールに勝負強さが備わってきた。猛暑の中で交代枠を残すなど、納得のいかないところもある。だが、選手の頑張りには頭が下がる。

リーグ戦の次節は、あの川崎戦だ。年間勝ち点1位から、川崎を引きづり落とすチャンス。あの最終節の配線の屈辱を晴らすには、次節での圧勝が必要だ。圧勝、そして連勝。川崎を絶望の底に沈めセカンドステージを制覇してこそ、はじめて、あの屈辱を晴らすことができるのだ。やっと私たちにチャンスが巡ってきた。

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Jリーグ2階の目線2016 横浜1-0仙台

「終わったの?」
「終わったのか!?」
「勝ったの!?」
飯田主審の鳴らしたホイッスルを試合終了と確信できない。勝ったことをすんなりと信じられない。それほどまでに追い詰められた状況の中で1-0での完封勝利。確かにアディショナルタイムを終え勝利したということを確信し、一呼吸おいて歓声をあげ表情が緩む。このスタジアムは客席が暗い。やや沈んだ色に見えるトリパラが舞い始まる。涙を流す者もいる。鳥肌が立った者もいる。こんな勝利を予想していなかった。前半を終えた時点で、こんな大勝利を期待できる状況にはなかったのだ。

全く良いところがなかった前半。選手の動きが重たい。対する仙台も、復興ユニフォームとはいうが屋上のウルトラマンショウの休憩時間に頭を脱いでしまったようなアルバイトのような弱そうなユニフォームに身を包んでいることもあって怖さがない。そして、ディフェンスラインは乱れている。積極的に中央を突いていけば攻略できるはずなのに、トリコロールの攻撃はエンジンがかからない。でも無理もない。過密日程。ミッドウィークには120分間の天皇杯。この試合では内容を問えない。低いディフェンスラインを敷いて失点を回避するサッカー。ボールを奪っても瞬発力がなく、時間を要する攻撃。もどかしい。後半に、このサッカーが改善されるだろうか。望み薄に思えた。今日はスコアレスでも仕方ない。うまくセットプレーで1点を奪えたら、守り抜いての引き分けでやむを得ない。

後半開始早々に前田が素晴らしいプレーで仕掛ける。中を何度も確認してのアーリークロス。合わせる伊藤翔。
「来た!!!」
それは突然に来た。伊藤翔が足を延ばす。私たちの腰が浮く。ボールはゴールポストの外に離れていく。
「惜しい!!!」
「決まれば美しかった!!」
このプレーが号砲となる。前からボールを奪い素早い攻めに。どこに、このような力が残っていたのだろう。右サイドから仙台に圧力をかける。前田と小林のパス交換。生き生きとした小林が躍動する。ディフェンスラインの裏を何度も狙う。またしても前田のクロス。
「学!!!!」
「届かなかったか!!??」
猛攻が15分間続く。
「行け!!ここが勝負だ!!」
「何が何でもゴールを奪え!」

しかし、奪えない。支配した時間帯が終わる。一進一退の攻防に。ゴールを奪える雰囲気は減退。逆に奪われるピンチが増える。前半とは違う展開。といっても、疲労の残る選手たちにいつものキレはない。気力で闘っている。ギリギリの戦いだ。激しいぶつかり合い。ときには汚いファール。学はなんでもないフェアーなショルダーチャージに吹っ飛ばされた。踏ん張りが利かない。ついには、新井が金井に代わるアクシデント。

それでも、何度もチャレンジする。倒れても立ち上がる。数日前までのドリブルをすれば一人では止めることができなかった学の姿はそこにはない。今、目の前にいるのは、脚の痛みに耐え、重たい身体に精神力で鞭打ちドリブルでまっすぐ前進し続けるエースの姿だ。仙台のディフェンス陣が下がる。クロスを入れる。入らない。やはり身体が動かないのだ。ところが、跳ね返ったボールに素早く近づき叩き込んだボーレーーー。

「兵藤!!!!!」
「来た!!!」

ゴールネットを突き破らんばかりにボールがゴールに飛び込んでくる。気がつけば兵藤が、中町が、ゴール裏スタンドの前にやってくる。兵藤の身体が宙を舞い広告看板の上にあるのが見える。幸せだ。何て幸せな時間なんだ。ここに来て良かった。この幸せな気分は、このスタンドにやってこない限りは味わえない。

「よくやった!!」
「勝つぞ!!」
「絶対に勝つぞ!!!」

ここから簡単に追加点が獲れれば、もっと楽な試合だっただろう。例え追加点が獲れなくても、普通の試合であってほしかった。なぜなら、選手たちは疲労困憊。満身創痍なのだ。ところが、杜のラフプレー王・大岩は、それを許さなかった。学の脚をめがけて、遠くから猛然とスライディングタックル。危険を察して学はボールを放棄して飛び跳ねる。まともに脚を刈られていたら大怪我をしたところだろう。それは回避するが、それでも倒れて、なかなか立ち上がることができない。これまで、アドバンテージの見極めに慎重なジャッジをし続けてきた主審の飯田さんは、即座に大岩を追いかけてイエローカードを提示する。

「これは酷い。」
「大丈夫か、学。」

新ルールの導入により担架は入らず、ピッチ上で治療を行う。大岩への怒りとレッドカード相当のプレーだというアピールをベンチ前で行ったマルティノスに飯田主審がイエローカードを提示。おもしろ外国人としての存在感を示すが、これは良くない。さらには、物をベンチに投げ込んで大荒れの様子。試合再開。しかし、学はプレーできずピッチを去ることになる。

「うわぁダメか。」
「おい、どうするんだ、交代の準備はできているのか?」
「誰を出すんだ!」
「マルちゃんは、もうカードをもらっているから怖くて入れられないぞ。」
「なんということだ!?試合に出ていないのに!」
「消去法で遠藤しかない。」
「ここは遠藤に頑張ってもらうしかない。」

ピッチに入った遠藤にシュートのチャンス。遠藤は、絶対にGKにキャッチされないシュートを慎重に放つ。枠外。キャッチされてカウンターを食らうことのない上隅を狙ったシュートだろうが、遠くゴールの上をボールは飛んでいく。

「なんじゃそりゃー!」
「いや、いいんだ。これでいいんだ。」
「カウンターを食らうよりも100倍マシだ。」

そのあとは覚えていない。ただ、絶叫し、コールし、手拍子した。

「終わったの?」
「終わったのか!?」
「勝ったの!?」

まだリーグ優勝の望みがあるトリコロールは最後まで闘い続けた。サポーターは苦しい状況を理解した上で、現実的な戦術を認め応援し続けた。我々には目指す物がある。2ステージ制最後の王者の座を譲りたくない。一方、仙台は目指す物がなかった。天皇杯で隣県の県庁所在地である盛岡に大敗。サポーターは試合前の応援をボイコット。優勝するわけでも残留争いをするわけでもない順位で目標を見失った。試合前のボイコットで仙台サポーターの応援はボルテージが上がらないままに試合終了を迎えた。

まさかの激しいゲームに笑顔が出始めるが、疲労も襲ってくる。そして、突然の空腹。昼は塩釜のすし哲で贅沢三昧に美味しい魚を食べたというのに。でも大丈夫。国分町の店は抑えてある。祝勝会の準備は万全だ。普通の牛タン料理店では食べられない美味い牛タン料理が待っている。今夜の祝勝会は、いつもの祝勝会よりも3割り増しで美味しく味わえそうだ。これだから仙台遠征はやめられない。

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Jリーグ ルヴァンカップ2階の目線2016 横浜1-0大宮

第1戦は1-2で敗戦。貴重なアウェイゴールを奪ったものの、引き分けにできる試合を落とした。
「1-0で勝てば勝ち抜ける。だからじっくりやればいい。」
それは、堅守トリコロールのお家芸といわれてきたサッカー。たしかに、これまでは、それを誰もが自信を持って言えた。しかし、今回は違う。完封勝ちでの逃げ切りは困難と言いたくなるほど、守備に安定度がない。采配ミスでの失点も続いている。
「勝負は立ち上がりの10分間だよ。」
「そこでやられれば負ける。」
大宮は、逆にアウェイゴールを奪って早期に決着をつけようとしている。先発メンバーにムルジャと江坂。リードを奪ってから途中交代で温存をしようという狙いだろう。リーグ戦でも、第1戦でも大宮は立ち上がりから猛攻を仕掛けてきた。今日、そこで怯んだら、そこで勝負ありだ。じっくりやって勝てる相手ではない。むしろ、攻撃のエンジンがかからないままに時間が進むことが怖い。

榎本のビッグセーブで難を逃れる。これが決まっていれば、この時点で試合終了。立ち上がり、10分間は大宮の猛攻を受ける。だが10分間で、この猛攻を抑えることができた。縦を切られてドリブルを封じられてしまって空回りするマルティノスを除けば、どの選手も気迫とプレーがシンクロしている。いつ間にかスタンドも「じっくり」というムードではなくエキサイトしていく。

これぞカップ戦。激しく体をぶつけ合い、一歩も引かない。共に「絶対にシュートまでは持ち込むぞ」という意気込みを感じる入魂の攻撃を展開。第1戦では、あれほど、試行錯誤しながらの手探り攻撃であったのに、見違えるようなプレーだ。敗退の危機感が、トリコロールを蘇らせた。大宮はファールを連発。トリコロールは一対一を積極的に仕掛け、一度くらい奪われかけても諦めない。何度も繰り返す。奪われても奪い返す。

特にスタンドのボルテージが急上昇したのは、ムルジャのシューズが脱げたシーン。
「お人よしにボールを出すんじゃないよ!」
「怪我じゃないし!」
「ファールでもないし!」
「シューズが脱げたらプレーを止めてもらえるならば、ピンチになれば何度でも靴脱ぐわ!!」
それまでのファールの連発にイライラを募らせていたスタンドは、ここから、一気にヒートアップする。さらにはコーナーでの中澤とマテウスの対決。譲らない!

金井がパスミス。大宮から出されたパスを金井が奪い返し、伊藤翔へ。伊藤翔は学にボールを預けると全速力でディフェンスラインの裏を狙う。ディフェンスラインが下がることで生まれたスペースにカイケが居残ってパスをもらい、さらに伊藤翔が横に走って大宮のディフェンダーを引きつけコースを開ける。そこでシュート。

「ぐぉーーーーーーーーー!!!!!!」
あまりに美しいシュートに座席から飛び跳ねて、前列の高校生に突っ込みそうになる。
「すげー!!!!!!」
「ちょっと待て!カイケ!そんなシュートを持っているのか!」
「話が違うぞ、カイケ!!!!」

早すぎる先制点は不安になる。しかし前半終了間際のゴール。こんな嬉しいタイミングの先制点は予想外。

後半立ち上がり。カウンター攻撃でカイケが見事なスルーパス。マルティノスは決めるだけ。ところが塩田に止められる。
「うわーーー!!」
「決められないか!」
プレーは続く。しかし、マルティノスは前線でしょぼくれたまま。
「あちゃー、ヤルキナスになっちまった。」
「心のダメージが・・・。」

ここからしばらくは、大宮の低くて速いクロスショー。波状攻撃が続く。悲鳴が上がる。腰が浮く。間一髪で跳ね返す。いや、逆サイドまでの抜けるクロスの方が多かったか。大活躍の栗原が足を攣りベンチに下がることになり、さらにピンチが続く。それでも、引かない。攻めの姿勢・攻撃的な守備を崩さない。第1戦での先発落ちがプライドを傷つけたのか、カイケの気合の入り方がもの凄い。大宮の選手に体当たりしてカードをもらう。

「このまま持ちこたえられるのか?」
「マルちゃん、そのそろアウトだろ。」
「カイケも厳しいぞ。」

第1戦では弱気な采配に感じたモンバエルツ監督だが、マルティノスに替えて投入したのは天野。引かない意志を感じる(そもそも守備の選手のベンチ入りが少ない)。だが、予定外の状況に応じた選手交代は苦手なようで、ここからしばらく、動きの落ちたカイケを放置。さらに押し込まれる。カイケの交代を榎本が要求。それでもベンチは動かない。

「おいボールボーイ!早すぎる!!」

選手だけではなく、ボールボーイの動きにもスタンドから注文が飛ぶ。カイケが倒れる。そこからベンチが慌てて動き始める。

「遅い!遅すぎる!」
「なんとか耐えてくれ!!!!」

投入されるのは前田。時間稼ぎと見せかけてドリブルでボールを中央に運んでシュート。枠を外れる。

「惜しい!」
「前田!それは決めないと!!」
「フリーじゃねえか!」
「でも、やっと前田らしいシュートを見られた。」

どの選手も必死だ。アディショナルタイム5分間を耐える。天野のシュートが決まっていれば満点だった。だが、満点でなくても良い。とにかく完封するのだ。

「前で回せ!」
「繋げ!」
「下がるな!」

試合終了のホイッスル。絶叫。総立ち。得点時に突っ込みそうになった前列の高校生たちとも喜びを分かち合う。素晴らしい勝利だ。引かずに闘い続けた。高い位置でボールを奪い返しにかかる攻撃的な姿勢。それを続けたことが完封勝ちできた理由だ。やっとトリコロールらしいサッカーが帰ってきた。ピッチ上の選手が闘う姿勢を崩さず、ベンチもそれに応えた。さぁ、準決勝ではルヴァンパーティだ。今日は闘志のスパイスが効いていた。今日の勝利に、次は何をトッピングする?

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<様々な目線から捉えた試合>

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Jリーグ ルヴァンカップ2階の目線2016 横浜1-2大宮

ノックアウトステージ準々決勝の第1戦。アウェイ。苦手の大宮。すでにリーグ戦は、すべてを勝つ勢いで最終節を迎えたときに上位が総崩れになっていれば運良く優勝があるかもれないという星勘定。タイトル獲得のためには、このリーグカップ狙いが第一照準となる。ところが、結果的には、モンバエルツ監督は、リーグ戦の1試合と同じように、この試合を闘った。通常であればアウェイでの第1戦を1-2で落としても、アウェイゴールを獲得できているので、ほぼ横並びの折り返し地点。第2戦を1-0で勝てば勝ち抜けるという展望が開ける。しかし、どうやら、そのような希望は持たないほうが良い。堅守は過去の話だ。

強風の風下というハンディはある。それにしても、まったく歯が立たない前半。ボールを奪う位置が定まらず、奪ったボールを預ける先も決まらない。リーグ戦と同様に大宮の素早いプレッシングに戸惑い、ミスを連発する。中央にいる学にはパスが入らない。そもそもボールを触る回数が少ない。ボールを奪ってもサイドに逃げる。チャレンジがない。全体にビビっているのがわかる。気の弱い前田は、この雰囲気にのまれたのか、更に動きが硬く、ボールをもらおうとする動きがないからパスが来ない。マルティノスもキレがなく仕掛けが少ない。

「リーグ戦のときと違って、今日は涼しいからな。」
「大宮の動きが後半も落ちないかもしれないな。」

0-3で終わってもおかしくなかった前半。チャンスは一度だけ。得点の気配がないどころか、敵陣に攻め込むことすらままならない。覇気の感じられないピッチ上のプレーを見たカイケは、後半から出場する気で満々だ。ハーフタイムにはビブスを外してユニフォーム姿で練習。ベンチにアピールする。

「後半から、前田とマルちゃんを2枚替えで交代でもしないと後半の立ち上がりが不安だよ。」
「でも、ファビオの怪我で1枚交代カードを切ってしまったから、さすがに2枚替えは無理だよ。」

後半が始まる。ピッチ上は前半と比べて仕掛けようという意志を感じる。ベンチの脇ではビブスを身につけないカイケがウォーミングアップのピッチを上げている。前半は何もやっていなかったに等しい前田は後半の立ち上がりも消極的。マルティノスは仕掛けるが突破に至らない。カイケは投入されると、まるで闘将のごとく大きな身振りで選手の奮起を促す。こんなカイケは見たことがない。しかしゴールは遠い。この苦しい展開を救ったのは両サイドバックだった。小林が鋭いクロスをねじ込み、逆サイドに詰めていた金井がゴールに叩き込む。
「なぜ、そこまで上がってたんだ!金井!!」
「よく決めた!!」

オープンな展開でボールがピッチを行き来するようになる。といっても、圧倒的に攻撃のクオリティは大宮の方が高いため。再三の失点ピンチに肝を冷やす。凌ぐ。だが、こちらも攻撃の手を緩めるわけにはいかない。引けば守りきれないだろう。逃げ切る意味でも、前に重心を残してボールを自陣ゴールから遠ざけておく必要がある。カードをもらっている金井、喜田を下げる必要があるかもしれない。それに、試合トータルで見れば出来が良くなくリスキーなプレーをしてしまう可能性があるマルティノスも交代候補だ。

残り時間わずか。

「誰か出てきた。」
「誰だあれは?」
「新井?え?新井をどこに入れるの?」

ピッチ上の選手たちも疑問に思っただろう。プレーが切れないために、しばらくタッチライン脇に立ち続ける新井。修羅場経験の少ない新井で、ここまで多数のピンチにさらされる試合をクローズできるのか。目の前に新井を見たマルティノスは自分が下げられるのではないかと感じたかもしれない。小林とマルティノスが無理をした。ともに許されるプレーではない。愚かなプレーだ。だが、信じられないような愚かなプレーを引き起こす環境をモンバエルツ監督が生み出してしまったとも言えるだろう。
「まさか、遠藤がいなくても遠藤枠が生きているとは・・・。」
あの失点と、新井がタッチライン脇に立ったこと、この2つが同時に起きたことを偶然とは思いにくい。

失点により新井の起用は見送り。仲川が投入されるが試合終了。痛い敗戦となった。

「いやー勿体無いことをした。」
「普通ならばアウェイゴールで1-2はOKなのだけれど、ちょっと今のウチで1-0で勝てば良いとは言いにくい。」
「何かあれば1失点は起きる。その覚悟はして試合に臨まないとダメだ。」
「となると2得点だと2-1で延長戦になってしまう。3-0で勝つくらいのつもりがないと守りに入ってはダメだ。」
「ウチの選手は、みんなおとなしいからなー。誰かが闘志に火をつけてくれればいいのだけれど、またフワッとはいるとやられるぜ。」
「誰かがリーダーとして引っ張ってくれないと。」
「今日のカイケは、相当気合が入っていたね。でもリーダーにはなれない。」
「もし、試合の入りが悪かったら松永コーチがベンチで暴れるしかないな。ベンチを壊すくらいの暴れっぷりで選手の闘志に火をつけないと。」
「いや、でも、ウチの選手だと、それを見たらどん引きするんじゃないか?」
「まぁまぁまぁ、松永さん落ち着いて、とか言って冷静になだめそう。」
「今日みたいなビビったプレーじゃダメなのだから、誰か、なんとかしてくれよ。」
「気を引き締めて応援に行くしかないな。」

難しい日曜日になりそうだ。でも単純に考えよう。気迫で負けない。まずはそこからスタートだ。

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<様々な目線から捉えた試合>

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Jリーグ2階の目線2016 横浜2-2鹿島

佐藤隆治さんの主審担当試合では、過去の戦績は9勝7分4敗。けっして悪い結果に陥っているわけではない。しかし、フラストレーションが溜まる。アドバンテージの取り方が上手くないことと、反則判定の基準がトリコロールの好みではないことが原因だ。前半は鹿島のプッシングが多く見逃された。
「押し放題だったな。」
「あからさまに感じるプッシングも吹かないからな。」
「公平なのだけれどやりにくいからイライラするよね。」
「後半は、ウチも、もっとアグレッシブに行かないと。」
「だって、押しても吹かないのだから。」
「そうだよ、ちょっとは押してもいいはずだよ、もっと。」
「でも、手加減が難しいんだよ。大体いつものパターンだと、ウチが押すと、押しすぎてカードが出てもめる。」
後半開始。喜田が押す。カードが出た。
「ほら、手加減が難しい。」

試合後。坂を下りながら話をする。
「なんで、こう勝てないんだよ。」
「引き分けが多すぎる。」
「調査だな。これ欧州だったら調査の対象になるレベル。八百長疑惑。」
「だって、名古屋にも引き分けて、ファースト優勝の鹿島にも引き分け。」
「どこにでも引き分ける。」
「相手の強さには関係ない。」
「しかもシュートが少ない。攻撃が消極的。」
「今日は違うけれど、いつもならば、後ろでパスを回していて攻撃に枚数をかけない。」
「調査対象だわ。」
自虐で痛む心を紛らす。

「手の打ち様はいくらでもあったはずなんだよ。なんで金井を下げたのかわからない。」
「目的が、勝つことではなく遠藤を育てることになってきていないか?」
「遠藤も、栗原も気の毒だわ。」
「左サイドバックに兵藤が入るのかと思ったのだけれど・・・。」
「下げるなら、金井ではなくて伊藤翔でよかっただろ、守り切るならば。」
「鹿島はクロスをふわりといれてこないし、グランダーでパスを中に入れてくるのだから、中の人数を増やす意味がわからない。」
「鹿島に金井のサイドを再三破られたのは、サイドバックがスピードに乗って追い越しをかけてきかららなのだから、最終ラインのスペースを埋めても意味がない。」
「栗原がサイドバックに入って、金井を前に出して、数的不利を解消するのかと思ったのに。」
「ファビオを中盤にあげて、中盤の底を2枚から三枚にあげて兵藤が金井の前をケアすればよかったのに。」
「別の方法の共通項は、サイドバックのオーバーラップで生じる数的不利の解消なんだよ。方法は違うけれど、みんなの考え方のベースは一致。でも、エリクだけは違ったみたい。」
「理解しがたい。」
「すべてが台無しだった。」

モンバエルツ監督には、ここまでの采配を感謝する。攻撃のスピードは上がった。進まなかった世代交代が一気に進んだ。若い選手が成長した。でも、この試合で判明した。優勝を狙いにいける監督ではなかった。やはり、日本でもフランスでも、育成型の監督というのは、このような采配をするのだろう。元日まで、体制は変わらない。まだタイトルのチャンスはある。栄光を目指して応援しよう。でも、来年は、次のステップにトリコロールは上がるべきだ。

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<様々な目線から捉えた試合>

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